2005年 アメリカ
監督:ジム・ジャームッシュ
出演:ビル・マーレイ、 シャロン・ストーン、
ジェシカ・ラング、 ジュリー・デルピー
昔の恋人を訪ねるロード・ムービー。 ★★★☆
中年も通り越そうとしているドン(ビル・マーレイ)はかってのプレイボーイだ。ある日、あなたの息子を20年前に生んだ、という差出人不明の手紙をもらい、それを確かめるために、昔の恋人たちに会う旅に出る。
なぜか家ではジャージーを着ていて、終始、無表情なビル・マーレイが良い。
調子のよい隣人がドンに恋人たちを訪ねることを勧めて旅の段取りをしてくれるのだが、ドンは「行かないよ」と素っ気なく答える。次の場面では、ちゃんと飛行機に乗っている。この肩すかし感覚。
訪ねた昔の恋人の旦那が夕食を一緒に食べていくように勧める。「結構です」とドンは断るのだが、次の場面ではちゃんと3人で夕食を食べている。なんだ、この無力感は。
愛想をつかして家を出ていく今の恋人にジュリー・デルピー、訪ねていく昔の恋人にシャロン・ストーンやジェシカ・ラングと、彼を取りまく女性たちが豪華である。
(ただし、映画の年齢設定からも、皆、往年の美女である)。
かっての恋人たちの反応は、次第に険悪になっていくところが映画の展開としてはミソ。
すぐにヌードになる娘と暮らしている一人目のシャロン・ストーンは寡婦となっており、懐かしがってくれるばかりか、一夜を共にしてしまう。
二人目の元・恋人は夫と一緒に夕食まではご馳走してくれるが、なんとなく迷惑そうな雰囲気を漂わせている。
三人目のジェシカ・ラングは、会ってはくれたものの時間に追われたおざなりの対応。
四人目にいたってはいきなり泣き出して、マーレイは取り巻きの男たちに殴られるはめになる。
それぞれの間に流れた人生の時間がくいちがった分だけ、再会したときの感情のずれが大きくなっていく。
だからといって、そこに大きな感情の起伏があるわけではない。
淡々と受け入れている主人公がいる。果たして主人公は本当に過去を確かめようとしているのかどうかも怪しくなってくる。
それなら、この旅の意味は何だったのだろう。
(以下、ネタバレあり)
ジャームッシュの作品だから、手紙の差出人が明らかになるとか、自分の息子と感動の対面するとか、そんな劇的なことはまったくないままに映画は終わっていく。
(家の周りでみかける見知らぬ若い男を息子なのではないかと、疑心暗鬼になったりはするのだが)。
それを、えっ、そんなぁ、と思うか、人生をふりかえっても所詮はそんなものだよ、と思うか。
それでもなんとなく、それでいいんだろうなあと思わせてしまうところがある。
ほんのりとした、お洒落な雰囲気もただよう佳品です。