あきりんの映画生活

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「シークレット・スーパースター」 (2017年)

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2017年 インド 150分
監督:アドベイト・チャンダン
出演:ザイラー・ワシーム、 アーミル・カーン

シンデレラ・ストーリー/インド版。 ★★★☆

 

アーミル・カーンがインド版”星一徹”を演じていた「きっと強くなる」は、女子レスリングで娘に夢を掴ませる物語だった。
今作は彼は少し引いた位置で、シンデレラとなるヒロインを支える役だった。
(でも、実際には彼も美味しいところをずいぶんとさらっていった 笑)。

 

14歳のインシア(ザイラー・ワシーム)は歌が好きな少女。
母がなけなしのお金で買ってくれたギターをつま弾いては歌を歌う。まわりの皆がその歌声に聞き惚れる。
しかし、強権的な父親に学業の邪魔になるからと歌うことを禁じられてしまう。
どうする?

 

インドは、今の日本では考えられないような男尊女卑がまだ残っているようだ。
外で働きお金をかせいで来る父親の権威は絶対的で、奥さんに対しての暴力もふるう。
女性が自立できる社会ではないので、女性もその状態にじっと耐えて生きている。
(かっての日本もそんな時代があったのだろうなあ。今は家庭の中では女性の方が絶対に強い 笑)

 

父親の機嫌を損ねないように怖れながらの毎日。
しかし、インシアはやはり歌が諦めきれない。
そこで、ブルカで顔を隠して歌う姿をスマホで自撮りしてYouTubeにアップする。
その歌声はあっというまに注目を集めて、“シークレット・スーパースター”としてインド中の話題となる。

 

アーミル・カーンシャクティという落ち目の音楽プロデューサー役。
かっては花形だったようなのだが、今はその栄光にすがっている俺様キャラの尊大な人物。
始めは、なんだ、このチャラいジコチュウなイタいオヤジは、という感じで登場してくる。
そのシャクティがインシアの歌に目を止め、レコーディングの話を持ちかけてくる。
こんないい加減な奴の申し出にのってしまって大丈夫か?

 

友だちに助けられて学校を抜けだし、地方からニューデリーまで飛行機で出かけるインシア。
そんなインシアに、シャクティはこの曲をポップ調で歌えと要求する。この歌い方でやれば絶対にヒットするぜ。
えっ、そんな歌い方をするの・・・?
このあたり、いったいどうなるのだろうかとハラハラする。ほうら、シャクティなんかを頼ったのが間違いだったんだよ。

 

しかし、シャクティは男尊女卑じゃなくて、ちゃんとインシアの歌の魅力を理解していたのだ。
うわべはいい加減な奴風なのだが、根はとってもイイ奴だったのだ。
脇役に徹していても、アーミル・カーンがとても美味しい役回りだった。

 

元々が夢物語の多いインド映画だから、シンデレラ・ストーリーはぴったりとはまる。
幼い弟は純真な思いで姉への贈り物を必死に用意するし・・・。
そして虐げられ続けた母親が、娘のために最後に父親に反撃する。
ここは胸のすく場面。
夫を残して子ども二人と一緒に空港から出ようとする母親に、係員が、一度出るともう入れませんよ、と忠告する。
あら、それは好い規則ね、といって母親と子どもたちは夫(父)の束縛から解き放たれるのだ。

 

クライマックスは、空港から三人が向かった(日本で言えば)レコード大賞のような受賞発表式。
インシアもノミネートされていたのだ。
壇上から、シークレット・スーパースターはこの会場に来られていませんか、と呼びかける声にインシアが立ち上がる場面は感動的だった。
You Tubeにインシアは母親に贈る歌をアップしていたのだが、それがちゃんと最後の授賞式でのスピーチに繋がっていた。良かった。

 

エンドクレジットのときにシャクティがポップス調で歌う映像が流れる。
あれあれ、インシアの歌声で考えを改め直したのではなかったのかい。
でも、大変に楽しい。これは、そう、ボリウッドでお馴染みのあのノリの歌と踊りである。
このサービスは嬉しかったなあ。

 

とても楽しくて、感動する作品でした。
誰にでも勧めることができる作品です。