あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。約2000本の映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。監督名、主演俳優名でも検索できます。

「アニー・イン・ザ・ターミナル」 (2018年)

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2018年 イギリス 96分
監督:ヴォーン・スタイン
出演:マーゴット・ロビー、 サイモン・ペッグ、 マイク・マイヤーズ

お洒落サスペンス? ★★

登場人物は5人だけ。
謎の女(マーゴット・ロビー)、不治の病を抱える国語教師のビル(サイモン・ペッグ)、足の不自由な老駅員クリントン、それに二人組の暗殺者アルフレッドとヴィンス。
映画の惹き文句は「映画史上最高の悪女が仕掛ける、極上のリベンジ・スリラー」。
はて、リベンジされるのは誰なんだ?

地下鉄の終着駅近くのダイナーの蓮っ葉なウェイトレスのアニー。
彼女は実はすご腕の暗殺者だったのだ。
そんなアニーはある人物への復讐を目論んでもいた。

ダイナーにやってきたビルが自殺願望を抱いていることを知ったアニーは、いろいろな自殺方法を示唆したりする。
またあにーは、競争相手の殺し屋二人組をなんとか亡き者にしてこの依頼業務を一手に引きうけることを企んでいたりする。

映画は雰囲気満点。
街は妖しげなネオンサインに彩られ、悪夢のような雰囲気を醸し出している。
アニーは、あるときは黒髪の殺し屋、あるときは金髪のウェイトレス、そして、ポール・ダンサーだったり、白衣の天使だったりもする。

しかし、残念なのことに見どころはそのマーゴット・ロビーの美しさを堪能することだけだった。
ストーリーはとってつけたようなもので、捻っているようで、その実あまり大したものではなかった。
まあ、時間つぶし程度のつもりでの鑑賞をお勧めします。


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Yahooブログ閉鎖後の引っ越し先ですが、とりあえず「はてなブログ」を考えています。
試みに開設してみました。
しばらくはこちらと同じ記事を「はてなブログ」にもアップして使い勝手を試してみます。
アドレスは https://akirin2274.hatenablog.com/ です。

「立ち去った女」 (2016年)

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2016年 フィリピン 228分
監督:ラブ・ディアス

冤罪の女の復讐劇。 ★★★★

全編モノクロで撮られた4時間近いフィリピン映画
30年間も無実の罪で服役していた女ホラシアの復讐劇なのだが、昂ぶったところは一つもなく、淡々と描かれている。

元小学校教師だったホラシアは、身に覚えのない殺人の罪で服役していた。
30年も経ってから、真犯人が自白して自殺した。
その犯人は、ホラシアの元恋人ロドリゴの差し金で彼女に罪を着せたと告白していたのだ。
出獄したホラシアだったが、夫は既に他界、息子も行方不明になっていた。
おのれ、私をこんな目にあわせたロドリゴを絶対に許さないわよ。絶対に復讐してやるわよ。

今は街の一大有力者になっているロドリゴの情報を得るために、ホラシアは夜の街に出没する。
深く野球帽をかぶった彼女がそこで出会うのはオカマの娼婦、バロット売りの男、物乞いの女、などなど。
みんな社会の底辺で細々と活きている人たち。
ホラシアは、彼らにときに経済的な援助もしながらロドリゴの周辺を探り、復讐の機会をうかがう。

このバロットというのはなんだろうと思って調べたところ、孵化直前のアヒルのタマゴをゆでたものだった。
フィリピンでは夜の街中や住宅街に流しのバロット売りがいるのは普通のことらしい。
バロットの写真も見てみたが、卵の殻を割ると中にヒナになりかけたアヒルが見える。
これ、本当に食べるの?

それはさておき。
乏しい光と、圧倒的な影で映し出される夜の画面が美しい。詩的である。
カメラはほとんどの場面で固定されていて、引いた位置から情景を捉えている。
傍観者のような視点で物語は捉えられていく。

こう書くと、ちょっと退屈してしまうのでは、と思うところだが、まったくそんなことはなかった。
延々と続く物語なのだが、なにか魅せるものを画面が持っているのである。

復讐劇は意外な展開を見せてあっさりと終わっていく。
つまり、この映画は始めから復讐劇を見せようというところには目的を置いていなかったのだと思える。
夜のフィリピンの田舎町の、湿った空気感を伝えたかったのだろうか。

その一方で、復讐しようとする心とは何か、それは復讐が為された後に残るものは何かという問題に繋がっていくのだが、を描いてもいる。
人はどこから”立ち去る”のか、そして、どこへ”立ち去る”のか。
そんなことを観ている人に考えさせる映画でもあった。

ベネチア国際映画祭で金獅子賞を取っています。

「ミステリー・トレイン」 (1989年)

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1989年 アメリカ 110分
監督:ジム・ジャームッシュ
出演:永瀬敏行、 工藤夕貴、 スティーブ・ブシュミ

一夜のオムニバス物語。 ★★☆

タイトルから想像するような推理もの、サスペンスものでは、まったくないっ!
それどころか、筋もあるのだか、ないのだか。
ジャームッシュ監督らしい肩すかし感が満載。それって、だからどうよ、という感じ。
同じ安宿に泊まった3組の登場人物たちのオムニバス。

第1話「ファー・フロム・ヨコハマ」。
横浜からわざわざエルビス・プレスリーの家を見にメンフィスまでやって来た若いカップル(永瀬敏行、工藤夕貴)。
大きな旅行鞄を二人でかついで街をうろつき、行き当たりばったりにホテルに泊まる。
いつもつまらなさそうな永瀬、無邪気にはしゃぐ工藤。

第2話「ザ・ゴースト」。
高級そうな服に身をつつんだ女性がメンフィスの街に着く。
雑誌を大量に買い込んでしまったり、無一文の女性と同じ部屋に泊まることになったり。
真夜中に部屋の片隅にエルビスの幽霊があらわれたりもする。

第3話「ロスト・イン・スペース」。
酔っ払って発砲事件を起こしてしまった男たちは、安宿の一室に隠れて夜を過ごすことにする。

どの登場人物たちもホテルへ向かう途中で高架を走る夜汽車を見る。
そしてラジオから流れるエルビス・プレスリーの「ブルー・ムーン」を聞き、翌朝には1発の銃声を聞く。
互いの人生が交差することはないのだが、同じ時刻に同じ場所にいた3組の人物たちということである。

ホテルのマネージャーとベルボーイがつなぎのような立ち位置で登場する。
これがとぼけているようで好い味を出していた。

地方都市のような寂れた夜の街の雰囲気。
古い安ホテルのすり切れたようなカーペット、コイルのへたったベッドの雰囲気。

基本的にはなにも起こらない映画です。
ただ3組の人物たちを傍観者のようにとらえた映画です。
なんとも言いようのない、なにも起こらない、というか何があっても大したことじゃないという雰囲気を楽しむ映画です。

「フリーダム・ライターズ」 (2007年)

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2007年 アメリ
監督:リチャード・ラグラベネーズ
出演:ヒラリ-・スワンク

熱血教師物語。 ★★★

実話を基にしたひとりの熱血教師とその教え子の物語。
こんな嘘のような素晴らしい話が実際にあったのか、と感慨にふけってしまう。
主役のヒラリー・スワンクもまさに適役だった。

時は、あのロス暴動直後の1994年。アメリカ中で人種問題がくすぶっていた頃。
舞台は、ロサンゼルスの郊外ロングビーチにあるウィルソン高校。
そのウィルソン高校に、志をかかげて新任教師エリン(ヒラリー・スワンク)が着任してくる。
実は、この高校はあらゆる人種の生徒を受け入れるようになって、様々な問題を抱えていたのだ。

私の知り合いには中学校の先生もいるし、高校の先生もいる。
折に触れて話を聞くと、荒れ始めたクラスはもうひとりの力ではどうにもならなくなっていくそうだ。
なかなか有効な手立てもなく、無力感を否応なく味わされるとのこと。

さて、そのウィルソン高校に通う生徒達の日常は、ラテン系、アフリカ系、アジア系などの人種対立が烈しく、街の治安も悪化。
常に生命が危険にさらされているような厳しいもの。
卒業まで生きていられるかということが問題になるような学校で、勉強しようとする生徒などいる?
教師達も彼らが学校を去っていくのを傍観しているだけ。

そんな生徒達にエリンは笑いかけ、なんとか話しかけようとする。
しかし彼らは白人のエリンに反発するだけ。エリンの言葉を聞く耳を持たない。
普通はここでくじけるよなあ。無力感で諦めてしまうよなあ。
しかし、エリンはやるのです。

彼女がしたことは、自費で購入した日記帳をクラス全員に配ること。
そしてなんでもいいから、短くてもいいから、私に見せなくてもいいから、毎日何かを書けという。
憎悪と対立だけだった生徒達は、やがて自分の本音を書くことによって気持ちがほぐれてくる。
ロッカーにはエリンに読んで欲しいと日記帳が積まれるようになる。

エリンは生徒達が知らなかったホロコーストについて話して聞かせる。
それまでホロコーストを知っていたのはクラスで1人だけいる白人の生徒だったのだ。
その白人の生徒を除いた全員が銃で狙われたことがあったのに。

やがて、これまでのほとんどの生徒が学校から脱落していったのに、彼らはそろって進級していく。
このクラスに仲間といることに喜びと誇りを持つようになる。素晴らしい。

彼らの日記を集めた実際の本が原作の映画です。
こんな奇跡のようなことが本当にあったのだなあ。

「マネー・ピット」 (1986年)

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1986年 アメリカ 92分
監督:リチャード・ベンジャミン
出演:トム・ハンクス、 シェリー・ロング

ドタバタ喜劇。 ★★☆

今から30年以上前の映画。
当たり前のことだけれどもトム・ハンクスが若い。そのへんの軽~いお兄ちゃん風情(笑)。
でも、気軽に楽しく観ることのできる作品。

家を探していた若いカップルが、驚くほど格安の物件を見つける。
庭もついた立派な一軒家で、豪華な造り。ロビーも、2階へ続く階段もお洒落。
こんな立派な家がどうしてこんなに安いの? 買わなきゃ嘘でしょ。

タイトルの「マネー・ピット」を直訳すれば”金食い虫”。
もうそのままの内容の映画で、その物件は実はいたるところにがたが来ていて、修理をするのに莫大な費用が嵩むことが判ってくる。

ということで、なけなしのお金をはたいて買ったとたんに、お洒落できれいだった建物が、次々に壊れていく。
開けようとしたドアは外れ、上ろうとした階段は崩れ落ちるわ、水道からは泥水が出てくるわ、電気の配線はショートして燃え伝わっていくわ・・・。
どたばたと慌てふためく二人が、単純に笑わせてくれる。
若い二人の夢の生活は、まるで廃屋のキャンプ状態となっていく。

修理職人を頼めば、腕はいいのだがやる気があるのかないのか判らないような親方が、職人集団を引き連れて、嵐のようにやってくる。
家中が工事現場となって、二人はそんな中で暮らしていく。

実は妻(シェリー・ロング)には、今でも言い寄ってくる元カレがいる。
その彼は世界的な名指揮者で、シェリーはその楽団員だったりもする。
すると、ひょんなことで焼けぼっくいに火がついてしまいそうになったりもするのだ。おやおや。

すったもんだの末に家は見事に修理が終わる。
しかしその頃には若夫婦の仲は険悪となっており、折角きれいになった家を売り払う相談まではじめてしまう。
おいおい、どうなる?

修理職人の親方がすばらしい台詞をはく。「土台がしっかりしていれば修復は可能だ」
おお、何とすばらしい名言だ。
家も、そして夫婦仲も根本的なところがしっかりしていれば壊れることは決してない訳だ。

冒頭で借金を息子に押しつけてブラジルへ逃げていったトム・ハンクスの父が出ていた。
映画の最後に、若い女性といちゃつきながらその父がブラジルで豪華な家を買おうとしている。
その売り主は、ありゃ、トムにくだんの物件を言葉巧みに売りつけたおばさんではないか(笑)。

肩肘を張って観るような映画ではありません。
少しオールドファッションな雰囲気も漂うどたばた喜劇です。
気持ちが疲れたときに、心がギスギスしたときに、これを観てのんびりと楽しみましょう。

「女は二度決断する」 (2017年)

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2017年 ドイツ 106分
監督:ファティ・アキン
出演:ダイアン・クルーガー

復讐劇。 ★★★

夫と息子をテロで殺された女性の復讐劇だということは知っていた。
そしてポスターの、フードを深く被って雨の街を歩く写真から、サスペンス・タッチの作品かと思っていた。
まったく違っていた。もっと重く静かな作品だった。

物語は珪呂吠けられて提示される。
まず事件が起きる「家族」。
トルコ系移民のヌーリと結婚し、息子にも恵まれた生粋のドイツ人のカティヤ(ダイアン・クルーガー)。
ある日、ヌーリの事務所前に仕掛けられた爆発で夫と息子は殺されてしまう。
移民を狙ったネオナチによるテロだったのだ。

第二章は「正義」。意外にもここはしっかりとした法廷劇だった。
爆破事件の犯人と思われるネオナチの若い夫婦の裁判がおこなわれていく。
誰がみたって犯人に決まっているし、有罪に決まっていると思う。
しかし、裁判はそんな感情でものごとが進む場所ではなかったのだ。犯人側の弁護士の嫌みったらしいことといったら。

この法廷劇のパートが、映画の中心になっていると思えるほどの緊張感だった。
カティヤは爆弾を仕掛けた女を目撃もしているのだ。
それを証言しているのに、弁護側はそんな反論をしてくるなんて!
なんと理不尽な。なんと歯がゆく、いらだたしいことか・。

そして最終章が「海辺」。
法が裁いてくれない犯人達をどうしても許すことができないっ!
カティヤはひとりで犯人夫婦を追い求める。
そして海辺のキャンピングカーで隠れるように生活している夫婦を見つける。
彼女の”決断”とは・・・。

思っていた以上に暗く沈んだ映画だった。
カティヤのような立場に置かれたらと思うと、彼女の思いも行動も判る気はする。しかし、どうしても虚しさが残る。

ダイアン・クルーガーの厳しい表情が印象的です。
カンヌ映画祭で主演女優賞を取っています。