あきりんの映画生活

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「世界で一番しあわせな食堂」 (2019年) 料理ファンタジー

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2019年 フィンランド 114分
監督:ミカ・カウリスマキ
出演:チュー・バクホン、 アンナ・マイヤ・トゥオッコ

ほのぼの料理ファンタジー。 ★★★☆

 

舞台はフィンランド北部の小さな村。
女主人のシルカ(アンナ・マイヤ・トゥオッコ)がやっている食堂に息子を連れてやって来た中国人チェン(チュー・バクホン)。
シルカや常連客にフォートロンという人物を知らないかと尋ねまわるが、誰一人知る者はいなかった。

 

監督のミカ・カウリスマキは、あのアキ・カウリスマキのお兄さん。
作風が似ているかと言われればそんな気もするが、もっと物語性がしっかりしていた。
(もちろん、アキ・カウリスマキの物語性がはぐらかされたような感じは大好きですよ。念のため)

 

この映画に悪い人はひとりも出て来ない。
文化の違いからの多少の嫌みを言ったりする人もいるが、みんな善良な心優しい人ばかり。
だから観ていて気持ちは和む。ほのぼのと温かくなってくる。
それに田舎町の風景が美しい。
こんな自然に囲まれた郊外で暮らしていれば、そりゃあ心も優しくなるよなあ。

 

行くあてもないチェン親子にシルカは使っていない離れを提供する。優しいシルカ
そのシルカだが、食堂を経営しているものの、あまり料理は得意ではない。
出しているのはソーセージとポテトの料理だけ。それを近所の常連客がぽちぽちと食べに来ている。
田舎ののんびりとした地味な食堂。まあ、こんなものなのかなあ。

 

ところがとある日、大型観光バスがシルカ食堂の前でパンク。
修理の間にこの食堂で食事を取りましょう。ガイドに案内されてどやどやとやって来たの大勢の中国人観光客。
この食堂ではいったい何が食べられるんだい? えっ、ソーセージとポテトだけ・・・?

 

その状況を見たチェンがシルカに言う、よろしければお手伝いしましょうか。
チェンに言われるままにシルカが隣接したスーパーで大量の鳥肉や見なれない香辛料を買い込むと、彼は鮮やかな手つきで大勢の鳥肉料理を作りあげる。

 

おや、ちゃんとした中華料理が出てきたぞ。食べ始めた観光客は、その美味しさに大喜び。
帰りがけにガイドがシルカに言う、こんなに客が喜んでくれるなんて! またたくさん客を連れてくるよ。

 

実は、チェンは上海の高級レストランのシェフだったのだ。
シルカが恩人探しに協力する代わりに、チェンがしばらくは食堂を手伝うことになる。
チェンの作る料理はたちまち評判となり、大勢の客であふれるようになる。
毎日ソーセージとポテトを食べていた常連客は、こんな見慣れないものをわしは絶対に食べないぞ、などと言っていたのだが、一口食べてその美味しさに魅了されてしまう。
しかも、チェンの作る中国の薬膳スープで、病気持ちだった付近の老人たちは健康を取り戻していく。

 

何もない田舎町にあるのは、広大な自然と隣人を思いやる心を持つ人々。

出演者は知らない人ばかりで、たいした事件が起きるわけでもないし、どんでん返しがあるわけでもない。
困ったことといえば、食事にやって来ている警官の忠告。それは、チェンの観光ビザが切れると強制送還されてしまうぞ。

 

しかし、最後までそれこそ幸せな気持ちで観ることのできる映画だった。
いやあ、映画って本当に好いものですね。

あまりに出来すぎた展開ではありますが、細かいところは考えず、おとぎ話として楽しみましょう。