あきりんの映画生活

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「バトル・オブ・ワルシャワ」 (2019年) ポーランド蜂起の逸話

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2019年 ポーランド 114分
監督:ブワディスワフ・パシコフスキ

欧州戦線秘話。 ★★★

はじめにお断りだが、この映画ポスターに騙されてはいけない。
こんな感じのアクション・サスペンものではなく、どちらかといえば地味な密使の物語で、こんな雰囲気の美女も、どこにいた?
ポスターとはまったく別の雰囲気だが、映画としては緊張感のあるものだった。

 

この映画を観る際には、ある程度は1944年当時の欧州戦線の状況を知っておく方がよい。
ポーランドを占領していたドイツだったが、その勢いは衰えはじめており、ソ連の侵攻は時間の問題となっていた。
ドイツの代わりに今度はソ連に占領されるのではないかと危惧するポーランドの亡命政府は、ソ連と闘うようにイギリスに要請するが断られる。
一方のソ連は、自国の侵攻に呼応しての武装蜂起をポーランド国内軍にそそのかす。
しかし、戦争終了後の勢力拡大を考えていたソ連は、ポーランドの独立を助けるつもりはなかったようなのだ。
大国の思惑に翻弄される小国ポーランドだったのだ。

 

そんな大戦末期の情勢を背景にしたスパイものだが、派手な銃撃戦などはほとんどなく、敵の目を盗んでの情報伝達のサスペンスものである。
イギリスにあったポーランドの亡命政府から、蜂起についての命令を託されるのが主人公。
もちろんゲシュタポはそうしたスパイの暗躍には目を光らせている。
正体がばれれば直ぐに殺されてしまう危険の中、彼の使命感に燃えたワルシャワへの潜入がはじまる。

 

船で渡るか、それとも何かの飛行機を見つけて秘かに飛ぶか。
そこからどうやってワルシャワへ向かうか。
荷馬車で行くか、自転車で行くか。でも、俺は自転車に乗れないぞ。おいおい。

 

スパイものには謎の美女が付きもの。
偶然を装って知り合う美女がいたら、そりゃやっぱり怪しいんだよ。何か下心があるんだよ。
でも男って美女が言い寄ってきたら断れないんだよな。

 

連合国の助けが期待できず、ソ連は何を考えているのか判らず、そんな状況で蜂起をするのか?
成功の見込みは少ないぞ。
でも今立ち上がらなければ、われわれポーランド国民は永遠に悔いを残すだろう。

 

1944年8月1日についにワルシャワ蜂起が起こる。
映画はそこで終わっていく。

 

史実としては、63日にわたる戦闘の末に蜂起はドイツ軍によって鎮圧される。
この戦闘で兵士1万8千人と市民約15万人が亡くなったのだが、やはりソ連軍はワルシャワ蜂起を見殺しにしたと言われている。
そして戦後、ポーランドソ連支配下に置かれ東側陣営国となった。
一部では、初めから連合国はポーランドソ連に差し出すという密約がなされていた、という憶測もされている。

 

そういった背景の中で個人が必死に自分の信念で行動する。
国家という形のない大きな影を背負いながらもがいているような主人公たちが、どこか虚しいような、それでも崇高なような、そんなものを感じさせる作品だった。