2002年 日本 77分
監督:塚本晋也
出演:黒沢あすか、 神足裕司、 塚本晋也
★★★★
画面はスタンダード・サイズで(塚本監督は本当は正方形の画面にしたかったらしい)、青いモノクロ映像が六月の雨に濡れている。
セックスレスの夫婦、自慰行為をする妻、写真を盗み撮りするストーカーの男、恥辱に満ちた行為の強要、などと書いてくると、非常にきわもの的な映画を思ってしまうが、実際には非常に美しい作品であった。
確かに映し出される登場人物たちの行為は倒錯的な性愛行為なのだが、自分が必死に生きるために必要としていることなので、いやらしさを感じるほどの余裕もないのだ。
登場人物たちはそれぞれに精神を病んでいるが、肉体的にも病んだものを抱えている。
夫は異常なまでの潔癖性であり、妻には癌が見つかり、ストーカーの男も末期癌に侵されている。
それゆえに、精神を病みながら生きることに皆、真剣なのだ。
性行為すらも、なにか精神を解放するための形而上的なものに思えてくる。
作品の前半は妻の側から話が展開する。
半ばからは夫の側からの話となる。
そして、ついにストーカーも加わったた3人の出口が見えないような争いとなる。
クライマックスとなる雨の空き地での場面の緊迫感は見事であった。
3人がそれぞれに精神的なエクスタシーに達したのだと思えた。
初めて塚本晋也の映画を観たが、注目するべき監督だと思った。
この作品はベネチア国際映画祭で審査員特別大賞を受賞している。