あきりんの映画生活

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「私は確信する」 (2018年)

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2018年 フランス
監督:アントワーヌ・ランボー
出演:マリーナ・フォイス、 オリビエ・グルメ

法廷サスペンス。 ★★★☆

 

2000年に実際に起きて今も未解決となっているヴィギエ事件を題材にしている。
冒頭に簡単な説明が入る。それによると・・・。
スザンヌ・ヴィギエという女性が、夫と3人の子どもを残して行方不明となる。
遺体は見つからないままに、妻殺害の容疑で夫ジャックが逮捕されるが、証拠不十分で釈放される。
ところが、7年後に再び妻殺害容疑でのジャックの裁判が始まる。
映画はここから始まる。

 

ヒロインはシングル・マザーのノラ(マリーナ・フォイス)。
彼女は、殺人容疑者のジャックの無罪を信じて、その弁護を弁護士モレッティ(オリビエ・グルメ)に依頼する。
ここで疑問に思って、最後まで不可解だったのは、ノラがなぜジャックの冤罪を晴らそうとしたのかということ。
ジャックの娘がノラの息子の家庭教師だったという関係はあったのだが、それだけであれほどこの裁判に心血を注ぐものだろうか。

 

それはさておき。
ノラは生活を犠牲にしてまで、モレッティの指示に従って裁判の新しい証拠を探し出そうとする。
それは裁判所から提供された100時間以上に及ぶ通話記録。
ノラはそれをすべて詳細なメモをとりながら確認していく。
新たな人間関係に不審なところはないか、時間関係におかしなところはないか・・・。
ものすごい根気と情熱がないと、こんな地道な作業をやりとげることは出来ない。彼女のこの頑張りはどこから来るのだ?

 

映画はもちろん裁判の進行を追っていて、その成り行きも面白いのだが、それ以上に興味深かったのは、ノラの冤罪事件に関わる姿。
ノラは裁判資料の整理に熱中する余り、息子の世話もおろそかになり、レストランの仕事もうわの空になってしまう。
ついには解雇されてしまったりもする。
次第にノラが何かに取り憑かれたような切羽詰まった精神状態になっていくのが判る。

 

実は、失踪した妻スザンヌ・ヴィギエにはデュランデという愛人がいた。
彼は、夫のジャックが犯人に違いないという証言を自らもし、いろいろな知人にもそう言うように仕向けていた。
実際のヴィギエ事件でも、そういったことにつられてマスコミが夫犯人説を放送し始め、それに煽られて世論も夫が犯人であると言い始めたようだ。
どこの国でもマスコミは視聴者受けを狙ってのワイドショーを放送するのだな。

 

その結果、死体もなく証拠もないのに夫のジャックは起訴されてしまったのだ。
そして1審では無罪だったのに9年後にふたたび控訴審がおこなわれることになったのだ。
世論に動かされるようにして、疑わしきは罰せず、の真逆がおこなわれてしまったのだ。

 

しかし、観ているうちにデュランデの方が怪しいと次第に思えてくる。
だって、彼が電話をかけまくった相手にはスザンヌの鞄の中に入っていた手帖を見なければ連絡のとりようのない相手もいた。
始めは紛失していたその鞄は、デュランデがこっそりと家に入り込んだ後になって発見されたのだ。
一度持ち出した彼がこっそりと返しておいたのではないかい?

 

裁判の最後、最終弁論をモレッティがおこなう。ここは正に見せ場となっていた。
ま、よく考えれば、死体も発見されていないし、直接証拠は何もない。
陪審員も世論に惑わされなければ、ジャックの無罪判決は自ずから決まってはいたのだろう。

 

「私は確信する」という邦題は、皮肉なことに、確信することの危うさも含んでいるようだ。
ノラは自分の正義感に突き動かされてジャックの冤罪を晴らそうと奮闘した。
しかし、やがて、そんな彼女自身がはっきりした証拠もないのにデュランデが犯人だと決めつけ始める。
人間はよほど自戒していないと自分の都合のいいものしか見なくなってしまうのだなあ。

 

最後に出たテロップで、この裁判以後に起訴された人物はいなかったとのこと。
すると、デュランデもそのまま起訴されなかったのだな。

 

今もスザンナの所在は不明とのこと。へぇ、そうなんだ。
謎は未解決のままであり、実際の事件だから仕方のない結末だが、すっきりとはしない。
しかし、見応えのある裁判ものだった。

 

(ちょっとした余談)
ノラは映画上の架空の人物だが、モレッティ弁護士は実在している。
映画と同様に敏腕弁護士で、後にはフランス法務大臣にもなっているとのこと。
この映画が公開されたときに、デュランデは公開中止を裁判所に訴えたとのこと。
しかしそれは直ちに却下されたとのこと。
本当のところ、デュランデはどうだったのだろう? ・・・真犯人ではなかったのか?