2020年 日本 113分
監督:三木康一郎
出演:永瀬廉、 伊藤健太郎、 橋本環奈
高校生の自転車ロードレース。 ★★★
大学とか高校の運動クラブものは基本的に好きである。
ちょっと思い浮かべるだけで、「風が強く吹いている」、「ピンポン」、「しこ踏んじゃった」、「がんばっていきまっしょい」・・・。
運動クラブではないが、広瀬すずが魅力的だった「ちはやふる」もこの系統だろう。
さて。本作の主人公は総北高校の新入生・小野田坂道(永瀬廉)。
彼は根っからの(孤独な)オタク少年。毎週、自宅から秋葉原までの往復90km余りをママチャリで通い続けていた。
それも「姫~、姫~」と訳のわからんオタク歌を口ずさみながら。
そんな彼は、入学早々にいきなり今泉くんに自転車レースを挑まれてしまう。
今泉くんは中学時代からの自転車競技少年。
いち早く小野田の天性の素質を見抜いたのだ。
この、お前なかなかやるじゃねえか、只者じゃねえな、的な仲良くなり方はスポ根ものには欠かせませんな。
そこに関西弁のスピード自転車少年の鳴子くんも加わって、友だちができて嬉しいなあ、の展開となる。
しかし、私は自転車に疎い。
途中で出てくるギヤ装備とか、立ち漕ぎのメリット/デメリットとか、そのあたりの解説めいたものを入れてくれれば、面白さが倍増したのではないだろうか。
ケイデンスを30あげるって、なに?と思いながら観ていたのだが、どうもこれはペダルの回転数のことのようだった。
この映画の自転車競技場面も一切CGはなく、実際の撮影だけとのこと。
それはすごい。
あの上り坂をあれだけのスピードで漕ぐなんて、ものすごい特訓をしたのだろう。
それにしても、レースで必死で漕いでいるときに、実際にもあんなに声を出すもの?
力がロスするような気がするのだが・・・。
でもあんな風にしないと観ている人に必死さが伝わりにくい? (原作はコミックだし・・・汗)
以前の駅伝を扱った「奈緒子」という映画では、必死になって走る場面になると大きく首を振って肩を揺らしていた。
馬鹿な!実際にはあんなことをすればタイムをロスするだけじゃないか、と思いながら観ていた(ちなみに、私は年に数回はフルマラソンを走るジョガーです)。
あの映画で走るフォームができていたのは、敵役でまだ無名だった綾野剛だけだった。
「風が強く吹いている」は箱根駅伝をめざす大学生の物語だった。
三浦しおんの原作も好かったが、映画も好かった。
出演者の走るフォームがみんな美しく、すごい走り込みをしたのだろうなと思った。
この映画でのレース場面は3回あったが、どれも迫力は満点だった。
友達がいなくてひとりぼっちだった坂道が、仲間ができたことで必死に自分を鼓舞して頑張る姿はよかった。
そして今泉くんと鳴子くんも、坂道と出会ったことによって変わる。
個人主義的な性格だった鳴子くんがチームのためにと頑張るようになり、勝負どころに弱かった今泉くんも踏ん張れるようになる。
これは王道の展開だが、清々しくて好かった。
そしてインターハイ出場資格をかけた県大会がハイライトとなる。
残念だったのは、競技のルールがうまく伝わらなかったこと。
6人のチームの内の誰かがトップでゴールすれば、そのチームが優勝となる、ということぐらいしか判らなかった。
だからレースの作戦が伝わりにくい。
一人だけ先行させるのは何故? 逃げ切れる可能性ってあるものなの?
ローテーションして風よけを分担するという理屈はよく判る。
すると、鳴子くん一人だけに風よけをさせなければ、チーム全体としてはもっと早く走れたのではないか?
(結局、鳴子くんも最後まで皆と一緒に走っていたし・・・)
そんなことを差し引いても、映画は充分に楽しめた。
原作では宿敵とかもっと細かい設定があったのだろう。
今度は原作コミックを読んでみようか・・・。