2015年 スペイン 106分
監督:アレハンドロ・アメナーバル
出演:イーサン・ホーク、 エマ・ワトソン
悪魔崇拝教のサスペンス。 ★★☆
舞台は1990年のアメリカ、ミネソタ州。
この頃は悪魔崇拝の怪しげな宗教団体がいろいろと取りざたされていたようだ。
この作品はそんな時代に起こった実際の事件を基にしているとのこと。
見終わってから、へえ、そうなんだと思ってしまった。
17歳のアンジェラ(エマ・ワトソン)が父親から暴行されたと保安官ブルース(イーサン・ホーク)に訴える。
一見善良そうな(しかし、アル中)の父親のジョンは、えっ、まさか自分がそんなことを? ジョンにはそんなことをした記憶はなかったのだが・・・。
でも、愛する娘が嘘を言うはずがない。きっと自分の記憶が飛んでいるのだろう・・・。
失われた記憶を取り戻すために、ブルースは退行催眠療法をおこなう大学教授とともに捜査に当たる。
催眠によってジョンの忘れられている記憶を蘇らせようというのだ。
タイトルのリグレッションとは、回帰とか後戻り、退行といった意味である。
すると、そこには悪魔を崇拝する教団の影が見え始める。
アンジェラはフードをかぶった一団に取り囲まれ怖ろしい体験を強要されたと訴える。
その一団には父のジョンも、祖母も加わっていたのだという。
腹部には、これを見た人は死んでしまう運命になるのよ、逆さ十字の傷もつけられていた。
思わず目を背けるブルース。
この映画の焦点は、捜査を続けるブルース自身に降りかかってくる悪魔崇拝教の不気味な影。
何者かがブルースをつけ回し、監視している。
ついにブルースは悪夢にうなされ、精神状態が不安定となってくる。
イーサン・ホークがそんな保安官を好演している。
個人的には、もともと彼には神経質な雰囲気があると思っている。
だから、なにかを思い詰めるような、そしてなにかに追い詰められそうな、そんな役柄にはぴったりくる。
この映画の彼はまさにそういった役どころだった。
(以下、ネタバレ)
しかしこの映画が失敗していたのは、途中からすでにアンジェラがおかしいなと思わせてしまったところ。
結局は、みんなアンジェラの嘘に振り回されていたわけだ。
そして、その嘘を助長してしまったのが退行催眠によってもたらされた偽の記憶だったわけだ。
ということで、イーサン・ホークの熱演だったのだが、物語自体は尻すぼみに終わっていた。
なんでも、当時は悪魔崇拝教の存在をでっち上げてのフェイク・ニュースが多く見られたとのことだった。
そして、一時は研究された退行催眠だが、その後は暗示や記憶の混乱で「虚偽記憶」が作られることが判ったとのこと。
被験者が架空の記憶を思い込まされてしまって、その結果の冤罪も生まれたのだろう。
そんなことから、現在では退行催眠の効果は否定されているとのこと。
ずいぶんと観ている者をあおってくれたのだが、真実は・・・なあんだ。