1989年 イギリス 125分
監督:テリー・ギリアム
出演:ジョン・ネビル、 サラ・ポーリー、 ユマ・サーマン
テリー・ギリアムのほら吹き男爵。 ★★★☆
テリー・ギリアム監督と「ほら吹き男爵」、いかにも相性が良さそうだな、と思いながら鑑賞。
期待通りに、なんじゃ、これ?!といった独創的な作品だった。
舞台は18世紀末のドイツ。
トルコ軍に包囲されて猛攻撃を受けている町の劇場では、旅の演芸一座が「ほら吹き男爵の冒険」を上演している。
その最中に、一人の老人が「儂がほら吹き男爵ことミュンヒハウゼン本人である、本当の話を聞かせてやろう!」と乱入してくる。
ということで、この映画は、芝居が上演されている劇場とそこで上演されている劇、そしてミュンヒハウゼン老が語る物語が、絡み合って映像となってくる。
しかしミュンヒハウゼン老の語る話は、どこまでが真実でどこからがホラ話なのか・・・。
とんでもないホラ話を実写で見せてくれる。
4人の特異能力を持つ家来と一緒にトルコ皇帝に会ったミュンヒハウゼン。
皇帝に美味しいワインを1時間で取り寄せてみせるとの賭けをして、家来の韋駄天を走らせる。
賭に勝った彼は、持てるだけの財宝をもらうという約束に、家来の怪力に城の宝物をすべて持ちかえってしまう。
トルコ皇帝はそれを取り返しに攻めてきているんだよ。
本当か? それ、ホラ話じゃないの?
しかし、味方の撃った砲弾にまたがったミュンヒハウゼンは爆撃に成功すると、今度は敵の砲弾にまたがって戻ってくるのだ。
そして少女サリー(サラ・ポーリー)と一緒に、下着で作った気球に乗って、共にトルコ軍と戦う家来を探しに旅立つのだ。
・・・と、ここはホラ話ではなくて、実際に今の話なんだよね?
当時9歳で前歯が抜けているサラ・ポーリーが愛くるしい。
大人びた言動をしてみたり、やはり子供らしい無邪気さがあったり。
まずは、家来を捜すために月にむかった二人は、そこで巨大な月の王様とお妃様に会う。
街のビルの向こうからのぞく巨大な顔の王様やお妃である。
しかも顔は身体から取り外しができて、自由に空を飛べるのだ。
さすが神様だ。
韋駄天と再会した二人は月から地球へ落下して火山の中へ。
(この、月から地球へ落ちてくるという展開は「月世界旅行」のオマージュ?)
そこで怪力男と再会したり、美しいヴィーナスに出会ったり。
ヴィーナスは名画にあるように貝の中からあらわれる。
胸を隠し、長い髪が下半身を覆っている。美しい。
あれ、このヴィーナスは? そう、なんと当時17歳だったユマ・サーマンだった。美しく可愛い。
この後も火口の中に落ちた一行は地球を突きぬけて、反対側の海に出てきたり。
そこで怪魚に飲み込まれて、その腹の中で千里眼の家来と再会したり。
そして街を救うためのトルコ軍との最後の戦い。
肺活量男が突風を起こしたり、怪力男がトルコの軍船を壊したり、韋駄天男が戦場を混乱させたり・・・。
こうしてトルコ軍は敗走していくのだが、えっ、これもホラ話の続きだったのか・・・。
でも、街の門を開けてみると、トルコ軍はいなくなっているぞ。本当の話?
どこまでがホラ話で、どこからが現実の話なのか混沌として物語は終わっていく。
奇想天外な物語と絵造りの映画だった。
さすがにギリアム監督である。
そういえば、構想から30年ぐらいかかって「ドン・キホーテ」もやっと完成したとのことだった。
そのうち、あちらも観なくては。