あきりんの映画生活

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「スローターハウス5」 (1972年)

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1972年 アメリカ 103分
監督:ジョージ・ロイ・ヒル
出演:マイケル・サックス

タイムトラベル? ★★☆

 

ジョージ・ロイ・ヒル監督と言えば、「明日に向かって撃て」であり、「スティング」である。
そしてこの超有名な2作の間に撮られたのがこの「スローターハウス5」である。
なんだ、こりゃ? こんな映画も撮っていたのか・・・(汗)。

 

タイトルを直訳すると「第5屠殺場」ということになる。
これは、第二次大戦時に主人公のビルグリムらアメリカ人捕虜の収容場所がドレスデンの屠殺場跡だったことからきているとのこと。
実際に原作者のヴォネガットの捕虜経験からきている。

 

冒頭、雪原を歩く主人公が現れる。これはどんな風に物語につながるんだ?
ところがつながらないのである。物語は突拍子もなく飛ぶのである。

 

主人公のビルグリム(マイケル・サックス)は自分の意志とは関係なしに時間を超越してタイムトラベルをすることができた。
ある日ビルグリムは、第二次世界大戦のヨーロッパ戦線で捕虜となりドレスデンの捕虜収容所に送られる。

 

物語は時空を飛んであらわれる。
ビルグリムは幸せな家庭生活を営んでいるかと思えば、また捕虜収容所にいたりと、過去と現在を行ったり来たりする。
生まれて成長した息子がこっそりと読んでいたポルノ雑誌で女優モンタナの写真を見たりもする。

 

ドレスデンではスロターハウス5に収容されたビルグリムは、そこで大空襲に遭う。
かと思えば、家族で訪れた湖で謎の円盤を目撃したり、飛行機事故にあったりもする。
事あるごとに減量するわと言っていた妻は交通事故死してしまう。

 

というように、ビルグラムの人生が断片化されて差し出されてくる。
それも荒唐無稽の出来事の連続のような人生である。

 

終盤には、ビルグラムは湖で見かけた円盤の宇宙人にさらわれてしまう。
そして異星の透明ドームの中で、これも地球からさらわれてきたポルノ女優モンタナとの生活を始める。
結合したか?としつこく尋ねてくる異星人。
ぶじに二人の間には子供も産まれる。異星でのおだやかで幸せな生活?

 

少しまともに解析すれば、第二次大戦中のドレスデンの大空襲に遭遇したアメリカ軍捕虜が、その余りの惨状に記憶障害と幻覚に悩まされる映画。
こう書いてしまうと、身も蓋もない(汗)。

 

そんなピルグリムの発作的な意識の流れを時間旅行のようにして見せている。
試みとしてはユニークで面白い作品。
呆気にとられながら奇想天外な人生物語を楽しむ作品。
しかし、ジョージ・ロイ・ヒル監督の前後の作品があまりに有名すぎて、残念なことに埋もれてしまった作品といえる。

 

カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞している。
へえ、賞を獲っていたんだ!