あきりんの映画生活

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「デューン/砂の惑星」 (1984年) リンチ版砂の惑星

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1984年 アメリカ 137分
監督:デヴィッド・リンチ
出演:カイル・マクラクリン、 フランチェスカ・アニス

リンチ版「砂の惑星」。 ★★★☆

 

ドゥニ・ビルヌーブ版を観たので、やはり、ということでリンチ版を再見した。
40年近く前の作品なので、映像技術には明らかな差がある。
しかし、さすがはリンチ監督だ、ただのSF映画ではないな、という作品になっていた。
(リンチ監督自身は失敗作だと言っていたらしいのだが)

 

原作はなにしろ長い小説。宇宙史だからかなり人間関係なども複雑。これをリンチ監督がまともに映画化するわけがない。
面倒くさい世界設定なんかは冒頭にしゃべりでさっさと説明してしまい、はい、次ぎに行きましょう、という感じ。
(しかし、リンチが撮ったおおもとの映画は5時間近くあったとのこと。それをあまりに長いので半分にカットしてしまったとのこと)

 

で、カットしてもこだわっているのが、やはり造形。
奇怪な造形は最もリンチらしさがでるところだが、敵となる男爵の顔の吹き出物もお見事。「イレイザーヘッド」のあの奇妙な赤ん坊を彷彿とさせる。
それに登場場面は少ないが、巨大な水槽の中に入っているギルドの首領。あれもすさまじい造形だった。

 

衣装もロシアの皇后なんだか、ドイツの将校なんだか判らないようなもので、重厚感がある。いいねえ。
心臓に取り付けた奇妙な栓や(これを外すと血があふれ出してくる)、虫をつぶしてジューズにして飲む器とか、小道具にも凝っている。
リンチ監督、自分の好きなところにはとことんこだわっている。

 

このあとのリンチのTVドラマ「ツイン・ピークス」で一躍有名になったカイル・マクラクリンは、この映画がデビュー作だった。
そしてこの映画の象徴は、砂漠に潜んでいて振動をキャッチするとあらわれる巨大なサンド・ワーム。
あれはどう考えても「風の谷のナウシカ」に大きな影響を与えていると思えるのだが、どうなんだろう。
砂漠の民が貴族たちの圧制に反発して、という世界観も、「ナウシカ」はかなり参考にしているのでは。

 

当時のSF映画として考えれば、充分に楽しめるものとなっていた。
リンチ監督らしさもよく出ている映画となっていた。
しかし、リンチ監督の本領は、やはり他人の原作に縛られない映画のほうが発揮できるように思える。
どうしても、そう思えるぞ。