あきりんの映画生活

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風の前奏曲

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2004年 タイ 109分
監督:イッティスーントーン・ウィチャイラック
出演:アヌチット・サパンポン、 アドゥン・ドゥンヤラット

タイ伝統楽器のラナート奏者の伝記。 ★★★☆

ラナートとは、船の形をした共鳴箱に21~22枚の音板を並べた木琴のことで、この映画は実在の奏者ソーン・シラパバンレーンの伝記。
タイがまだシャム王国だったころに生まれたソーンは、幼い頃からラナートの才能に恵まれていた。そんな彼が幾度かの挫折を乗りこえながら第一人者に成長していく。

と、こう書いてしまえばなんと言うこともない筋書きだが、実際の映画は、死の床にあるソーンの回想のようにすすむ。
だから幼い頃の思い出や、青年期の修業時代、晩年になってからの出来事などが思い出されるままに前後して描かれる。
時間軸のあつかいにはじめは混乱するが、登場人物が描きわけられているので、すぐに判るようになる。この手法は、ともすれば単調になりがちな伝記映画に変化を持たせていて、成功している。

才能のある楽師は王族のお抱え楽団に取りたてられ、演奏バトルなどに出場する。
この演奏バトルが予想以上の迫力であった。初めてソーンが破れる当時の天才ラナート奏者とのバトルでは、演奏の迫力に風まで吹き荒れてくる。
その因縁の相手との再びの演奏バトルが後半にもあるのだが、超絶テクニックの争いで、ただの木琴とは思えない激しさであった。

ソーンの晩年は王国からタイへと変貌する時代で、戦争の暗雲も影を落としている。
新政府は西洋化を図って民族音楽を禁止しようとさえするのだが、それに反対する主人公の毅然とした態度が凛としていた。

邦題もいい。原題は単に「前奏曲」なのだが、ここに「風の」をつけたところがいい。
映画の中では、演奏バトルに敗れた失意の主人公が、風にゆらぐ椰子の葉を見上げてその様から新しい奏法を見つける、という場面があった。

緑の多いタイの風景も美しく、本当に風が吹き抜けていくような印象の作品。
タイ映画は初めて観たが、これはお勧めです。