1983年 フランス 85分
監督:ロベール・ブレッソン
出演:クリスチャン・パティ、 カロリーヌ・ラング
心の奥の邪悪なものを淡々と描く。 ★★
映画表現から余分な飾りを取り去った作品で高い評価を受けているロベール・ブレッソン。
文豪トルストイの原作をもとにした本作は彼の遺作である。
どの映画評を見てもとても高い評価を得ている。貶した評を見たことがない。
しかし、私は駄目だった。
支払代金として受けとった贋札を(知らずに)使い、そこから人生が狂い始めてしまったイボン。
彼にはまったく悪いところはない。
贋札はお金に困った高校生が作り、それを掴まされた店主がババ抜きのジョーカーを始末するような感じでイボンによこしたのだ。
悪いのはそいつら。
ここからイボンの人生は、それこそ坂道を転げ落ちるように悪い方へ、悪い方へ。
仕事を首になった彼は、妻と幼児のために銀行強盗の手伝いをして逮捕される。
3年間の刑務所ぐらしの間に妻は去ってしまい、娘も病死してしまう。
なんということだ・・・。
ブレッソンは俳優の人工的な演技を嫌い、大部分の出演者には素人を起用したとのこと。
そして音楽も使わず、感情表現も可能な限り押さえたらしい。
とにかく、意識的に作品を盛り上げずに撮ろうとしている。
もうこれ以上省くものはない、といった静けさで映画を撮りあげている。
それを単調と感じてしまうか、そこに抑制された深みを感じるか。
かつて私はこの映画を二度観ることを試みた。
まったく惹かれなかったのだが、あまりに世評が高いので、これは私の鑑賞眼が誤っているのだろうと思って、今回は3回目の観賞・・・。
が、やはり駄目であった。
単調な映像、表情の乏しい出演者の演技に、途中で寝てしまいそうになった。
出所したイボンは行きずりのホテルで殺人を犯す。
そして親身になって彼に接してくれた老婦人やその家族までも皆殺しにしてしまう。
これらは音楽もない静かな画面で淡々と描かれる。
争いとか殺人とかのアクションの場面は映さない。
ただその前後の様子を、たとえば洗い流される血といった写真のように切りとられた場面であらわしている。
こうした静止画のように張りつめた光景で物語をつないでいく。
そこに映画の主題のイメージを合致させてみることができるかどうかなのだろうか。
今回もやはり駄目だった。この映画の凄さ、良さを見つけることが出来なかった。
合わない監督って、いるんだよなあ。
カンヌ映画祭で監督賞を受賞しています。