あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。約2000本の映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。監督名、主演俳優名でも検索できます。

「ドミノ」 (2005年) 美しい女賞金稼ぎ

2005年 アメリカ 127分
監督:トニー・スコット
出演:キーラ・ナイトレイ、 ミッキー・ローク

スタイリッシュなサスペンス・アクション。 ★★★

 

実在した女賞金稼ぎドミノ・ハーヴェイの実録物だ、ということは知っていた。
なんでも、父はハリウッド・スターで、美貌にも恵まれたドミノ自身もモデルとして成功していたとのこと。
そんな彼女が、なんだってバウンティ・ハンター(賞金稼ぎ)になんかなった?
よほど破天荒な人物だったのだろうか。

 

映画は、全身傷だらけになっているドミノ(キーラ・ナイトレイ)がFBI捜査官(ルーシー・リュー)に尋問されている場面から始まる。
これはどういう状況なのだ?
尋問への供述とともに、そこからドミノのこれまでの人生がふりかえられていく。

 

そうか、こんなに美しいのに、心は荒れていたんだな。
こんなに華奢な雰囲気なのに、蓮っ葉で根性は座っていたんだな。
賞金稼ぎという職業にめぐりあって、それを天職のように思っていたんだな。

 

ドミノはリーダーのエドミッキー・ローク)、どこか切れているチョコ、それに運転担当のアフガニスタン人とのチームで仕事を請け負っていく。
請負仕事の仕組みがよく判らなかったのだが、どうやら保釈金を借りたまま逃げてしまった悪人を捕まえる、ということのようだった。

 

しかしそこはアメリカのこと、逃げる奴も筋金入りのワルなので、銃撃戦必死の仕事なのだ。
アメリカってすごい国だね。こんな仕事、日本では考えられんぞ。

 

トニー・スコットの映像美と言ってもいいのだろうか、画面はコントラストが強調されていて、黄色とか緑色が乱舞している。
そのうえに慌ただしい画面切り替えがあるので、観ている意識は落ち着かない。
意図的に不安定な気持ちを呼び覚ますように作っているのだろう。
好き嫌いは分かれるのだろうが、私は好みだった。

 

ここでカジノからの大金強奪事件へと話が進んでいく。
犯人グループはドミノたちに偽の依頼をしてカジノの追求を逃れようとする。
そこにマフィアが絡んできて、FBIも捜査に乗り出す。
強奪された大金はどこにある? 誰を捕まえればいいんだ?

 

大金に群がるいくつものグループ(みんな悪、ね)がいるものだから、話しも混乱する。
映画冒頭のFBIはこのカジノ強奪事件を捜査していたのだった。
ドミノの供述に従って流れる映像の時間軸も、時に前後する。

 

そうか、最初の方の突入場面はそういうことだったのか。
役所受付の人の好さそうな太った黒人おばさんは、実はそんなことをした人物だったのか。
ああ、あいつらが勘違いしたものだから、事件はますますややこしくなっていったんだな。

 

ドミノという数奇な人生を送った女性賞金稼ぎの物語と、初期のガイ・リッチーばりのサスペンス・アクション物語が、融合していた。
そのためにやや混乱していた部分もあったが、充分に楽しめるものだった。
キーラ・ナイトレイの新しい魅力も発揮されていました。

 

 

「フランシス・ハ」 (2012年) 等身大の女子映画・ハ

2012年 アメリカ 86分
監督:ノア・バームバック
出演:グレタ・ガーウィグ

モノクロお洒落映画。 ★★

 

ポスター写真と、奇妙なタイトルに惹かれて鑑賞。
「ハ」って、なんだ?

 

このヒロインが走っているポスター写真は、ドイツ映画「ラン・ローラ・ラン」を思い出させる。
あちらは殺されかかる恋人を助けようとして、オレンジ色髪のローラが何度も同じ時間軸を走り続ける映画だった。
こちらはまったくの文芸もの。

 

舞台はニューヨークのブルックリン。
フランシス(グレタ・ガーウィグ)はそこでプロの舞台ダンサーを目指す練習生。
彼女の日常を、ルーム・シェアしている女友だちや、その他の友人などを絡めてスケッチ風に描いている。
27歳なのにどこか未成熟な感じを与えるヒロインを、まったくの等身大に捉えている。

 

彼女は親友ソフィーとの慣れ親しんだ暮らしに満足のあまり、恋人からの同棲の誘いも拒否してしまう。
で、恋人にはふられてしまう。
その上、その親友のソフィーは恋人と暮らすために部屋を出て行ってしまう。
なにやってんだ、私・・・。

 

その後も男友達が2人で暮らす部屋に転がり込んだりするのだが、今度は職を失ったりもする。
ちょっと自分の都合のいいように物事を解釈してしまうんだよね、彼女は。
で、なにやってんだ、私・・・、となる。トホホ。

 

この手の映画は、やはり主人公に惹かれないと辛いものがある。
一番残念だったことは、私にはヒロインの女優さんの魅力が感じられなかったこと。
ヒロインはどちらかといえば老け顔で体格のよい女性なので、あまり繊細さが感じられなかった(汗)。


それに作中で踊るモダン・ダンスもあまり上手いとは思えなかった。
もちろん、ずいぶんと練習はしたのだろうけれど。

 

しかし、ヒロイン役のグレタ・ガーウィグは自らも映画監督をするような才人なのだ。

そしてこの映画の最後近く、フランシスはこれまでの経験を活かしての道を見つける。
好かったね。

 

筋はあるようなないような映画なので、ポイントは映画がかもし出す雰囲気に入り込めるかどうかだろう。
ということで、私の評価は低いものになってしまったが、このお洒落感覚が好き!という人もいるだろう。
人の好みは千差万別だよ。

 

タイトルの「ハ」。
これは映画のラストで訳が明かされるのだが、とてもすばらしいものだった。
このセンスは極上だった。

 

「未知との遭遇」 (1977年) やはり記念碑的な作品だな

1977年 アメリカ 137分
監督:スティーブン・スピルバーグ
出演:リチャード・ドレイファス、 フランソワ・トリュフォー、 メリンダ・ディロン

ぎんぎら巨大UFO。 ★★★☆

 

45年前の映画である。今さらながらに再見。
原題は「第三種接近遭遇」。これはハイネック博士が1972年に発表した分類で、空飛ぶ円盤の搭乗員と接触する段階を差している。
未知との遭遇」とした邦題も、原題直訳に比べてなかなかに好かったのではないだろうか。

 

宇宙人、そしてUFOの存在が次第に明らかになっていく序盤の盛り上げ方は、さすがに巧みなものだった。
時空を越えて大戦中の戦闘機が発見される砂漠の場面から、ばっちりである。
そして真夜中の道路で頭上を通過していく常識外れの発光体、顔面半分だけの日焼け。
いずれUFOがあらわれることを知って映画を観ているのだが、この展開はぞくぞくさせてくれた。

 

この映画にはいくつかのバージョンがあるが、今回観たのはファイナル・カット版といわれているもので、製作20年記念の再々編集版である。
最初の映画公開後に特別篇が作られたわけだが、そこで話題になったのはマザーシップの内部描写だった(このバージョンも観た)。
ファイナルでは再びそれはカットされていた。

 

政府はすでにUFOに対する大がかりなプロジェクトを組んでいたわけだが、映画はそんなことは知らない一般人の視点で物語を進めていく。
これは観ている者に少しずつ事態を明らかにしていくということになり、上手いやり方だった。
政府の責任者をフランソワ・トリュフォーが演じていたことにも驚いたものだった。

 

そしてなんといってもUFOのマザーシップの登場場面である。
ああいった巨大UFO、それも突起物が無数に付いていて(地球の大気圏に入ってきたときに摩擦熱はどうしたのだろう?)、まぶしいほどの照明ぎらぎらのUFOの造形は斬新だった。

 

今回あらためて思ったのは、主人公の男性(リチャード・ドレファス)って自己チューだったんだな、ということ。
いくら不思議な力で選ばれた存在だからといって、家族をないがしろにして我が家を勝手に泥だらけにするか?
奥さんと子どももいて、彼はあのあとどうしたのだろう? 後日談が気になるぞ(汗)。

 

SF映画の記念碑的映画の一つだろう。
そういえば、宇宙がまったく出てこない宇宙映画、としても話題になったな。

 

「その夜の侍」 (2012年) 対照的な二人の人生が交差する

2012年 日本 119分
監督:赤堀雅秋
出演:堺雅人、 山田孝之、 綾野剛

気弱な執念男の復讐劇。 ★★☆

 

奇妙なタイトルと、主演の二人に惹かれて鑑賞。
ある劇団が演じた同名戯曲を、その劇団で作、演出をおこなっている赤堀雅秋が監督となって映画化したとのこと。

 

鉄工所を営む中村(堺雅人)は、5年前に妻をひき逃げ事件で失った。
彼は、今も妻の遺骨を傍らに置き、事件の直前に妻がかけてきた留守番電話の声を聞き続けている。
のうのうと生きている犯人が許せない、あいつを殺して自分も死のう・・・。

 

度の強そうな眼鏡をかけた堺雅人は、いかにも気の弱そうな、しかし思い込んだら取り憑かれてしまいそうな、そんな人物像を巧みに演じていた。
観ているこちらが苛々してくるほど。

 

かたや、ひき逃げ犯人で一応の服役をして出所している木島(山田孝之)は、もう粗野で乱暴。
自分の欲望だけで周囲を怒鳴りつけて生きているような人物。
ふてぶてしい山田孝之を観ていると、お願いだから自分の生活には入り込んでこないで欲しいと思わせる。こちらも上手い。

 

そんな木島に痛めつけられ半死の目に遇わされながらも彼に従う男(田口トモロヲ)がいるかと思えば、陵辱されたのに彼を慕うようになる女(谷村美月)もいる。
木島がヤバい人物だと判りながらも彼の心配をする弟分(綾野剛)もいる。
木島は、悪のカリスマなのだろうか。

 

木島の元へは8月10日(中村の妻の命日なのだ)にお前を殺すというというメッセージが毎日届いている。
中村はその日に備えて、包丁を鞄に入れて木島の後をつけ様子を探り続ける。

 

映画は、過去にとらわれておどおどとした生活を過ごす中村と、傍若無人に刹那的に生きる木島を交互に映していく。
対照的な二人は、妻を殺された男と殺した男という接点でつながっている。

 

クライマックスは中村が木島を殺すと予告した嵐の夜。
それぞれ包丁を持った二人は激しい風雨の中で対峙する。
雨でびしょ濡れになり泥まみれになりながら争い続ける二人。
二人にとってどんな状態が最良の着地点になるのだったろうか?

 

登場人物たちの心情は、主役二人を始めとして、綾野剛にしても田口トモロヲにしても谷村美月にしても、ほとんど理解不能だった。
共感度はどの人物に対してもまったくなし。
しかし、それぞれの俳優たちの演技はすごかったので、つい引きつけられて観終わった。
安藤サクラもデリヘル嬢として登場。下着姿で歌を歌ってくれます。)

 

観終わっても、結局「侍」が何を指しているのかはよく判らなかった(苦笑)。
仇討ちを誓って相手と対峙した中村を「侍」と見立てたのだろうか?

 

しかし、あまりそういった潔さは感じられなかった。
妻への哀切にとらわれ続けた中村、そして自己の欲望に負け続けている木島、二人の弱い人間の感情のぶつけ合いだった。
最後、中村が妻の留守電話の録音を消去したところがわずかな救いだったか。

 

「ミッション・マンガル」 (2019年) 火星探査機を打ち上げるぞ! 

2019年 インド 130分
監督:シャガン・シャクティ
出演:アクシャイ・クマール、 ビディヤ・バラン

インド発の実録もの。 ★★★☆

 

アジアで初めて火星探査機打ち上げを成功させたのはインドだった。
しかも1回目の打ち上げで成功させたのだ。知ってた?
この映画はそれを成し遂げたインド宇宙研究機関の実話。
もっとも、エンタメ用にかなり脚色はされているのだろうな。

 

月ロケットのミッションが失敗し、責任者のラケーシュ(アクシャイ・クマール)とタラ(ビディヤ・バラン)は左遷される。
火星探査プロジェクトという、誰もが本気にしない窓際族用の部署である。
しかし、二人はめげなかった。
こうなりゃ、本気で火星を目指そう! 火星探査機を打ち上げるぞ!

 

この映画は、こうして超ポジティブ思考の二人が突き進んだ物語。
横たわる困難にもくじけず、いつも明るく励まし合って、さあ、火星探査機を打ち上げるぞ!
観ていれば元気になる映画。

 

意気込みはいいのだけれども、でも肝心の人材も予算もない。
とりあえず集められたチームのメンバーは、経験の浅い4人の女性と、2人の男性。
その男性たるや、軟弱な童貞男と退職後の霊場巡りを楽しみにしている初老男とさえない。

 

しかし、女性陣は4人ともみんな超美人。さすがインド映画。
職場にこんな美人が一人でもいたら、同僚男性は嬉しいやら、仕事は手に付かないやら、になるだろうな。

 

さあ、ラケーシュのリーダーシップで、僅かな予算で打ち上げを成功させるぞ。
チームメンバーのそれぞれの人間性もきちんと描かれている。
彼と別れて住む家に困っているメンバー、運転免許がなかなか取れずに困っているメンバー、妊活をしていたら奇跡的に身重になったメンバー、などなど。
こんな風に描かれると登場人物への親近感も湧いて、ミッションを応援したくなるよねえ。

 

でも問題は山積み。
なに、火星まで飛ばせるロケットがない? それを作る予算がない?
そこでラケーシュが思いつく、・・・よし、失敗した月ロケットで火星を目指そう!
でも月用の小さなロケットでは火星まで飛ばすだけの燃料を詰めないよ。どうするんだい?
今度はタラが思いつく、そうだわ、地球の引力を利用しましょ!

 

嘘みたいな話だが、実際にこれで打ち上げたんだよなあ。
そして、ついに打ち上げの時が来る。
果たして探査機は火星の周回軌道に乗ることができるのか?

 

火星の後ろに探査機が隠れると地球への電波が途絶える。
探査機が無事に飛んでいるのかどうかはまったく判らなくなるのだ。
果たして、予定していた時間に探査機は火星の裏側から再びあらわれてくれるのか?
実話ベースだから、ミッションが成功したことは知った上で映画を観ているわけだが、やはりここはクライマックスだった。

 

それにしても、こんな奇想天外な計画ですべてが上手くいったなんて、まるで漫画のよう(笑)。
とにかくポジティブ思考の登場人物たちばかりなので、観ていて楽しい映画。
IT大国であるインドって、実力もすごいんだね。

 

不満を一つ。130分しかない作品なのに前半の早いときにインターミッションがあった。
このことから推測するに、本当は絶対にもっと長かったんだよな。
本当は歌とダンスがもっとあったんじゃないかい? 省略しやがったな!

 

「真夜中のサバナ」 (1997年) イーストウッド監督の異色作

1997年 アメリカ 155分
監督:クリント・イーストウッド
出演:ジョン・キューザック、 ケビン・スペイシー、 アリソン・イーストウッド、 ジュード・ロウ

殺人か、正当防衛か。 ★★☆

 

映画の舞台であるサバナというのは、アメリカ南部、大西洋に面した古い街。
碁盤目状に作られた道の両側に南部特有の木立が茂り、由緒ある教会や公園が点在するという。観光地なのかな。
映画では街全体が南部らしい保守的な雰囲気として描かれている。

 

この街で骨董商を営んでいるのが、大邸宅に住む富豪のジム(ケンビン・スペイシー)。
彼が主宰する豪華なクリスマス・パーティを取材するために街を訪れたのが、ライターのジョン(ジョン・キューザック)。
ところがそのパーティの夜に、ビリーという青年が撃ち殺され、ジムが容疑者として逮捕される。
えっ? どうしてそんなことが? 事件に興味を抱いたジョンも勝手に事件を調べ始める。

 

この映画は、実際にサバナで起こった事件を基にした小説が原作とのこと。
すると、殺人罪か、正当防衛による無罪か、実際に裁判もおこなわれたのだろう。
ドラッグクイーンの証人も実在していて出廷した?

 

この映画には、これ、何?と思うところがいくつかあった。
ブードゥー教のお婆さんが冒頭にあらわれ、最後もふぉふぉふぉと喪黒福造の様に去っていくのだが、このオカルト趣味、必要だった?
死んでしまった犬の首輪だけを持って今も散歩する人や、虻をいつも顔の周りに飛ばしている人もあらわれる。
街の住人も奇妙な人ばかり・・・。こんな登場人物、必要だった?

 

ジムに撃ち殺される被害者のビリーは、ゲイで麻薬中毒、おまけに切れやすいというハンサム青年。
あとで彼が若き日のジュード・ロウだと知ってびっくり。へぇ~。

 

それと、ジョンと親しくなっていく花屋の女性がいた。
魅力的な女優だと思っていたのだが、なんとイーストウッド監督が最初に結婚した時の娘さんだった。へぇ~。
でも、彼女には一緒にバーをやる予定の彼氏がいたんじゃね? 彼、どうなった?

 

後半はまったくの法廷ものとなっていく。
ビリーを撃ち殺したのはジムに違いないのだが、その状況が焦点になっていく。
ジムは、ゲイの愛人だったビリーをどのような経緯で撃ってしまったのか、やむを得ない状況だったのか?

 

そして証人として登場してくるのがドラッグ・クイーンのザ・レディ・シャブリ(ジェフリー・ルイス)。
彼女?のインパクトが、まあ、すごい。
お尻を振り、シモネタ連発で、映画の雰囲気を一気に別ジャンルのものに変えてしまいそうなほど(苦笑)。

 

結局のところ、この映画は本格的な事件解明ものではなかった。
かといって、本格的な法廷ものでもなかった。
ブードゥー教も出てくるが、オカルトというわけでもないしなあ。
なにか、ごちゃ混ぜ感がある。どれも中途半端な感じ。

 

しかし2時間半の長さを退屈せずに見せるのだから、イーストウッド監督の力業は確かにあるわけだ。
というわけで。あまり正統派のイーストウッド監督作らしくはなかったな。

 

言ってみれば、奇妙な住人たちが住んでいるサバナという街の雰囲気に呑まれた作品だった。
それを描きたかった?

 

「キングダムⅡ」 (2022年) 大戦闘スペクタクル

2022年 日本 134分
監督:佐藤信
出演:山崎賢人、 清野菜名、 橋本環奈、 吉沢亮、 

春秋戦国時代の戦争史劇。 ★★☆

 

原泰久の同名漫画は文句なしに面白い。
映画の前作は、戦災孤児の信(山崎賢人)が、弟の謀反で逃亡していたえい政(後の秦の始皇帝吉沢亮)を助けて王位を奪還するところまでだった。
今回はその続き。

 

副題は「遙かなる大地へ」。その通りに、今回は大平原での大戦闘ものだった。
秦国へ攻め込んできた魏との戦いが始まる。
信は最弱と馬鹿にされた伍(五人組)の一員として参戦する。
戦場は二つの丘がある蛇甘平原。丘を占領した側が圧倒的に有利になるぞ。

 

主人公の信は、とにかく戦で手柄を立てて大将軍になるのが夢。
そして映画は、この丘の攻防をめぐる局地戦に徹している。
主人公の目的もわかりやすいし、戦いの目的もわかりやすい。
あとは映像でそれをいかに面白く見せてくれるか、ということだが、これは迫力のあるものとなっていて成功していた。

 

どこまでが実写でどこからはCGを加えているのかは判らなかったが、大群がぶつかり合う映像はたいしたもの。
歩兵、そして騎馬の大軍が闘い、そこに敵の圧倒的な破壊力を持つ戦車軍団もあらわれる。
この戦車というのは馬に引かせた台車なのだが、複数名が乗っていて弓も射れば槍攻撃もしてくる。
車輪には長い刃が取り付けられていて、近づけない。
こりゃ、ヤバいよ。

 

それにコミック特有のユニークな登場人物が変化をつけてくれる。
今作から登場するのが謎の少女の羌かい(清野菜名)。
特徴のある模様が描かれた頭巾をかぶっていて、両手を広げた姿勢で走ったり闘ったりするのだが、彼女のめちゃくちゃの強さが痛快である。
ただし、闘いぶりがすごいので一定時間以上は呼吸がつづかないという弱点も持っているところは巧みな設定である。
羌かいのファンは多いよね。

 

今回は登場場面は少なかったが河了貂もユニーク。
妙な被り物をしている山の民で、実は女の子なのだが信がそのことに気づいていないというところが面白い。
演じているのは橋本環奈で、へえ、こんな可愛いひょうきんな子がいるんだと、私は前作で初めて彼女を知ったのだった(汗)。

 

原作のファンであれば、大沢たかお扮する王騎将軍が最後に登場するのは嬉しいところ。
個人的な問題としては、王・えい政を演じた吉沢亮
彼が悪いわけではないのだが、どうしてもアイリス・オオヤマのCMの彼が浮かんできてしまって、真面目な王様に見えなくなってしまっていた(苦笑)。

 

何も考えることもなく楽しめるアクションものだった。
欠点を言うならば、前作もそうだったのだが、物語があまりにも原作に忠実なこと。
コミック場面を実写に置き換えただけじゃないか、とも思えてしまうのだ。
贅沢な不満かな。