2015年 ドイツ 114分
監督:オリビア・ヒルシュピーグル
史実に基づいたドラマ。 ★★★
ヒトラーの暗殺を企てた人はとても多いということだ。
史実に基づいた映画ではトム・クルーズの「ワルキューレ」があった。あちらはドイツ軍将校による暗殺計画だった。
こちらの事件の特異な点は、犯人がまったくの一般市民で単独犯だったところ。
こんな人物がいたのだな。
1939年、ミュンヘンのビアホールでヒトラーの演説会が行われていた。
天候悪化のためにヒトラーは予定より早く演説を切り上げ退席し、その13分後に会場に仕掛けられていた時限爆弾が爆発した。
実行犯として逮捕されたのはエルザーという平凡な家具職人だった。
この映画はヒトラー暗殺の顛末を描くサスペンスものではない。
それよりも、一市民である主人公が何故ヒトラー暗殺を企てたのか、そして、その一市民に対してナチスはどのような対応をしたか、を描く人間ドラマだった。
原題も「エルザー」と、単に主人公の名前だったようだ。
この事件の一番の眼目は、エルザーがなんの後ろ盾ももたない、まったくの個人的な義憤でおこなった犯行だったという点。
彼は独学で完璧に時限爆弾を設計し、作り上げたのだ。
大多数のドイツ国民がヒトラーに心酔し始めた時期に、なぜ、彼は犯行を決意したのか。
現在と平行して、1930年代のエルザーの生活が回想場面として描かれる。
迫害されるユダヤ人の友達。のちに恋人となる人妻との不倫・・・。
彼を捕らえた秘密警察ゲシュタポも、彼の単独犯などとは思いもしない。
拷問をくり返して背後関係を明らかにしようとする。
しかし、エルザーは本当に一人でやったのだ。
この拷問場面は酷い。
思わず目を背けたくなるような拷問が実際におこなわれていたのだなと、改めて知らされる。
驚くのは、エルザーがすぐに処刑されずにこの暗殺未遂事件の後5年間も生き続けたこと。取り調べの責任者だったネーベが、なぜ彼を生かし続けたのかは、よく判らなかった。
ネーベはエルザーに共感する部分があった?
(ネーベも最後は反逆罪で処刑されている。しかし、その詳細は不明だった。)
エルザーは1945年、ヒトラー自殺の3週間前に処刑されている。
彼の生き様はどういうことだったのだろう? 見終わった後も考えがよくまとまらずにいた。
ドイツ映画だということがまた興味深い点でした。