2013年 フランス 98分
監督:パトリス・ルコント
出演:レベッカ・ホール、 リチャード・メッデン、 アラン・リックマン
大人の純愛もの。 ★★★
1900年代始めのドイツが舞台。
資産家で実業家のホフマイスター(アラン・リックマン)は、青年フリドリック(リチャード・マッデン)を個人秘書にする。
療養中のホフマイスターは、有能なフリドリックを自宅に呼んで様々な仕事を任せるようになる。
そしてフリドリックは、ホフマイスターの若妻ロット(レベッカ・ホール)と出会う。
原作小説は、第二次世界大戦前頃に活躍したS.ツヴァイクのものとのこと。
まったく知らない作家だったが、当時の雰囲気なのか、映画の展開もゆったりとしていた。
やがてフリドリックは屋敷に住み込むようになり、夫妻の息子の家庭教師までするようになる。
彼、ロット、そして子どもの3人が庭で楽しく遊んでいる。まるで若夫婦とその子どものようにも見える。
その様子を部屋の窓越しに見ているホフマイスター。
二人の間にある感情が芽生えはじめていることは、ホフマイスターにだってよく判っているぞ。
しかし、当世とは違って奥ゆかしい二人なのである。
感情にまかせてすぐに一線を越えるなんて事はしないのである。
なかなかに仲は進展しないのである。
観ている者も焦らされるのである。
アラン・リックマンが好かった。
生い先が短い自分の身を考え、ロッテのために二人の仲を黙認しているかのようにみえる。
かと思えば、遠いブラジルの地へフレドリックを赴任させることで、二人の仲を引き裂こうとする。
揺れ動く初老の男の悲哀がよくあらわされていた。
歪んだ恋物語はお得意のルコント。
というか、かれは恋物語しか撮っていないのでは?
しかし、初期の作品に比べると毒気は薄くなっていた。
「仕立て屋の恋」や「理髪屋の亭主」にあった苦みが本作ではなくなり、甘味だけが残っていた。
とはいえ、官能的な絵柄はさすがにルコントらしかった。
ロットが弾いたピアノの鍵盤にほおずりするフリドリック。オペラグラスで覗き込むうなじ・・・。
一度は戦争にも引き裂かれた二人。
この二人はいったい何年間の純愛を貫いたのだろうか。