あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。約2000本の映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。監督名、主演俳優名でも検索できます。

「デッドゾーン」 (1983年)

f:id:akirin2274:20211001182637j:plain

1983年 カナダ 103分
監督:デビッド・クローネンバーグ
出演:クリストファー・ウォーケン、 ブルック・アダムス、 チャーリー・シーン

予知能力を得た男は・・・。 ★★★

 

原作はスティーブン・キング
交通事故で5年間の昏睡状態に陥ったジョニー(クリストファ・ウォーケン)。
奇跡的に目覚めたのだが、その間に恋人(ブルック・アダムス)は他の男と結婚してしまっていた。おお、なんということだ・・・。
しかし、彼は手に触れるだけで相手の過去が見え、未来が予知できる能力を得ていた。

 

そんなことが出来るようになったら、そりゃ驚くよなあ。
ジョニーは看護してくれている看護師の手に触れた瞬間に、彼女の家が燃えており、幼子が泣き叫んでいる光景を見てしまうのだ。
彼の言葉に慌てて家に駆けつける看護師。幼子は助かった。好かった。

 

当然のことながらこれは一大事として世間の注目を集める。
連続殺人事件の犯人捜しに協力してほしいとの依頼にも応える。
無残に殺された少女の遺体に触れたジョニーは、彼女が最後に会った男の顔を見ることができたのだ。
また、溺れる事故に遭いそうになっていた少年に助言をして悲劇的な未来を回避する。

 

良いことだらけ? でもそんなことだけではないのである。
避けようがない死ぬ運命にある人のことも判ってしまう。
果ては、人類の未来を左右するようなある人物(チャーリー・シーン)のことを知ってしまったりもするのである。
なんとかして不幸な人類の未来を回避しなくては・・・。そのために自分はどうすればよいのだ?

 

明日死ぬことが判ってしまったり、そこまで極端でなくても、いつ自分が死ぬのかを知ってしまったりすることは、果たして幸せなことだろうか?
自分の未来を知りたいと思う? 人の未来を知りたいと思う?
未来を知らないからこそ生きていることができる、そんな気もしてくる。

 

クローネンバーグ監督作だが、ホラー色はまったくない。
一人の人間として最善を尽くそうとするジョニーのドラマを描いている。。
自分が得てしまった能力を活かすために、ジョニーはある決断をする。

 

(ちょっとツッコミ)
今は人妻となった元カノだが、今でもジョニーのことを愛してくれている。
それは嬉しいことなんだけれど、今の旦那さん、気の毒じゃね?

 

若い日のクリストファー・ウォーケンが好い雰囲気を出しています。
彼のどこか諦観を漂わせる悲しい笑顔が印象的だった。

 

 

「モンタナの目撃者」 (2021年)

f:id:akirin2274:20210928190127j:plain

2021年 アメリカ 100分
監督:テイラー・シェリダン
出演:アンジェリーナ・ジョリー

一般市民アンジーのアクションもの。 ★★★

 

観てきたよ、アンジーのサバイバル・アクションもの!
今回は(監督作のような)政治色もなく、(前作のような)男女のどろどろ愛憎劇もなく、エンタメに徹していた。
そう、これでいいんだよ、アンジーは。

 

森林消防隊員のハンナ(アンジェリーナ・ジョリー)は、自分の判断ミスで3人を助けることができなかった過去を引きずっていた。
周りの皆は、あれは自然の厄災だった、君のせいじゃないよ、と言うのだが、ハンナにはトラウマとなっていた。
ときに自暴自棄になる彼女に、友人の保安官イーサンは、見張り塔で一人で過ごして気持ちを落ち着けろと忠告する。

 

もうひとつのお話。
ある汚職の証拠を掴んだ会計士のオーウェンは、自分の命が狙われていることを知る。
そこで息子のコナーを連れて、親戚のイーサン夫妻のところに逃れようとする。
組織からの命令を受けた暗殺者兄弟がオーウェン親子を追う。
父は自分の命を犠牲にしてコナーを逃がす。コナーは森の奥へ逃げこむ。

 

今作は、暗殺者に追われる少年と偶然に出会ったヒロインが、少年を何とかして助けようとする物語。
そして暗殺者の放火による山火事がものすごい勢いで迫ってくる。
巨大な炎に逃げ道をさえぎられながら、、暗殺者からも逃げなければならない。
明快な物語が100分という長さの中に収められていて、緊張感が持続していた。

 

山火事を消火するためにパラシュートで現場に降りる消防隊がいるとは知らなかった。
もし逃げ場のない火事のただなかに降りてしまったらどうするんだろ?と心配になってしまった。
それに山火事を見つけるための見張り塔というものがあることも初めて知った。
森林消防隊って、大変な仕事だ。

 

40歳代も後半になったアンジーだが、その臈長けた魅力は、やはり好いなあ。
相変わらずの目力も、相変わらずの官能的な厚い唇も、やはり好いなあ。
一時は拒食症じゃないかと心配するほどだった体型も、骨張った感じが薄れていた。
よかった、よかった。

 

ハンナとコナーが非常食のようなものを食べる場面がある。あまり美味しくなさそう。
コナーが尋ねる、いつもこんなのを食べているの?
ハンナが答える、そうよ。
そこでコナー曰く、だからお姉さんはそんなに痩せているんだ。・・・笑

 

保安官のイーサンの奥さんは身重な状態。
しかしコナーをさがす暗殺者は、情け容赦なくこの夫妻のところへやって来るのである。
そしてこの身重の奥さんが果敢に好い仕事をするのである。
即席”火炎放射器”で暗殺者に対抗したり、馬にまたがり山中を疾駆したり。
頑張ったねえ。

 

山火事の迫力は半端ではなかった。
ラスト、救出されたハンナとコナーが映る。
ハンナは炎を見続けていたせいか、目が炎症を起こしているような感じ。
それが大変にリアルで、厳しいサバイバルであったことをよくあらわしていた。
困難な状況だったけれど、今回はちゃんと一人の少年を助け通したのだね。

 

(ツッコミ)
陰謀の裏にいる大物はこれからどんな策略をしてくるのだろう?
陰謀をプレス発表をするのはいいが、そのあとのコナーも心配だぞ。

 

久しぶりにアクションものアンジーを観ることができた。大満足でした。

 

「バロン」 (1989年)

f:id:akirin2274:20210926000231j:plain

1989年 イギリス 125分
監督:テリー・ギリアム
出演:ジョン・ネビル、 サラ・ポーリー、 ユマ・サーマン

テリー・ギリアムのほら吹き男爵。 ★★★☆

 

テリー・ギリアム監督と「ほら吹き男爵」、いかにも相性が良さそうだな、と思いながら鑑賞。
期待通りに、なんじゃ、これ?!といった独創的な作品だった。

 

舞台は18世紀末のドイツ。
トルコ軍に包囲されて猛攻撃を受けている町の劇場では、旅の演芸一座が「ほら吹き男爵の冒険」を上演している。
その最中に、一人の老人が「儂がほら吹き男爵ことミュンヒハウゼン本人である、本当の話を聞かせてやろう!」と乱入してくる。

 

ということで、この映画は、芝居が上演されている劇場とそこで上演されている劇、そしてミュンヒハウゼン老が語る物語が、絡み合って映像となってくる。
しかしミュンヒハウゼン老の語る話は、どこまでが真実でどこからがホラ話なのか・・・。
とんでもないホラ話を実写で見せてくれる。

 

4人の特異能力を持つ家来と一緒にトルコ皇帝に会ったミュンヒハウゼン。
皇帝に美味しいワインを1時間で取り寄せてみせるとの賭けをして、家来の韋駄天を走らせる。
賭に勝った彼は、持てるだけの財宝をもらうという約束に、家来の怪力に城の宝物をすべて持ちかえってしまう。
トルコ皇帝はそれを取り返しに攻めてきているんだよ。
本当か? それ、ホラ話じゃないの?

 

しかし、味方の撃った砲弾にまたがったミュンヒハウゼンは爆撃に成功すると、今度は敵の砲弾にまたがって戻ってくるのだ。
そして少女サリー(サラ・ポーリー)と一緒に、下着で作った気球に乗って、共にトルコ軍と戦う家来を探しに旅立つのだ。
・・・と、ここはホラ話ではなくて、実際に今の話なんだよね?

 

当時9歳で前歯が抜けているサラ・ポーリーが愛くるしい。
大人びた言動をしてみたり、やはり子供らしい無邪気さがあったり。

 

まずは、家来を捜すために月にむかった二人は、そこで巨大な月の王様とお妃様に会う。
街のビルの向こうからのぞく巨大な顔の王様やお妃である。
しかも顔は身体から取り外しができて、自由に空を飛べるのだ。
さすが神様だ。

 

韋駄天と再会した二人は月から地球へ落下して火山の中へ。
(この、月から地球へ落ちてくるという展開は「月世界旅行」のオマージュ?)
そこで怪力男と再会したり、美しいヴィーナスに出会ったり。

 

ヴィーナスは名画にあるように貝の中からあらわれる。
胸を隠し、長い髪が下半身を覆っている。美しい。
あれ、このヴィーナスは? そう、なんと当時17歳だったユマ・サーマンだった。美しく可愛い。

 

この後も火口の中に落ちた一行は地球を突きぬけて、反対側の海に出てきたり。
そこで怪魚に飲み込まれて、その腹の中で千里眼の家来と再会したり。

 

そして街を救うためのトルコ軍との最後の戦い。
肺活量男が突風を起こしたり、怪力男がトルコの軍船を壊したり、韋駄天男が戦場を混乱させたり・・・。
こうしてトルコ軍は敗走していくのだが、えっ、これもホラ話の続きだったのか・・・。
でも、街の門を開けてみると、トルコ軍はいなくなっているぞ。本当の話?

 

どこまでがホラ話で、どこからが現実の話なのか混沌として物語は終わっていく。
奇想天外な物語と絵造りの映画だった。
さすがにギリアム監督である。
そういえば、構想から30年ぐらいかかって「ドン・キホーテ」もやっと完成したとのことだった。
そのうち、あちらも観なくては。

 

「ワイルド・スピード/ジェットブレイク」 (2020年)

f:id:akirin2274:20210923095359j:plain

2020年 アメリカ 143分
監督:ジャスティン・リン
出演:ヴィン・ディーゼル、 ミシェル・ロドリゲス、 ジョン・シナ、 シャーリーズ・セロン

ワイスピ・シリーズ第9作。 ★★★☆

 

ワイスピも9作目となると、出演者にも愛着が湧いてくる(でも3作目まではスルーしているのだが・・・汗)。
今作では、レティ(ミシェル・ロドリゲス)と幼い息子と静かに暮らしていたドム(ヴィン・ディーゼル)が、ふたたび世界の危機を救うために活躍する。
始めは04レースをしているだけの映画という印象を持っていたのだが、今や”荒々しいミッション・インポッシブル”といった感じになってきている。

 

今回のメインは、世界中のコンピュータ・システムをハッキングできるという装置の争奪戦。
ジャングルの中での敵とのカー・チェイス。レティはバイクにまたがり、こちらも頑張る。
ついには深い断崖絶壁の間を車で振り子のようになって跳んだりもするのだ。すごいよ。

 

そしてこのときの敵が強い。
レティが尋ねる、あいつは何者? ドムが答える、俺の弟だ。
そうなのだ、今回の敵役ジェイコブ(ジョン・シナ)は、なんとドムの弟。あ、ドムには妹だけじゃなくて弟もいたんだ。

 

東京が舞台となった場面で、危機一髪になった仲間を助けてくれたのは、えっ、ハン?
レティもびっくり、ドムもびっくり(予告編でもその映像は流れていたから、ネタバレにはならないだろう)。
ジゼル役だったガル・ガドットが回想シーンでちょっとだけ映っていた。ハンのように彼女が復活することはないのかな・・・。

 

クライマックス、街中でのワイスピの真骨頂とでもいうべき大カー・アクションが展開される。
すごい迫力で、ここでは磁場を狂わす強力な装置が大活躍する。猛スピードの車がぶつかるわ、壊れるわ。もう大変。
しかしどう考えても磁場の発生範囲が都合よすぎるぞ。
ま、面白けりゃ、いいか(苦笑)。

 

一方で、ついにはロケットエンジンを取り付けた車まで登場する。
こんな車でどこへ行く? ・・・おいおい、まるで「007ムーン・レイカー」じゃないか。
ここまでやる?

 

終盤、ドムたちがやっと危機を乗り切ったと思ったところに、なんとシャーリーズ・セロンの満を持しての登場。
思わず、こりゃヤバい!と心の中で叫んでしまった。
だって、彼女の意地悪さ、悪どさは並ではない。

 

そして、そして何やかやがあって、あれぇ!と思ったら、なんと、そういうことだったのか。
さすがセロン姐さん、並じゃなかったね。
また悪女ぶりを発揮するのだろう。期待しているよ。

 

エンディングでファミリーが集合したくつろいだ場面、ミアの隣は席が空けてあった。
ミアが言う、もうじき来るわよ。
そこに見覚えのある車がやって来る。(でも、車から降りる人物は写らない。)
そうか、映画の中ではブライアン(故ポール・ウォーカーが演じていた)は死んでいないんだな。

 

エンドクレジットの途中で、今回は出番のなかったジェイソン・ステイサムがあらわれる。
できれば次回作では、ドゥエイン・ジョンソンも加わって禿げマッチョ3人がそろって欲しいな。

 

このワイスピ・シリーズもあと2作で終了することが予告されている。
来年、再来年と、あと2年で終わってしまう。寂しくなるなあ。

 

「間違えられた男」 (1956年)

f:id:akirin2274:20210920203634j:plain

1956年 アメリカ 105分
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:ヘンリー・フォンダ、 ヴェラ・マイルズ

本当に怖ろしい話。 ★★☆

 

冒頭でヒッチコック監督があらわれて、これは本当に怖ろしい話です、事実に基づいています、との口上を述べる。
その通りに、この映画は実話に基づいた異色のサスペンス。
いつものヒッチコック監督作品に比べて非常にシリアスなものとなっている。

 

ナイトクラブのベーシストとして働くクリストファー(ヘンリー・フォンダ)。
貧しくて借金をしながらだが、愛妻ローズ(ヴェラ・マイルズ)と二人の子どもと共に平和な生活をおくっていた。
そんな彼がある日、強盗だと訴えられてしまう。えっ?!

 

まさかそんな馬鹿なことが自分の身に起こるとは普通は思わない。
しかし、勝手に思い込んだ目撃者たちの証言と、強引な警察の取り調べに、善良な一市民はあれよあれよという間にとんでもない状態になってしまう。
家族に連絡を取ることもできないままに警察署に拘留されてしまうのだ。

 

何の心構えもないままに、留置所に入れられる。
こんなことが自分に起きるとは思ってもいなかったのに、手錠をかけられて移送される。
すぐに身の潔白が明らかになるはずだと思っていたのに、面通しで犯人だと名指しされてしまう。
不条理としかいいようがない。どうしたらいいんだ?

 

突然、強盗犯に間違えられた生真面目な一市民を、ヘンリー・フォンダが迫真の演技で見せる。
理不尽な出来事に否応なく振りまわされていく戸惑い、恐怖、そんなものが彼のおずおずとした動作、表情であらわされている。
実際にこんな冤罪が我が身に降りかかったらどうしたらよいのだ?と思わせるリアル感がある。
たしかに、本当に怖ろしい。

 

なんとか保釈金を積んで帰宅したものの、これからの裁判はどうなるのだ?
そして妻のローズが精神的にまいってしまう。
自分のせいで夫は強盗を働いたのではないだろうかという疑惑さえ抱えているようなのだ。
すべて悪いのは自分なのだと自分を責めつづける・・・。

 

映像は冷酷なまでに淡々とクリストファーやローズを捉えていく。
はたしてクリストファーの無実は証明されるのか。

 

普通に生活している人がいきなり犯罪者にさせられてしまうという状況を描いて、いつものヒッチコック映画とはひと味異なった冷え冷えとした印象のサスペンスでした。
(この映画では、ヒッチコック監督は冒頭に口上を述べているので作品途中での出演はありません)

 

 

「トリコロールに燃えて」 (2004年)

f:id:akirin2274:20210917220311j:plain

2004年 アメリカ 121分
監督:ジョン・ダイガン
出演:シャーリーズ・セロン、 スチュアート・タウンゼント、 ペネロペ・クルス

第二次大戦前後のラブストーリー。 ★★★☆

 

第二次世界大戦前から大戦後までの10年間のラブストーリー。
ラブストーリーと書いたが、実はそんな浮ついたものだけではなかった。
時代の波の中で翻弄された、性的に奔放なヒロインの、それ故の一途な悲恋、悲劇だった。

 

1933年イギリス、貧しい学生ガイ(スチュアート・タウンゼント)は上流階級の娘ギルダ(シャーリーズ・セロン)と出会う。
華やかな彼女に惹かれたガイだったが、奔放な彼女はパリへ旅立ってしまう。
そして3年が経ち、ギルダからの手紙に導かれてガイもパリにやってくる。
しかし売れっ子カメラマンとして活躍していたギルダは、パトロンとの関係を止めようとはしない。

 

そんなギルダなのだが、彼女もまたガイを愛しているのである。
その愛の形は、ギルダにとってはうわべの行動などとは無縁のもののようなのだ。
他の男との肉体関係を続けようが、そんなものは超越したところにある心の愛のようなのだ。
真から彼女に愛されていると知っても、やはりこんな愛の形は男にとっては辛い、辛いよなあ。
彼女はまたパトロンのあの男のところへ行っている・・・。辛い、苦しいよぉ。

 

ギルダの本当の願いは、スペインの内戦を逃れてきた友人ミア(ペネロペ・クルス)、そしてガイの3人で暮らすこと。
同居を始めた3人は、戦争の影が迫ってくるパリで享楽的な日々を送る…。
ギルダはガイを愛し、同じようにミアも愛していたのだ。

 

しかし、戦争という大きな渦に個人は飲み込まれていく。
後半は、それこそ時代に翻弄されていく3人の運命を描いていく。

 

内乱で荒廃していく祖国の現状を愁いたミアは、スペインに戻る。
そして戦場で看護師として働く。
そしてガイもレジスタンス運動に身を投じていく。
愛する2人に去られてひとりパリに残されたギルダは、パリに侵攻して来たナチスの愛人になっていくのだ。
戦争という時代はこれほどまでに個人の生き様に影を落とすのかと思わされる。

 

やがて連合軍がパリに侵攻してきて、ナチス支配からの解放がおこなわれる。
そしてガイは、解放された市民から売女とののしられるギルダの隠された秘密を知る。
それを知ったガイは必死にギルダのもとへ駆けつけようとする。
廃墟となったかってのギルダの部屋で、ガイは彼女の手紙を見つける・・・。

 

シャーリーズ・セロンが全ての作品といってもいい。
当時、実生活の恋人であったスチュアート・タウンゼントとの共演作でもある。
もちろんペネロペ・クルスもきれいで(もちろん私は彼女のファンである)、異なる魅力の美しさだった。

 

時代に翻弄された一人の女性の愛の物語だった。
ギルダは、うわべだけ見れば性に奔放な女性に思えるのだが、そこには自己犠牲もあり、辛く悲しいものがあった。
きれい事だけではない重いものを残す作品でした。

 

「スパイの妻」 (2020年)

f:id:akirin2274:20210915224033j:plain

2020年 日本 115分
監督:黒沢清
出演:蒼井優、 高橋一生

戦争の裏側で。 ★★★

 

TVで同名の番組を放送していたので(未見)、あれ?と思っていた。
実はこの映画は、元々はNHKで放送された同名ドラマを、スクリーンサイズや色調を新たにして劇場版としたものとのこと。
ということは、粗筋も出演者も同じということ? TVドラマを観た人がわざわざ映画をまた観に行く?

 

舞台は太平洋戦争勃発直前の1940年の神戸。
ヒロインの聡子(蒼井優)の夫・福原優作(高橋一生)は貿易会社を営み、優雅な生活を生活を送っていた。
そんな聡子の生活に戦争の影が忍びよってくる。

 

タイトルからは、本格的な諜報活動に従事する妻を描いた作品かと思っていた。
まったく違った。この妻は世間知らずのお嬢様育ちで、どこまでも夢見がちだったのだ。
どちらかといえば、一人で自分の作った物語の中へ入って行ってしまうような、そんな妻だったのだ。
そんな妻を蒼井優が巧みに演じていた。

 

優作は貿易商だから外国との取引もある。生活も当然ながら洋風である。
憲兵となった甥の津森(東出昌大)は、そんな優作夫婦が世間からのみならず、政府からも反日的だと見做されることを心配していた。
そんなある日に商用で満州に渡った優作は、同地で衝撃的な国家機密を知ってしまう。

 

満州関東軍が新しい殺戮兵器開発のために人体実験をおこなっていたことは、今では公にされている。
しかし当時は軍の極秘事項であった。
その秘密の証拠の8mm映像を日本へ持ち帰ってきた優作は、アメリカへ脱出して世界の世論に訴えようとする。

 

そのことを知った聡子は、私もスパイの妻として頑張るわ、とテンションを上げていく。
おいおい、夫はスパイじゃないだろ。義憤に駆られて個人で行動しているんだろ。
でも聡子が、夫はスパイなんだ、と思い込んでいるのだから、まあ、仕方がないか。

 

実はこの映画の大きな流れは、サスペンスではなく、夫婦の愛の物語だったのだ。
当初、優作は危険な秘密を聡子には隠しておこうとする。君は何も知らなくていい、僕がいいようにするから。
と言っておきながら、優作はその証拠資料と映像フィルムを、聡子が開け方を知っている金庫に隠したりする。
これ、おかしくね?

 

秘密を知った聡子とともにアメリカへの密航を企てた優作。
異なるルートで日本を脱出する手はずだったのだが、貨物船に隠れた聡子はあっさりと発見されてしまう。
自分の脱出を成功させるために、優作は聡子を目くらましに利用したのだ。
騙された聡子が呟く、「お見事です!」 
 

(以下、結末に触れます)

 

5年間の太平洋戦争が終わり、映画も終わっていく。
エンディングの字幕でその後の経緯が淡々と告げられる。
優作の死亡報道、しかしそれは偽造されたものとの報告もある、と。
そしてその翌年、聡子はアメリカへ渡った、と。

 

たったそれだけの字幕である。
解釈は観ている人に任されるのだが、すべては優作が仕組んでいたのだろうと思えた。
妻を安全な場所に留めるための、あえての密航の密告。
そして戦争が終わり、実は生きている優作は聡子をアメリカへ呼び寄せた・・・。

 

果たして聡子は優作のそれらを見通していたのだろうか
彼の計画と愛をどこまで信じていたのだろうか。

 

夫婦のそれぞれの思いやりが交差して、騙し騙され、といった様相を呈するところが「お見事です!」というところ。
物語としては面白かったのだが、ただ、映画全体の印象としてはやや散漫な感じを受けてしまった。
ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞している。
個人的にはこの映画が監督賞?と思ってしまった。黒沢監督ごめんなさい。