あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。約2000本の映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。監督名、主演俳優名でも検索できます。

「ロブスター」 (2015年)

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2015年 アイルランド 118分
監督:ヨルゴス・ランティモス
出演:コリン・ファレル、 レイチェル・ワイズ、 レア・セドゥ、 ジョン・C・ライリー、 ベン・ウイショー

シュールな不条理劇。 ★★★☆

 

冒頭で車から降りた女性がいきなり牛を射殺する。これはいったい・・・?
あとになると、この短い挿話画面が、ああ、そういうことだったのかな、と考えさせてくれる。
物語世界の象徴的な場面だったわけだ。

 

突然妻に去られ、独身となってしまったデヴィッド(コリン・ファレル)はとあるホテルに送られる。
彼はそこで45日以内に恋愛相手を見つけなければならないようなのだ。
それができなかった場合は、本人が希望した動物に変身してしまうのだ。
彼が希望したのはロブスター。へえ、そんなものに生まれ変わりたいのか(本当はちょっと違うのだけれど)。
デヴィッドが連れてきた犬は、どうやら変身した兄のようなのだ。

 

これは何という奇妙な設定の物語であることか。
理屈も何もなく、この世界の掟はこういうことなのですよ、それを承知で観てくださいよ、と言ってくるわけだ。
う~ん、面白いなあ。

 

ホテルではダンス・パーティが開かれて、パートナー探しの場を提供したりしてくれる。
それに独身はいかに不自由で、カップルでいることがいかに利便性があるか、をチープな小芝居で見せたりもする。
あまりにバカバカしくて脱力してしまうほど。

 

ホテルで知り合った仲間にジョン・C・ライリーやベン・ウィショーが扮している。
なかなかの豪華出演陣なのだ。
ここでは何か共通点があるとカップルになりやすいようで、ベン・ウイショーはすぐに鼻血が出る女性に近づくためにわざと頭を打って鼻血を出したりする。

 

ディビットも自分を偽ってまでしてある冷酷女子に近づくのだが、上手くいかない。
恋愛が強制されて、カップルになれないものは動物にされてしまう、というのは、今の社会の風刺であるわけだ。
そして、デヴィッドがホテルを脱走して逃げこんだ森には、今度は何をするのも自由なのだが恋愛だけは御法度という集団が隠れ住んでいた。

 

デヴィッドもいい加減と言えばいい加減。
恋愛が上手くできずに独身者の森へ逃げだしたのに、恋愛御法度の集団に入った途端にある女性(レイチェル・ワイズ)と恋愛に陥ってしまう。
強制されるとやりたくなくなるのに、禁止されると途端にしてしまう。う~ん。
恋愛についての正反対の制度の二つの社会を見せて、人を愛するとはどういうことなのか、と問いかけいるようだ。

 

森のグループのリーダーのレア・セドゥが不気味。
彼女は「アデル、ブルーは熱い色」での風変わりなレスビアン役も印象的だった。
主人公たちが禁断の恋に陥ったことを知ったセドゥがとった仕打ちとは・・・。

 

(以下、ネタバレ)

 

ラスト、果たして主人公は愛を貫くために(盲目という共通点を作るために)、自分の目を刺したのだろうか。
それとも、共通点がなくなった相手は愛の対象ではないということで、裏切ったのだろうか。

 

観る人によって解釈は変わってくるのだろう。
独得の世界をつくりだして、恋愛とは?と問題提起をしてきた作品だった。
同じ監督の近作「聖なる鹿殺し」も観てみなくては。