1961年 イタリア 122分
監督:ヴァレリオ・ズルリーニ
出演:クラウディア・カルディナーレ、 ジャック・ペラン
未亡人と青年の恋。 ★★★☆
クラブ歌手のアイーダ(クラウディオ・カルディナーレ)は男にそそのかされて旅にでたのだが、その男にも棄てられる。やっと男の家を捜しあてたアイーダを、男の弟ロレンツォ(ジャック・ペラン)が見初めるのだが、ロレンツォはまだ16歳であった。
16歳の少年の、年上の女性に対するおずおずとしたような恋心が描かれている。
その純粋な気持ちは判るのだが、その一方での未熟さ、思慮の浅さには、正直なところ、苛々とさせられた。
お前、そんなことをして、まだ世間が判っていないな、とつい言いたくなってしまう。
一方で、アイーダにも貧しさ故の身勝手な部分がある。
分別のある大人のあなたがそれではいかんでしょう、と言いたくなるのだ。
彼女は生きることに流されているのであり、それをこれまでの惨めな環境のためからきたことだと受け入れてやれるかどうか、そのあたりで感情移入の度合いが違ってくる。
そんな未熟な若者と、生きることに負けて身を持ち崩しそうになる女性が、それぞれの人生の中で交叉したひとときを描いている。
それぞれの人間としての弱さと、それでもなお相手を思う気持ちの純粋さが迫ってくる。
お互いが相手を思う表現はぎごちない。
前半で、アイーダはロレンツォにアイロンを売りつけてお金をせしめようとしたりしながらも、ロレンツォが貸してくれようとするお金をうけとることは断る。
二人には別れる以外の道がないことは誰にも明らかなので、それがせつなくなってくるのだ。
クラウディオ・カルディナーレははっとするほど美しい。
一方のジャック・ペランはこの作品がデビューに近いと思うのだが、まだ少年の初々しさを残している(実はこのとき19歳だったそうだ)。
モノクロの画面も美しい。
夕暮れの浜辺の場面や、最後の、ロレンツォと別れて深夜の駅からアイーダが出てくる場面などは、絵画を思わせる。
2時間をこえる映画だが、長さを全く感じさせない。やはり佳作だからだろう。