2008年 アメリカ 90分
監督:ピート・トラヴィス
出演:デニス・クエイド、 フォレスト・ウィッテカー
大統領狙撃事件のクライム・サスペンス。 ★★★☆
大観衆を集めた広場で演説をおこなおうとしたアメリカ大統領が狙撃され、つづいて爆破事件も起こる。
この映画の特意な点は、なんといっても同じ時間帯の出来事が何回もくり返されるところだ。
狙撃や爆破にいたるまでの経過が、TVマン、シークレット・サービスや観光客、犯人などのそれぞれの視点から繰り返され、少しずつ真相が解明されていく。
他の人には見えていなかった事柄が、その近くにいた別の人物の視点には入っていたりするのだ。
同じ時間帯の出来事がくり返されるものとしては、「ラン・ローラ・ラン」があった。
ただし、あちらは同じ設定での物語が3回くり返されるのだが、そのたびに少しずつ物語の結末が変わってしまう趣向だった。
この作品では全く同じ事件が何回も繰り返されるので、4~5回目になると、新しい事実が判明してくるにしても、半ばぐらいでは正直なところ少しだれてくる。
しかし、後半にはいると一気に物語が加速してくる。
大統領側もそんなに警備が甘いわけではない。しかし、テロリストはさらにその裏をかく。面白くなってくる。
こうして大勢の人物の動きが錯綜してひとつの事件の全貌が明らかになる。
一種の群像劇のような体裁をとっているが、主役になるのはシークレット・サービス役のデニス・クエイドと、偶然その場に居合わせた観光客役のフォレスト・ウィテカーだ。
フォレスト・ウィテカーはたしかオスカーの受賞歴もあったと思うが、味のある俳優。この映画でも、非常にいい役どころであった。
彼はどうやら家庭不和があって一人でヨーロッパ旅行をしているようなのだが、事件現場で偶然に知り合った女の子を災害から必死に守り通す。そのことによって彼も家族との関係修復が暗示される。
最後のクライマックスでは、それまで情け容赦なく殺戮をしてきたテロリストが、あのような行動をとるのにはやや違和感がある。
しかし、そのおかげで、見終わったあとにホッとした気持ちになるのだが。
90分という短い時間にぎっしりと物語がつめられていて、見応えのあるサスペンスもの。