あきりんの映画生活

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「糸」 (2020年)

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2020年 日本 130分
監督:瀬々敬久
出演:菅田将暉、 小松菜奈、 榮倉菜奈、 斎藤工

18年間の恋物語。 ★★☆

 

中島みゆきの曲「糸」に着想を得て物語が作られたとのこと。
あの歌からどんな物語が生まれた?

 

平成元年生まれの高橋漣と園田葵は、13歳の時の花火大会で初めて出会う。
初めての恋が始まり、この映画は漣と葵のそれからの18年間に及ぶ物語を描いている。
少年、少女時代の二人を演じた俳優さんはそれぞれに好かった。

 

しかしその頃の葵は義父の暴力に怯える悲惨な毎日を送っていたのだった。
漣は葵を助けようとして一緒に家出をするのだが、すぐに発見されて二人は引き離されてしまう。
ここから二人の人生は時折り交差しながらまた離れて、年月が流れていく。

 

恋愛ものの「糸」というと、二人を結びつける”赤い糸”のような比喩でよく使われる。
しかしこの映画での「糸」はそんなものではなかった。
中島みゆきの歌にあるように、二人の人生ドラマが縦糸と横糸で織りなされていたのだった。

 

葵(小松菜奈)との思い出が断ち切れなかった漣(菅田将暉)は、故郷の北海道で暮らし続ける。
8年後の共通の友人の結婚式で漣が再会した葵は、東京で水商売で生計を立てたり、若い資産家(斎藤工)の恋人になっていたりした。

 

言ってみれば、男は(うじうじと)いつまでも故郷で待ち続け、女は生きるために東京や沖縄、シンガポールとどんどんと動き廻る。
これ、一昔前の恋愛ものとは男女のあり方が逆転している。面白い。

 

たとえば一組の男女の長年にわたる愛憎を描いたものに、吉田喜重監督の名作「秋津温泉」があった。
あの映画では、女はいつまでも温泉宿に留まり続け、人生に疲れたときにだけやってくる男を待ち続けていた。
昔の歌謡曲ではないが、男はでかけていく船、女はその帰りを待つ港。そんなイメージだった。この映画の男女は真逆。

 

小松菜奈は「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」で観て、その透明感のある可憐さに惹かれた。
今作でも文句なく可愛かった。
ヒロインが小松菜奈でなかったら私の評価はもう少し低かったかも、と言っては監督に失礼か(汗)。

 

さて、葵が遠くを飛びまわっていると感じた漣は、同じチーズ工場で働いていた香(榮倉菜奈)と結婚する。
そして子どもにも恵まれるのだが、香は・・・。

榮倉菜奈は非常に熱演。漣が好きでたまらない一途さもよく出ていた(ドングリをぶつける仕草はよかったなあ。)

 

観ている者は、漣と葵がそれぞれの伴侶を見つけてしまったりして、これからどうなるのだ?と思っている。
そうなのだ、離れてしまった漣と葵の物語は、大きく波打つ運命でまた交差しようとする。
二人を囲む人たちは(葵の母親と義父を除いて)みんな好い人だったのだ。

 

それにしても漣の家族は一度も出て来なかったな。
葵の家族も、香の家族もちゃんと出てきたのに、どうして?
なにか不自然な気がしたのは私だけ?

 

それはさておき。
最後近くの函館港の場面はさすがにやり過ぎ感もあったが、期待していたとおりの結末となって、よかった、よかった。

(物語から「弥生、三月 君を愛した30年」を思い浮かべてしまったのも、私だけ?)

香に対する漣の真の思いはどうだったんだ?などと考え出すと、引っかかる部分もあるのだが、あまり深くは考えずに観ましょう。