あきりんの映画生活

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「Uターン」 (1997年) 情けない小悪党に不幸が襲いかかる

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1997年 アメリカ 125分
監督:オリバー・ストーン
出演:ショーン・ペン、 ジェニファー・ロペス、 ニック・ノルティ、 
    ボブ・ソーントン、 ホアキン・フェニックス、 ジョン・ボイド

ブラック・サスペンス・コメディ? ★★★☆

 

いつもは政治絡みの真面目な映画を撮っているオリバー・ストーン監督がこんな映画を撮っていたなんて!

 

怖ろしいマフィアへの借金を返す途中のボビー(ショーン・ペン)は、車が故障して小さな田舎町に立ち寄る。
不穏な雰囲気を漂わせる自動車修理工場のオヤジに足元を見られ、いいようにあしらわれるボビー。
なんだか嫌な町だな。
でも車が動かないんじゃ仕方がない、時間つぶしに一杯飲んでくるか。

 

とそこで、セクシーな人妻のグレイス(ジェニファー・ジョーンズ)と知り合う。
気を持たせるようなグレイスにいいように弄ばれていると、そこに横暴な夫ジェイク(ニック・ノルティ)があらわれる。
おい、お前、俺の女房にちょっかいを出すとはどういう了見だっ!
いやいや、何もしていないよ、ただカーテンの交換を手伝っていただけだよ。

 

ショーン・ペンが虚勢を張るのだけれども実は小心者の小悪党をうまく演じている。
女好きで、口がうまくて、喧嘩には弱そうで、要するに情けない男。
そんな彼が、底意地の悪そうな町の人々によって、あれよあれよと望んでもいない騒動に巻き込まれていく。

 

偶然に立ち寄ったコンビニでは強盗に遭遇して、マフィアに届けるはずだった大金をフイにしてしまう。
俺はどうすりゃいいんだ・・・。

 

そんなボビーに、ジェイクは、妻のグレイスには5万ドルの保険をかけてある。殺してくれたら分け前をやるよ、と持ちかけてくる。
えっ、そんなこと・・・。
一方のグレイスは、ジェイクは10万ドルを隠し持っているのよ。彼を殺してふたりでこの街から逃げましょう。
えっ、そんなことを言われても・・・。どうすればいいんだ・・・。

 

若い美人妻を溺愛しながらも、どこかで憎んでいる初老の夫ジェイクをニック・ノルティが不気味に演じている。
実に好い。下卑た笑い方がこの嫌らしい男の本性をよくあらわしていた。

 

そして、この豪華な顔ぶれも見て欲しい。
主役級の3人は別としても、誰かわからなかった自動車修理工場のビリー・ボブ・ソーントン、もっと誰かわからなかった盲目のアル中乞食のジョン・ヴォイド、それにわざと典型的に見せているであろう田舎のイカレた兄ちゃん役のホアキン・フェニックス
すごい顔ぶれだ。
おや、アンジーの元旦那と実の父親の顔合わせでもあったのか。

 

ついにボビーは、ああ、こんな町はもう出ていきたいぞ。長距離バスの切符を売ってくれ。
ところがそのバス代がどうしても足りない。
この窓口でのやりとりはコミカルで、彼のその情けなさに笑えてくる。
ちなみに映画タイトルの「U-ターン」というのは、町の入口にあった看板に書かれていた文句。
要するに、用のないものは立ち入るべからず、ということらしい。なるほど。

 

さあ、夫婦の両方からお互いの殺人を頼まれたボビーはどうした?
お金を手に入れることはできたのか?
愛着のある車は無事に修理できたのか?
どんどんと不運に見舞われていくボビーのその後の展開も面白い。

 

最後のボビーとグレイスのやりとりは、ちょっとしつこかった。
ここまでに充分に騙し騙され、裏切り裏切られをやってきたのだから、もう最後はあっさりと締めくくってもよかったのでは?

 

まるでコーエン兄弟のような、悪夢のジェットコースター映画でした。
退屈する暇はなし。面白いですよ、お勧めですよ。