2006年 アメリカ 107分
監督:トッド・ロビンソン
出演:ジョン・トラボルタ、 ジャレッド・レトー、 サルマ・ハエック
犯罪サスペンス。 ★★★
同じ「ハート」ものでも、今度は実在した凶悪犯カップルの逃亡/顛末記である。
といえば、ボニーとクライド(「俺たちに明日はない」)を思いうかべるが、この映画のレイ(ジャレッド・レトー)とマーサ(サルマ・ハエック)もそんな感じである。
二人を追うロビンソン刑事役にジョン・トラボルタ。
監督のトッド・ロビンソンはは、そのロビンソン刑事の実の孫だとのこと。
時は1940年代。
レイは戦争未亡人や婚期を逃した中年女性をターゲットにした結婚詐欺師。
当時のアメリカでは、新聞の恋人募集欄というのが流行っていたようだ。
そしてそういった欄に投稿するのが“ロンリーハート”といわれる寂しい女性たち。
今で云うところの”出会い系”? それよりは真面目?
このレイという男、もともとはチンケな結婚詐欺師。
女性に対して、とにかく口が立つ。それにマメ。
薄毛をカツラで隠し(カツラを取ると額に接着テープが見えるのがおかしい)、どこか情けない感じもあるような、そんな小物感いっぱいの男。
そんなレイが出会ってしまったのが、これが典型的な悪女のマーサ。
悪賢いくせに衝動的で、嫉妬心も強い。躊躇なく人だって殺してしまう。そして美女。
そのマーサにぞっこん惚れられてしまったレイは、不幸だったと言えるのかもしれない。
レイも、マーサに会わなければ、ただのちっぽけな詐欺師で終わっていたのに・・・。
風呂場で自殺した美しい女性の様子に、犯罪の臭いをかぎつけたのがロビンソン刑事。
妻に自殺され、残された息子との確執も抱えるロビンソンの執念が、少しずつ犯人を追い詰めていく。
この二人は、レイのお調子者&小物感と、マーサの冷酷悪女感、このコンビが絶妙だった。
甘い言葉と肉体関係で女性を騙し、貯金をしぼりとるレイ。
マーサは妹のふりをしてレイに付き添うのだが、レイが相手の女性と親密になりかけると異常な嫉妬心を露わにする。
金槌で相手の女性を殴り殺してしまったりする。おいおい。
二人は互いを愛していることを確かめるために殺人を犯しているような感じさえある。
トラボルタの重厚な演技も好かったのだが、この映画ではやはりサルマ・ハエックの悪女ぶりだろう。
捕まったマーサが取り調べ室でロビンソンと向きあう。
そして彼女は、貴方は人を殺してまで愛して愛されたことがあったかとロビンソンに言い放つ。
そこにあるのは歪んだ愛情なのだが、幼い頃から人の愛情に飢えてきたマーサならではの必死さもあったのかもしれない。
(もちろん、だからと言って許されるわけもないのだが)
レイとマーサは処刑されるのだが、一方のロビンソンは息子との関係が再生されていく。
それぞれの人生が重く交差していた。
三人の演技も好く、追う者と追われる者を描いた重厚な犯罪サスペンス劇だった。