あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。約2000本の映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。監督名、主演俳優名でも検索できます。

「ラストレター」 (2019年)

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2019年 日本 120分
監督:岩井俊二
出演:広瀬すず、 松たか子、 福山雅治、 神木隆之介

ベタな恋愛もの。 ★★

 

岩井監督は「「Love Letter」が甘酸っぱい感じのよい作品だったので、そのあたりの期待を持って鑑賞。
しかし今作はもうひとつだった。残念。

 

亡くなった姉・未咲に届いた同窓会の案内。
成り行きで姉のフリをしてしまった妹の裕里(松たか子)は、その席で高校時代に片思いをしていた乙坂鏡史郎(福山雅治)と再会する。
その鏡史郎は、高校時代には姉の美咲(広瀬すず)に恋をしていたのだった。

 

今回も「手紙」が物語の大きな軸を担っている。
そこから現在と過去が淡く交差し始めるという枠組みは、「Love Letter」と同じ。
しかしあまりにも甘すぎた。

 

人違いされたままに、かっての満たされなかった日を埋めるように姉のフリをして手紙を書く裕里。
そのフリに騙されたフリをして返事を書く鏡史郎。
そして母のフリをして手紙を書く美咲の娘の鮎美(広瀬すずの二役)。
きれいな物語を作ろうとして、まったく深みがなかった。

 

好かったのは、脇役ながらその無頼ぶりが迫力のあった豊川悦治。
彼は美咲と結婚して二人の子供をもうけながらも彼女を不幸にしてしまったのだ。
出番はわずかしかないのに、福山雅治と対峙する場面では遥かに彼を喰っていた。

 

(ツッコミ)
手紙の文字を見たら、その筆跡で鮎美が書いた手紙はすぐにバレただろうに・・・。

 

最後の娘に宛てた遺書が、高校の卒業生代表で読んだ答辞だったというのも、なんだかなあ。
ということで、心動かされることもなく、醒めた目で観てしまった映画だった。

 

「タイガー・バレット」 (2018年)

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2018年 インド 137分
監督:アフメド・カーン
出演:タイガー・シュロフ、 ディシャ・パタニ

痛快無双のアクションもの。 ★★★

 

まずはこのポスターを見てほしい。
主役のタイガー・シュロフの見事に割れた腹筋に惚れ惚れしてしまう。
この肉体で所狭しと暴れ回るわけだが、意外なことにちゃんと謎解きミステリーにもなっているのだよ。
もちろん美男美女の恋愛もあるし、一粒で三度美味しい映画だった。

 

インド陸軍特殊部隊のロニー(タイガーシュロフ)は上司の信頼も厚い有能な戦士。
そんな彼の元に4年前に別れた元彼女のネーハ(ディシャ・パタニ)から助けて欲しいとの連絡が入る。
今さら止めとけ、という周りの制止を振り切って彼は、今も愛し続けている彼女の元へ。

 

実は、大実業家と結婚したネーハの幼い娘リアが2ヶ月前に妖しげな男たちに誘拐されてしまっていたのだ。
しかし、警察は一向にちゃんとした捜査をしてくれない。
貴方だけが頼りよと言われてロニーは独自の捜査を始める。

 

いくら頼られたからって、他人夫婦の娘探しをするなんて、ロニーも人が好いなあ、と誰でも思ってしまう。
でも、ネーハにはロニーにこそ頼るべきある事情があったのだよ。

 

ヒロインのディシャ・パタニは初めて観る女優さんだったが、インド映画のご多分に漏れずすごい美人。
ジャッキー・チェンの映画にも出ていたとのことだった。

 

途中にはちゃんとお約束の歌と踊りが華やかに繰り広げられる。
少し奇妙な動きを取り入れた群舞である。
これに違和感がある人もいるようだが、「踊るマハラジャ」でインド映画に目覚めた者にとっては、やはりこれがないと寂しい。

 

さて、ロニーがいろいろな人物に会って捜査を続けると、皆がネーハには子どもなんかいなかったと言うのだ。
えっ? そんな馬鹿な。娘の誘拐というのはネーハの妄想?
外国から戻ってきたネーハの夫も、実は自分は子どもを作れない身体なのだ、と打ち明ける。
・・・それじゃ、やっぱり・・・。

 

映画の中盤では、えっ、そんな馬鹿な! という展開になる。
こんなことをしてしまって後半の物語をどうするんだ?と心配になるような展開。
さすがインド映画、何でもやってしまうなあ。

 

この映画の弱点は、肝心の娘誘拐の意味がほとんど理解不能だったこと。
でもまあ、そんな細かいことはどうでもいいのだ、この映画は。

 

クライマックスは敵ボスの本拠地に乗りこんでのロニーの大暴れ。
機関銃は乱射するわ、大格闘は繰り広げるわ。とにかく痛快無双。
これはまるで”インド版怒りのランボー”ではないか。
おお、やれやれ、もっとやれぃ。

 

サスペンスの謎解き決着はちょっと曖昧だったが、最後の娘についてのオチはよかった。
なるほど、そういうことだったのだね。

 

ハリウッドものにはない野暮ったさと無手勝流が、一度はまると止められなくなるエンタメ無双のインド映画だった。

 

 

「フォードvsフェラーリ」 (2019年)

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2019年 アメリカ 153分
監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:クリスチャン・ベール、 マット・デイモン

ル・マン耐久レースもの。 ★★★

 

これは男の映画だった。
車好きの人にはたまらない映画だろうが、私のようにそれほどカー・レースに興味のない者でも十分に興奮して観ることができた。
主人公たちは実在の人物とのこと。
(ちなみに私はスバリストで、3台のレガシー・ツーリング・ワゴンに2年間乗った後、今はレヴォーグに乗っている。)

 

舞台は1960年代後半で、フェラーリル・マン24時間レースでは圧倒的な強さを示していた。
そんな中で、アメリカ最大の自動車メーカーのフォード社が、ル・マンでのフェラーリ打倒を目標に掲げる。

 

それにいたるいきさつも、子供じみた男(社長)の意地の張り合いから。
男の夢は、単純な子供じみたわがままから始まるものなのだな。男は永遠の子どもなのだな。実はフォードはフェラーリを買収しようとしたのだが、体よくあしらわれ、おまけに馬鹿にされたのだ。
おのれ、フェラーリを見返してやるぞっ!

 

その依頼を受けたのがキャロル・シェルビー(マット・デイモン)。
トップ・レーサーだった彼は心臓病のために引退して、スポーツカーの製造会社をやっていた。
そしてシェルビーが目をつけたのがすご腕レーサーのケン・マイルズ(クリスチャン・ベール)。
もう、車に対して純粋としか言いようがないくらいな超真面目人物。
真面目すぎて、周りの誰とも妥協しないちょっと困った人物。

 

シェルビーとマイルズはル・マンで勝つための新しいレーシングカーを開発しようとする。
このあたりのプロフェッショナルならではの取り組みは熱い。
夢に向かって突き進む男たちは格好いい。
ケン・マイルズの夫婦愛や、親子愛も描かれていた。

 

面白かったのはマイルズの奥さん。
シェルビーとマイルズがちょっとした行き違いからとっくみあいの喧嘩を始める。
それを見た奥さんは二人を止めるどころか、椅子を持ち出して見物し始める。
二人の友情の深さを知っていればこその行動だった。

 

二人の夢に向かっての邁進なのだが、こういうドラマには悪役も必要。
マイルズの自由闊達ぶりを快く思わないフォード社の副社長が邪魔をしてくる。
マイルズをル・マンのメンバーから外すのだ。
なにくそ、負けるものか。
そう、これは理不尽な邪魔に打ち勝って、最後にギャフンと言わせる池井戸潤のドラマと同じなのだ(笑)。

 

メンバーから外されたマイルズだが、ちゃんと自分が見つけたレーシング・カーの改良すべき点を告げる。
う~ん、格好いい。
そして二人は他の国際レースで優勝して実力を示し、ル・マンのメンバーに復帰する。

 

そしてついに1966年のル・マン24時間耐久レースが始まる。
レースはCGを使わずに撮影したとのことだが、なるほどとそれを納得させるだけの迫力があった。

 

シェルビーはちゃっかりとしたところもある。
レースに勝つために、フェラーリの計測時計をくすねてみたり、ネジを何気なく落としてフェラーリ陣営の動揺を誘ってみたり。

 

最後の最後に、あの悪役副社長がまたちょっかいを出してくる。
その時にマイルズが取った行動は・・・。
少し釈然としないところもあったが、レースには圧勝したわけだから自分の中ではふっきれたものがあったのだろう。

 

男の夢と友情と家族愛が描かれた好い映画でした。
とにかくクリスチャン・ベールが好かった。このところ彼は大活躍だな。

 

「戦神/ゴッド・オブ・ウォー」 (2017年)

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2017年 中国 128分
監督:ゴードン・チャン
出演:チウ・マンチェク、 倉田保昭

歴史アクション物。 ★★☆

 

16世紀、明王朝時代が舞台。
日本の海賊の倭寇が中国沿岸を荒らしていて、明はなんとかこれを討伐したいとしていた。
しかし倭寇は難攻不落の砦に立てこもり、びくともしない。

 

倭寇は海賊であるわけだが、実は日本の松前藩と裏でつながっていたという設定。
日本がもっと悪者として描かれているかとも思ったのだが、それほどでもなかった。
むしろ倭寇を指揮している倉田保昭はかなりの人物として描かれていた。

 

ここで登場してくるのが知略、人望、そして武術に長けた威継光(チウ・マンチェク)
見事に倭寇の砦を制圧する。
しかし倭寇もしぶとい。なんとその軍勢は2万人なのだよ。

 

当時の明軍が使う武器が珍しい。解説で調べてみると、
三眼銃というのは石火矢を3つ束ねたもの。破壊力はあるのだが、一度発泡すると装填には時間がかかったらしい。「もののけ姫」にも登場したとのこと。
狼尖というのは枝葉の付いたままの竹に刃先をいくつも取りつけたもの。振り回して多数の敵を相手にしたらしい。
虎蹲砲というのは100発ぐらいの弾をまき散らす散弾銃のこと。これは威力がありそう。

 

合戦の場面も迫力のあるものとなっていた。
衣装デザインは、なんと、あのアカデミー賞も取っているワダ・エミ。
撮影や音楽にも日本人スタッフが参加している。
思っていた以上にていねいに作られていた。

 

適度のユーモアも入っており、英雄である威継光が恐妻家というところが面白い。
この奥さんが可愛い女優さんで、他人の前では夫に厳しくしながら、二人きりになると甘えまくる。
ツンデレそのもので可愛い。
もちろん、その男勝りの性格も持つ奥さんがクライマックスではちゃんと活躍する。

 

さて、倭寇は軍勢を分けてその一隊で威継光の家族が住む街を襲う。
明軍にその救出に向かわせてそのすき首都を攻めようという策略。
しかし妻を始めとした街の自衛部隊を信じて、威継光は倭寇の主力部隊との決戦に臨む。
それにしても、倭寇が2万人もいて、迎え撃つ明軍が3000人というのは、ちょっと・・・。

 

日本では未公開ということだったが、これだけの出来の映画がどうして・・・?
日本人出演者の中にどうも問題を起こした俳優がいたようだ。そのせい?
もったいないなあ。

 

「よこがお」 (2019年)

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2019年 日本 111分
監督:深田晃司
出演:筒井真理子、 市川実日子、 池松壮亮

深層心理ドラマ。 ★★★☆

 

微妙な心理が錯綜するドラマである。
主人公についても、その周りの人たちについても、誰が正しくて誰が間違っているなんて簡単には言えない。
社会で暮らす人々には、誰でもその人なりの理由や事情を抱えている。
そんなことを、ひとつの事件への関わりと、それをマスコミ報道が書き立てていく過程で考えさせてくれる。

 

訪問看護師として信頼を集めていた白川市子(筒井真里子)。
訪問先の大石家では、介護している老婆の孫である基子(市川実日子)、サキ姉妹とも私的な付き合いをするほどだった。
しかし、ある日、サキが行方不明になってしまう。何者かに誘拐されたのだった。

 

どの人もある時には正しい行いをしているし、ある時には誤った行いをしている。
いや、その正しさ、過ちも、誰にとってかという立場で変わってくる。
人間の感情や行為は本来そのようなものだろう。

 

映画は時間軸が錯綜する。
事件の前の穏やかな日々の市子。そして事件のまっただ中で翻弄される市子。そして今の精神的にすさんだ市子。
同じ一人の人間でありながら、その生活は大きく変化している。市子の髪型や髪の色でいつの時間を描いているのかは見分けが付くようになっている。

 

市子は真面目に生きてきた善良な女性であるはずだった。
それなのに、自分にはまったく責任がない事件をきっかけに不条理に人生を奪われていった。
事件を興味本位で取りあげるマスコミが市子を追い込んでいく。

 

実はサチを誘拐したのは市子の甥だったのだ。
そのことが明るみに出ると、マスコミはこぞって市子をワイドショーの取材対象にし始める。
曰く、「被害者の家に乗り込んでいた悪魔のような訪問看護師。内情を探っていたのか?」などなど。

 

そして、さらにTVの取材に対して基子が市子を告発するような証言をしてしまう。
そこには基子の市子に対する憧れ以上の感情が作用もしていたのだろう。
市子が結婚するという事を知った基子の、嫉妬のような捻れた感情が起こしたことだったのだろう。

 

そしてその証言をTVで観たときの市子の衝撃。
彼女にも信じていた人に裏切られたという怒りと絶望感があっただろう。
こうして市子と基子の感情がどんどんもつれていく。

 

基子に対する市子の復習もすごかった。
そこまでのことをするのかという気にもなる。
基子の恋人で、市子の復讐の出汁につかわれた池松壮亮が、脇役なのだが、妙に存在感があった。

 

ヒロインの筒井真理子は59歳。その年齢を知って少し驚いた。中年というか、もう初老ではないか。
初めて見た女優さんだったが、陰のあるような、謎めいた部分を孕んでいる雰囲気だった
体当たり演技もあって、瞠目すべき女優だと思った。

 

映画タイトルの「よこがお」とは、こちらからは見えない人の横顔の反対側には別の人が住んでいる、ということのようだ。
ハッピーエンドなどとはほど遠い終わり方なのだが、後にまで余韻を残す作品だった。

 

「新聞記者」 (2019年)

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2019年 日本 119分
監督:藤井道人
出演:シム・ウンギョン、 松坂桃李

社会派ドラマ。 ★★★

 

原案は、政府に厳しい質問を突きつけることの多い東京新聞記者の望月衣塑子。
だから今作も現安倍政権の腐敗ぶりを告発するというか、揶揄しているようにも思える内容となっている。

 

東都新聞社会部の記者の吉岡エリカ(シム・ウンギョン)は、政府の記者会見でただ一人鋭い質問を繰り返していた。
ある日、その社会部に大学新設計画に関する極秘情報を記したFAXが匿名で届く。
なんだ、このFAXは? ガセネタか? 調べてみるぞ。

 

内閣には調査室という胡散臭い部署があるらしい(実際にあるのだろうか?)。
そこのエリート職員の杉原(松阪桃李)は、政府がおこなっている情報操作に疑問を抱き始めている。
そう、彼は正義の人なのだ。

 

ところどころで、本物の政府批判をしているTVの討論番組の映像を挟み込んだりしている。
だから観ている者は、現実の日本政府がやっていることと、映画の中の政府がやっていることが重なってくるように感じてしまう。
この映画は、今、公開されなければ、意味が大分薄れてしまったことだろう。

 

杉原が尊敬するかっての上司の神崎が飛び降り自殺をしてしまう。
その葬儀の場で初めて顔を合わせる吉岡と杉原。
なぜ神崎さんは自殺しなければならなかったのか? 二人はそれぞれにその謎を探りはじめる。

 

ヒロインの吉岡は片言の日本語を話す。
実は日本人の父と韓国人の母のもとアメリカで育ったという設定だった。
彼女の父も新聞記者だったのだが、ある事件のために自殺していたのだ。
尊敬していた父の後を継ぐために、吉岡は新聞記者としての使命感に燃えていたのだな。
それにしても、シム・ウンギョンがいもとあやこに似ていると思ったのは私だけ?(苦笑)

 

杉原の上司役の田中哲夫が怖かった。
それこそ政権安泰のためだったら、汚れごとだろうが何だろうがやってしまう。
もちろん彼にはまたその上司がいて、彼も汚れごとの歯車の中で動いているのだろうが。
なにしろ、この国の民主主義は形だけでいい、と言い捨てるのだから怖ろしい事態だ。
今の日本の政権はこんなに酷くはないと信じたいのだが、果たして?

 

(以下、ネタバレ)

 

実は、極秘裏に新設が進められていた大学は、生物兵器開発の研究が目的のものだったのだ。
そしてその情報を新聞社にリークしてきたのは神崎だったのだ。
吉岡と杉原は協力してこのことを新聞トップに載せようとする。
悪質な嫌がらせや、脅し、裏取引きなどが二人に襲いかかってくる。
果たして・・・。

 

最後の場面、横断歩道の反対側に立った吉岡に、杉原が何かを伝えようとする。
声は届かないのだが、唇の動きから、それは「ごめん」と言っているようだった。
・・・そうなのだな。

 

洋画ではたとえば「大統領の陰謀」とか、最近では「記者たち」があった。
それらに比べて、今作はより身近に感じるせいか、どろどろとしていた。

 

現時点で、本作は日本アカデミー賞の優秀作品賞、優秀主演女優賞を取っている。
はたして最優秀賞がとれるか?

 

 

「僕らのミライへ逆回転」 (2008年)

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2008年 アメリカ 101分
監督:ミシェル・ゴンドリー
出演:ジャック・ブラック、 デス・モフ、 ミア・ファロー、 シガニー・ウィーバー

映画オタクのドタバタ・コメディ。 ★★

 

舞台は街の片隅の小さなレンタル・ビデオ屋
まだDVDなどなくて、文字通りビデオ・テープで映画の旧作を観ていた時代。
主人公はひょんなことから店を任されたマイク(モス・デフ)と、その悪友のジェリー(ジャック・ブラック)。

 

どちらも冴えない男なのだが、特にひどいのがジェリー。
変な実験をしたおかげで強力な電磁波を身体に帯びてしまう。
その身体でビデオ屋に現れたおかげで店のビデオ・テープは全部駄目になってしまう。
ありゃ、ビデオを借りに客が来てしまったぞ。

 

客の手前を取り繕う2人は、なんとダンボールや廃材を使って自分たちで客が借りに来た映画を作ってしまう。
それも「ゴーストバスターズ」や「ラッシュアワー2」といった有名作。
どんな映画が出来上がったかと思えば、当然のことながら、オリジナルとは似ても似つかないチープなもの。

 

しかし、そのチープさがかえって面白い。
ロボコップ」は子どもたちが喜びそうな親近感があるし、「2001年宇宙の旅」の宇宙基地でのジョギング場面など傑作だった。
自主制作映画は大人気となり、今度はあれを撮ってくれ、次はこれが観たいぞと、リクエストが入り、順番待ち状態。

 

店によくいちゃもんをつけに来るおばさんがいる。
どこかで見たような気もする顔だなと思っていたら、なんと、ミア・ファローだった。ちょっと老けていたので、びっくり。
それにシガニー・ウィーバーも出てくる。

 

どうもミシェル・ゴンドリーは自分が映画オタクだった頃を題材にしすぎる。
本人は何物にも代えがたい思い出なのだろうが、他人にとって必ずしも面白いというわけではない。

 

この映画も、映画の自主制作をしてみたいと考えた人の夢物語のようなもの。
本作でパロディ化された映画は、ほとんどの人が元映画を知っているような有名作ばかり。
だから、あの名作がこんなチープな映像になるなんて、という落差を楽しむことができる。
それに、よくもまあ考えたものだなあ、と感心もさせられる。

 

この映画の面白さはそこに尽きる。つまり、それ以上のものは出てこない。
そこが”映画制作を夢みなかった私”には物足りなさが残った。