あきりんの映画生活

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「小さな命が呼ぶとき」 (2010年)

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2010年 アメリカ 
監督:トム・ボーン
出演:ブレンダン・フレイザー、 ハリソン・フォード

難病の治療薬開発秘話。 ★★★

 

主役の二人は「ハムナプトラ」シリーズ、「インディ・ジョーンズ」シリーズと、共にアドベンチャーの主人公。
そんな二人が(アクションは封印して)必死に新薬開発に挑むヒューマン・ドラマ。

 

3人の子供がいるやり手ビジネスマンのジョン・クラウリー(ブレンダン・フレイザー)だったが、そのうちの2人はポンペ病に冒されていた。
治療薬もない難病で、このままでは2人はまもなく死んでしまう。
何とかならないのか。ジョンは医学情報を検索し、ポンペ病研究の第一人者ストーンヒル博士(ハリソン・フォード)のことを知る。

 

ポンペ病というのはある酵素の欠損により血中の糖が細胞に溜まってしまうらしい。
その結果、全身の筋肉が次第に無力症状態になっていくようだ。
(ちなみに、子の病気は常染色体劣性遺伝ということなので、ジョン夫妻は2人とも保因者だったわけだ)

 

ジョンが相談に行ったストーンヒル博士は確かにすごい研究者だったが、人付き合いは悪く、独善的。
要するに変人だった。
そんな博士を説き伏せて、ジョンはこれまでの経歴を捨てて共に製薬会社を設立する。
しかし、研究、新薬開発のためには莫大な資金が要る。何とかしなくては・・・。

 

この映画は実話に基づいている。
ポンペ病の治療薬として現在も使われているマイオザイムの開発話である。
我が子の為に治療法を探す親の実話というと、映画「ロレンツォのオイル」が思い浮かぶ。
あれも必死に病気を研究し、治療法にたどり着く物語だった。
こうした、我が子の不死の病をなんとか治してやりたいという親の根源的な希望と、そのための努力は、やはり感動的だ。

 

ジョンはポンペ病の家族の会を結成し、寄付などによる資金集めに奔走する。
しかし新薬開発にはそんな資金ではとても足りないのだ。
8歳とも9歳ともされるポンペ病の子供達の余命。
長女のメーガンはもう9歳の誕生日を迎えた。もう、時間がない。
こうなればどこかの製薬会社と手を組まなければどうにもならない、とジョンは考える。

 

2人の子供はすでに車椅子での生活である。
次第に手の力なども失われていっている。やがては呼吸する力も失われていくのだ。
(子供達は喉のところに管を取り付けていた。気管切開をしているように見えるのだが、もしそうであれば声は出せなくなっているはず。あの管は何だったのだろう?)

 

2人の子供の明るさが物語の暗さを救っていた。
特に8歳のメーガン。彼女は初めて会ったときにストーンヒル博士と車椅子で駆けっこをしたりする。
そんな彼女の相手を真剣にするストーンヒル博士って、好い人なんだ。

 

さて。
抗癌剤の開発にしても、ワクチン開発にしても、製薬会社は儲けが見込めなければ動かない。
効果、副作用、需要、そういったことを勘案してものになりそうな時に初めて会社は資金を提供する。
製薬会社をどうやって提携に持ち込むか。
さらに研究者であるストーンヒル博士は、自分の研究を金のために売り渡すのかと怒り出す。

 

利潤追求を考える製薬会社、自分の研究に誇りを持ち続けるストーンヒル博士。
その両者の間で何とか新薬開発を成功させなければと奮闘するジョン。
今作は単なる感動秘話ではなく、ベンチャー・ビジネスのさまざまな駆け引きも魅せているところがユニークであった。

 

物語の結末は判っているわけだが、やはり引き込まれる。
完成したマイオザイムは2003年にFDAで認可されているが、この映画が作られた2010年時点でジョンの二人の子供は健在だったとのこと。
好かったね。