1980年 アメリカ 105分
監督:ティム・バートン
出演:ジョニー・デップ、 ウィノナ・ライダー、 ダイアン・ウィースト
純真なファンタジー。 ★★★
人の良い化粧品訪問販売人のペグ(ダイアン・ウィースト)は、荒れ果てた丘の上の屋敷でエドワード(ジョニー・デップ)と出会う。
実はエドワードは発明家の博士によって創り出された人造人間だったのだ。
その博士が急死してしまったために、両手がハサミのままのエドワードはひとりで屋敷に取り残されていたのだ。
言ってみれば、この映画は異形の者と美少女の恋物語。
古くは「美女と野獣」があり、最近では「シェイプ・オブ・ウォーター」があった。
今作はティム・バートンらしい、パステルカラーの家が並ぶ住宅街(セットではなく、本物の家だったとのこと)や、動物の形に刈り込まれた庭木など、メルヘン調の画面となっている。
さて、エドワードを可哀想に思ったペグは、彼を自宅へ連れて帰る。
この映画では奇怪な手をしたエドワードを見ても誰も驚かない、怖がらない。
ペグの夫も娘のキム(ウィノナ・ライダー)も幼い弟も、エドワードを優しく受け入れる。
すばらしい人間愛(?)である。
特にエドワードに捧げるペグの無償の愛情は、もう聖人ではないかと思うほど。
エドワードはどこまでも純真な心の持ち主。悪意なんてものは知らない。
それに引き替え、町のおばさん連中の酷いこと。
物珍しいあいだはエドワードをちやほや褒めあげておいて、ひとたび事がおきると手の平を返すように糾弾する。
意地悪い悪意の塊である。これが人間の本質?
エドワードはキムに恋をする。
キムもエドワードのその純真さに惹かれていく。
しかしハサミの手を持つエドワードはキムを抱くことができない。
いくら善意の心を持っていても、物理的にエドワードは生身の人間を傷つけてしまうのだ。
もっと泣ける映画かと思っていたのだが、そんなものではなかった。
なぜ、冬になると雪が降るの?
そんな孫の疑問に答えるために、老いたキムが語る話は、軟らかな優しい気持ちにしてくれるものだった。
ふわーっとしたメルヘンの映画だった。