あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。約2000本の映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。監督名、主演俳優名でも検索できます。

「孤狼の血 LEVEL 2」 (2021年)

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2021年 日本 139分
監督:白石和彌
出演:松阪桃李、 鈴木亮平、 村上虹郎、 西野七瀬

バイオレンス・ヤクザ映画。 ★★★☆

 

前作「孤狼の血」は役所広司演じるはみ出し刑事・大上のその迫力に圧倒されたものだった。
その大上が死んでしまったので続編はないのだろうと思っていた。
しかし「LEVEL2」が作られた。大上の暴力的な言動に途惑っていた若手刑事・日岡松坂桃李)を主人公にして。

 

正直なところ、優男イメージの松坂桃李を主人公にして映画になるのか?、と思っていた。
ごめんなさい、見くびっていました。
3年の月日が経って、日岡は大上を凌ぐほどの迫力のある暴力刑事になっていた。
すっかり松坂桃李を見直してしまった。これだけの演技ができるんだ!

 

前作から3年後の呉原が舞台。
日岡は警察権力を巧みに利用して、対立する二大暴力組織 を取り仕切っていた。
しかし、鈴木亮平演じる上林が出所してきて、状況は一変する。
呉原は再び暴力抗争の街に突入していくのだ。

 

とにかくこの映画、吹っ切れた鈴木亮平の狂人ぶりで魅せてくれる。
人を痛め、殺すことに何のためらいもない。感情のままに激しい暴力をふるう。
その気魄に、組織のトップですら立ち向かえない。いやそのトップをもどんどん叩きつぶしていく。
笑顔を見せていたかと思うと、次の瞬間にはとてつもなく残虐になる。
この境目の無さが怖ろしい。感情の起伏の幅が常識では計れない怖ろしさである。

 

日岡が情報収集のために飼い慣らしているチンピラがチッタ(村上虹郎)。
虐げられつづけて来たチッタが何とか生き延びていく処世術が哀れである。
そのチッタの姉で、日岡の愛人役が西野七瀬
元アイドルらしいのだが、蓮っ葉な面と弟思いの姉としての面が上手く出ていて、好い存在感だった。

 

この映画は松阪と鈴木、この二人がすごかったのだけれども、もうひとりすごかったのが滝藤賢一
煩わしくなった日岡を潰すために画策するあくどさ。
豹変する表情の怖ろしさ、不気味さ。滝藤の迫力もすごかった。

 

そして、その手先になって日岡の懐に入りこむ***もお見事。
何か裏がありそうだなとは思っていたのだけれども、ね。

 

最初から最後までバイオレンスだらけの迫力映画。
容赦のない殴打があり、眼球えぐり取りがあり、怒号が飛び交う。
どこまでも突っ走ってしまう暴力行為がぞっとするほど怖ろしいのだが、もっと怖ろしかったのは、そんな行為に走ってしまう荒廃した心だった。
どこにも救いのない、やり場のない感情を抱えてしまっている主人公たちだった。

 

今回は出番がなかったのは刑務所に入っている江口洋介
剃刀ヤクザというイメージの彼だが、次回作は彼が出所してくる?

 

「花のあと」 (2010年)

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2010年 日本 107分
監督:中西健二
出演:北川景子、 甲本雅裕、 市川亀治郎

女剣士の純真時代劇。 ★★☆

 

父から剣術の教えを受けてきた以登(北川景子)は、女ながらにかなりの腕前となっていた。
彼女はある年の花見の帰りに、下級武士ながら剣の達人である江口孫四郎と出会う。
そして一度だけ彼と立ち会いをした彼女は、女と見くびらなかった彼にほのかな恋心を抱く。

 

原作は藤沢周平の短編。
小説の中の以登はそれほどの美貌ではないと書かれているようだ。
ということは、以登は映画とはかなり印象が異なっているのだな。
なにせこちらはとびきりの美貌といっていいほどの北川景子である。
10年前の北川景子がまだ少しふっくらとしていて、今よりも初々しい(当たり前か)。

 

さて、以登には結婚間近の婚約者・才助がいて、孫四郎にも逆玉の輿の縁談がきていた。
つまり以登のほのかな恋心は誰にも秘めたままで終わる宿命だったのだ。
このあたりはいかにも藤沢周平原作らしい。

 

しかし、孫四郎の結婚相手には藩の要職に就いている藤井勘解由(市川亀治郎)という不倫相手がいたのである。
この勘解由という奴がいかにも狡くて悪そう。
保身のためには他人を蹴落とすことを何とも思わないような奴。
ついに、勘解由の陰謀によって孫四郎は自害に追いやられてしまう。
才助の協力によってそのことを知った以登は復讐をしようとする。

 

才助はぬぼーっとして風采が上がらない男。
しかし以登の孫四郎に対するほのかな恋心を知りながらも、彼女のためにやることをちゃんとやってくれる。
なかなか好い味を出している好人物。

 

クライマックスは以登と勘解由の対決場面。
どこまでも悪賢い勘解由は3人の部下を秘かに連れてきていた。狡い奴だよなあ。
市川亀治郎がもうその雰囲気をよく出していて、こういう悪役がいると主人公が引き立つんだよねえ。

 

あわやというところで、父が与えてくれていた脇差しが役に立つ。めでたしめでたし。
(その脇差しは、結婚を目前にした以登に、父が武家の嫁たるものはこれで身を守れと渡してくれていたもの。
前半でこれが出てきたときに、ぜったいにこの脇差しは後で登場するなと思っていた 笑)

 

(さてツッコミ)
藤井勘解由の悪事が明かされたのは好かったのだけれど、その証拠となった書き付けには以登の署名があったはず。
そのあたりはどうなったんだろう?

 

(もうひとつ、ツッコミ)
北川景子は全編これ笑顔がなく、眉間に軽く皺を寄せている表情ばかりだった。
険しい表情の彼女は美しさも際立っていて、これはこれで好かったのだが、婿となるはずの才助はこの表情ばかり見せられて、結婚してからの将来が不安にはならなかったのだろうか?(笑)

 

そんな以登がその後どうなったのか気になるところ。
実は映画は、その50年後の以登が昔話を語っているという設定になっていた。
才助との間には7人もの子供ができたとのこと。
幸せは夫婦生活が送れたのだね、よかったよかった。

 

「フライング・ジャット」 (2016年)

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2016年 インド 149分
監督:レモ・デソウザ
出演:タイガー・シュロフ、 ジャクリーン・フェルナンデス

スーパーヒローのアクション・コメディ。 ★★☆

 

ひと言で言えば、たわいもないヒーローもの。
勧善懲悪で、ちょっとドジなヒーローが笑いも取る。
もちろんヒロインは超きれいで、歌も踊りもたっぷりの2時間半。
エンタメ・インド映画として欠けているものはなにもない。頭をからっぽにして楽しめる映画。

 

高校教師のアマン(タイガー・シュロフ)は武術の教師なので(そんなのがあるんだ?)、体力はあるのだが、どうにもドジ。
意中の同僚(ジャクリーヌ・フェルナンデス)にもスルーされ気味。あ~あ。

 

物語はアマンの家の近くに生えているご神木をめぐるもの。
汚染物質を垂れ流している悪企業がその土地を欲しがり、ご神木を切り倒そうとする。
それをなんとか止めようとしたアマンは、ご神木に力を授かり、空が飛べるようになる。
おおっ!

 

母が作ってくれたコスチュームに身を包み、悪の手先と戦う。
ヒロインもその格好良さに惚れてくれたぞ。
タイトルの「フライング・ジャット」のジャットはシク教徒を指す言葉。
つまり「空飛ぶシク教徒」ということになる。なるほど、そのままだ。

 

主役のターガー・シュロフは、このところのインド・アクション映画「タイガー・バレット」、「War ウォー!」でも主役だった。
とにかくシックス・パックの腹筋が並ではなく、ダンスもアクションもキレがある。
この映画はそれらの前のもの。

 

ヒロイン役のジャクリーン・フェルナンデスはスリランカ人とのこと。
ミス・ユニバーススリランカになった既往もある。
学校教師役で眼鏡女子として登場している。
眼鏡をしているときは愛敬のある可愛いという感じなのだが、眼鏡を外すと、マジ美人。
これだからインド映画は侮れないなあ。

 

(少し寒くなるような)コミカルな部分もある。
アマンは空が飛べるようになったのだが、高所恐怖症なので、人の目線より高いところは飛ばないよ(笑)。
フライング・ジャットの正体はマスクとコスチュームで隠しているので、ヒロインはアマンであることを知らない。
君が惚れているヒーローは、本当は(ドジな)僕なんだよ・・・。

 

さて悪役側は汚染物質をエネルギー源として強大化した悪会社の用心棒。
こいつは人々が無意識のうちに排出していた汚染物質までも力の元としてしまう。
さあ、みんな、あいつを倒すために汚染物質を出さないようにしよう!
判りやすいプロパガンダだなあ。

 

さすがにちょっと長い。後半まで来るとちょっとダレてくる。
まあ、何も考えずに、何も期待せずに、ただ心を無にして映画を楽しみましょう。

 

「ミラーズ・クロッシング」 (1990年)

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1990年 アメリ
監督:コーエン兄弟
出演:ガブリエル・バーン、 マーシャ・ゲイ・ハーデン、 ジョン・タートゥーロ、 アルバート・フィニー

コーエン兄弟のギャング映画。 ★★★

 

1920年代のアメリカ東部。
そこでは、レオ(アルバート・フィニー)が率いるアイリッシュ系とキャスパーが率いるイタリア系の二つのマフィア勢力が覇権争いをしていた。
主人公は、そのレオの片腕で絶対的な信頼を置かれているトム(ガブリエル・バーン)。
彼は女性問題や八百長賭博などが絡んで二つの組織の間でゆれうごく。

 

コーエン兄弟の3作目の映画。
コーエン兄弟といえばブラック・コメディ調だったり、スリラー・サスペンス的だったりというイメージが強い。
しかし本作はそれらの雰囲気は少なく、硬派なギャング映画である。
へえ、こんな映画も撮ったんだ。

 

オープニングに森の木々を見上げながら移動していく映像が映る。
そしてカメラは枯れ葉が敷き詰められた地面に置かれたお洒落なソフト帽をとらえる。
風がきて、帽子は音もなく森の奥に飛び去って行く。
大変に美しい光景で、この映像は作中でも何回か映されていた。

 

さて。
レオの手下のバーニー(ジョン・タートゥーロ)は小狡い小悪党。八百長の情報を洩らしては金を稼いでいる。
そんなバーニーに損をさせられたキャスパーが、バーニーを始末しろとレオの元に乗り込んでくる。
トムもバーニーを始末した方がいいと忠告するのだが、バーニーの姉・ヴァーナ(マーシャ・ゲイ・ハーデン)を愛人にしているレオは承諾しない。
おお、話がこじれるぞ。争いの火種だぞ。
おまけに、トムはそのヴァーナと肉体関係を持ってしまうのだ。
おお、レオにばれたらどうするんだ。ますます話はこじれてくるぞ。

 

レオの用心棒が誰かに殺され、報復だといってレオはキャスパーのアジトを襲い・・・。
おのれ、許さん!と今度はキャスパーの一味がレオを襲い・・・。
トムはヴァーナとのことをレオに告白して、激怒した彼に追放されたり・・・。
行くあてを失ったトムは今度はキャスパーの側についたり・・・。

 

トム役のガブリエル・バーンは初めて観たと思うのだが、なかなかにクールな印象のハンサム。
トムは腕っ節はからきし駄目だが、切れ者として描かれている。
しかし、そのトムは二手三手先を読んでいるのか、それとも行き当たりばったりでその場しのぎをしているのか、よく分からない行動をとる。
結果往来になってみたり、ありゃ、こんなはずではなかったになってみたり。
結構なポーカーフェイスで真面目に行動しているのに裏目に出たりする。
やはりコーエン兄弟独得のブラック・ユーモアだったりする。

 

そして小悪党バーニー役のジョン・タートゥーロが、いかにもという雰囲気で好演。
クライマックスは、忠誠の証を見せろと、トムが捕らえられたそのバーニーの処刑を命じられる場面。
場所は森の中の”ミラーの十字路”といわれる場所。
なりふり構わずに命乞いをするバーニー。
はたしてトムはバーニーを殺すのか。森の中にひびく2発の銃声。
弟を殺されたと知ったヴァーナとトムの関係はどうなる?

 

見終わってみれば、登場人物たちが、というよりも、登場人物の描き方がどうもひねくれていたな、という感想になってくる。
バーニーもなんとも小狡い嫌なヤツだったが、トムよ、あんたも騙し騙されで、すっきりしないヤツだったな。
嘘が無くて一番純粋だったのは、組織のボスのレオとキャスパーだったなあ。

 

ギャング映画を撮っても、やはりちゃんとコーエン兄弟作になっていました。

 

「ママが遺したラブソング」 (2004年)

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2004年 アメリカ 120分
監督:シェイニー・ゲイベル
出演:スカーレット・ヨハンソン、 ジョン・トラボルタ

少女の再生ドラマ。 ★★☆

 

生後すぐに祖母に預けられ、両親を知らずに育ったパーシー(スカーレット・ヨハンソン)。
今はトレーラーハウスで男友達と暮らしていたそんな彼女に、母が亡くなったとの報せが届く。
これからは母が遺した実家で暮らそうと、男を捨てて(!)パーシーはニューオリンズに帰ってくる。

 

するとその家には、元大学教授のボビー・ロング(ジョン・トラボルタ)と、作家志望の青年ローソンが住んでいた。
あなたたちはだあれ? この家から出て行って頂戴。
我々はお母さんの友人だ、お母さんの遺言で我々にもこの家に住む権利があるんだ。

 

こうして、高校も止めてしまったような自堕落な少女、初老でアルコール中毒の学者、割とまともで真面目な青年、の3人の共同生活が始まる。

南部の田舎町ののどかな風景が、適度に古びていて、どこか郷愁を呼ぶ。いいなあ。
そこに住む人たちはみんな気がいい。
パーシーは故郷の人々によって母親のことをあらためて知っていく。

 

スカーレット・ヨハンソンが20歳の時の作品。
前年にはすでに英国アカデミー賞主演女優賞も獲っており、彼女の魅力はこの頃には十二分に発揮されている。
一方のトラボルタはこのとき50歳。
白髪の彼はふてぶてしい悪党役でなくても、ちゃんと存在感があった。さすが。
(それにスロー・バラードだったけれどもトラボルタが踊ってみせるのだ。さすがに片手を挙げたポーズは決めていなかったが 笑)

 

アル中男二人はとにかく覇気がない。
酒場でくだをまき、庭でギターを弾いて、とにかく仲間とのんべんだらりとやっている。
こんな男たちとパーシーの共同生活なんてどうなるかと思ってしまう。
なにしろ魅力いっぱいのスカヨハだぜ。そんなに胸が強調された服じゃなくていいのに。
なにせ、お前は処女じゃないだろ、なんて絡んでくるオヤジだぜ。

 

ところが、彼らは真面目にパーシーに学業を再開させるのだ。おやおや。
結局、悪い人は一人も出てこない物語。

 

しかし、映画自体はどうもパッとしない。
母親は一度も画面には出て来ないのだが、その母親とパーシーのかっての確執がどんなものであったのかは明かされない。
だからパーシーが母親のことを聞かされていても、その感情がこちらにはつかみにくい。
それにボビーの人間性の描き方も中途半端。
基本的には善人なのだが、どうもその人間性の魅力が伝わってこない。

 

ということで、なんとも起伏には乏しい物語なのだ。
そして、およそ思っていた通りの展開となっていく。
母が残したラブソングに添えられた手紙で、(予想していた通りの)人間関係が明らかになってくる。
なんだ、やっぱりそうかよ。

 

(無いものねだり)
パーシーを追いかけて(素行不良そうな)元カレがやって来た場面。
彼女に復縁を拒否されてあっさりと引き下がっていったけれど、どうせならボビーと対決させて欲しかった。
ボビーがパーシーのために身体を張って頑張ってみせる、という画面が欲しかったな。

 

まあ、スカヨハがちょっと小悪魔的に可愛らしくて、それが堪能できただけで好かった作品。
それ以外は、狙いはミエミエだけれども、あまり成功したとは言えない気がする。
原題は「ボビー・ロングに捧げられたラブソング」でした。

 

(追記)

同じ年に20歳のスカヨハが出ている映画に「理想の女(ひと)」があります。

40歳のヘレン・ハントとの共演で、惹き文句は「理想の女は、すべてを知り尽くした女(ハントのことです)と、何も知らない無垢な女(スカヨハのことです)だ」です。

こちらは物語がしっかりとした作品でした。

 

 

 

「9人の翻訳家」 (2019年)

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2019年 フランス 105分
監督:レジス・ロワンサル
出演:ランベール・ウィルソン、 オルガ・キュリレンコ

謎解きサスペンス。 ★★★☆

 

「デダリュス」という世界的なベストセラーの完結編が各国で出版されることになった。
出版権を獲得した出版社社長のエリックは世界同時出版を大々的に発表する。
そして各言語の翻訳者9人をある豪邸に集め、一斉に翻訳作業を始めさせる。
情報流出を防ぐために、携帯やPCなどの外部との通信機器の使用を禁止し、広大な地下室に監禁して翻訳作業をおこなわせることにしたのだ。

 

9カ国の翻訳者たち(オルガ・キュリレンコなど)もそれぞれの事情を抱えてこの仕事に応募してやって来ている。
翻訳スタイルもさまざま。
部屋には見張りもいて、しかも出版者からわたされる元原稿は1日分ずつだけ。
小説内容の漏洩防止に神経を尖らせているなあ。

 

この翻訳家を1カ所に集めて事前に新刊内容が漏れないようにする、というのは実際にあったとのこと。
映画化もされた「ダ・ヴィンチ・コード」で人気を博したダン・ブラウンの新刊発刊の時に各国の翻訳者を缶詰めにして翻訳作業をおこなったとのこと。
この映画はその事実に案を得ているようだ。

 

さて映画の方は。
ある日、突然、小説の冒頭10ページがネット上に公開される。えっ、どうしてこの小説の内容が外部に漏れたのだ?
もちろん、小説の内容を知っているのは限られた者だけ。
ということは、翻訳者の中に犯人がいるに違いないとエリックは考える。そして調査に乗り出し・・・。

 

もちろん、9人の翻訳者同士も疑心暗鬼になる。
誰が外部と通じているんだ? 誰が小説の内容を知ることが出来たんだ?
小説の原稿はエリックが大切に鞄の中に入れ、持ち歩いているぞ。誰があの中身を読んだのだ?

 

オルガ・キュリレンコ扮するロシア語翻訳者は、この原作者の大ファン。
なんとか早く小説の続きを読みたいとエリックの部屋に入り込み、鞄を開けようとする。
鞄を開ける暗証番号は何番かしら? 123? 456? 069? それとも007?・・・
こんなところで007ネタを出してくるのかよ(笑)。

 

さらに、エリックのもとに、24時間以内に500万ユーロを払わなければ、次の100ページも公開するぞ、という脅迫メールが届く。
えっ、これはどうしたことだ?
そして実際に100ページ分がネット公開されてしまう。
えっ、そんな馬鹿な!

 

ところどころで、事件の2ヶ月後に刑務所内でエリックが誰かと面会している映像が挟み込まれる。
エリックは、これはお前の仕業だったのか!と怒りに震えている。
しかし画面にはその面会相手の顔は映らない。はたして、エリックが刑務所で面会しているのは誰だったのだ?
この事件の犯人は誰だったのだ?

 

ワン・シチュエーションの単純なサスペンスものかと思っていたら、いや、やられた。
中盤ぐらいで犯人が明らかになって、あれ、このあとどうするんだろ?と思っていたら、やられた。
これはネタバレは絶対に厳禁な映画。最後まで楽しめる。

 

(以下、ネタバレ。未見の人は絶対に読んではいけません)

 

実は、翻訳者たちが屋敷に集められる前から事件は始まっていたのだ。
オリエント急行殺人事件」ではないが、何人かの共謀者が仕組んでいたのだ。
彼らはまんまとすり替えてコピーを取った原稿で内容を知ることが出来たのだ。

 

しかし、しかしである。
そこにもう一つのどんでん返しが残されていた。
この事件の真の狙いは・・・、犯人の真の姿は・・・。

 

ここまで練られた謎解きサスペンスものとは思わなかった。
未見の方は絶対にネタバレ記事を読んではいけませんよ。

 

 

「フリー・ガイ」 (2021年)

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2021年 アメリカ 115分
監督:ショーン・レビ
出演:ライアン・レイノルズ、 ジョディ・カマー

ゲーム内の世界で。 ★★

 

始めにお断り: この映画の私の評価は低いのだが、決して映画の出来が悪かったということではない。
単にゲーム内世界をリアル世界と重ね合わせるという設定に、私がのれなかったせいである。
この映画が好きだった方、ごめんなさい。

 

主人公は銀行の窓口係のガイ(ライアン・レイノルズ)。
彼はなぜか強盗に襲われる毎日を繰り返していた。友達の警備員も同じようなことを繰り返している。
そんなガイが、颯爽と通りすぎるモロトフ・ガール(ジョディ・カマー)を見染める。
友達の警備員がガイに忠告する、止めとけ、彼女は眼鏡をかけている、お前とは済む世界が違う存在だ。

 

実はガイはフリー・シティというオンライン参加型アクションゲームの背景キャラ(モブキャラというらしい)だったのだ。
ゲームの世界のフリー・シティでは、ゲーマーは自分のアバターを操って好きなことができる。そのアバターは眼鏡をかけており、いわばその町の主人公たち。

そしてその町には背景キャラ(モブキャラ)もいる。銀行員だったり、コーヒーショップの店員だったり、警備員だったり。
眼鏡をかけていない彼らはゲームの中で与えられた役割を繰り返すだけの存在なのだ。
眼鏡をかけたゲーマーのアバターの活躍を彩る存在でしかないのだ。

 

ゲーム内世界を実写して映画に取り入れたものとしては「レディ・プレーヤー1」などがあった。
しかしその映画では活躍するのは現実世界からやって来たゲーマーたちだった。
この映画「フリー・ガイ」の独創点は、ガイのようなモブキャラに人格を与えたところ。
モブキャラが自分の考えでゲーム内世界で活躍しはじめるところ。

 

ある日、ガイはいつものように襲ってきた銀行強盗に刃向かい、倒してしまう。おいおい。
そして強盗がかけていた眼鏡を奪い自分でかけてみる。すると・・・。
そこにはモブキャラには見えない世界が広がっており、モロトフ・ガールを助けてのガイの活躍が始まる。

 

何しろゲーム内世界だから、何でもあり。
巨大遊園地で暴れまくっている感じ、豪華なおもちゃ箱をひっくり返して大騒ぎしている感じ。
そして現実世界ではこのゲーム「フリー・シティ」で大もうけをしている悪社長がおり、彼にプログラムを横取りされたミリー(ジョディ・カマー2役:現実世界ではモロトフ・ガールを操作している)がいる。

 

クライマックスは、ガイの活躍を阻止しようとする悪社長配下のアバターとの一騎打ち。。
超強い敵の拳を受け止めるためにガイが取り出したのは、なんと大きく星のマークが描かれた丸い楯。
そう、あのキャプテン・アメリカの縦である。うわぉっ。
(おまけにクリス・パインまでカメオ出演していた。これにもびっくり。)
そしてガイがふるった右パンチの腕はぶっとい緑色の腕。そう、超人ハルクの腕である。
おまけに手にした剣は、なんとライトセーバーではないか。
ちゃんとスター・ウォーズの曲まで流れる。嬉しいねえ。
決めはゴーストバスターズだった。
そうか、ディズニーだからこそできたサービスだったのだな。

 

ということで、どんな人でもその気になれば物語の主人公になれる、という人生応援のような側面も持っている映画だった。
画面もきれいで好くできていた。

そんな好い映画だったのだが、どうしてもゲーム内世界の物語というところに私は入り込めなかった。
この映画が好きだった方、低評価の感想でごめんなさい。