あきりんの映画生活

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「トランス・フューチャー」 (2020年) 見事に伏線を回収したなあ!

2020年 ブラジル 99分
監督:ブルーノ・ビニ

タイム・スリップもの。 ★★★☆

 

時空を超える物語は好きである。
で、タイム・スリップという惹き文句を見るとつい手が出てしまう。
しかし先日観た「コンティニュー」はひどい代物だった。
さて今回はブラジルの映画だが、どうだろうか?

 

冒頭、ビルの屋上でダニエルは何者かに襲われ、その男は「今度はもっと急げ」と言い残して屋上から飛び降りてしまう。
傍らには死んだ恋人マリアが横たわっている。
はて、これは? 何が起こったのだ?

 

原題は単純そのものに「ループ」。
バタフライエフェクト」と同じように、恋人を助けるために過去へ戻るというのが大きなあらすじ。
しかし、この映画の世界はパラレルワールドではなくて、一つの世界の時間軸を行き来する。だから、過去の世界では過去の自分と未来から来た自分が同時に存在したりする。
となれば起こりうるのは・・・。

 

物語はそこから1年前にさかのぼる。
タイムトラベルの理論を研究しているダニエルは、好き理解者の姉シモーネと暮らしている。
(このお姉さんがフランクでさばさばしていて、とても好いキャラクターだった。)
あるパーティでダニエルはマリアを見そめ、つきあい始める。
しかし、ある夜に冒頭のように彼は何者かに襲われ、マリアは死んでしまうのである。

 

マリアが死んでしまって自棄になったダニエルだったが、取り調べを受けた彼は警察から意外なことを聞かされる。
犯人が告げたあの言葉「今度はもっと急げ」は、これまでの複数の未解決殺人事件の犯人が残した言葉と一緒だったのだ。
そしてその殺人事件の被害者のひとりはダニエルの父だったのだ。

 

正直なところ、前半がいささか長い。
ダニエルがタイムマシンを発明して時間軸が動き始めるのは映画の真ん中あたりになってからである。
そこまでにいろいろな謎が散りばめられる。
これを覚えておくほど、後半の面白さが味わえるようになっている。さあ、見過ごさないようにしなくては、ね。

 

幼かった頃のダニエルとシモーネの逸話も明かされる。
そしてシモーネの協力もあってタイムマシンが完成する。
さあ、これで過去に戻ってマリアの死を防ぐぞ。そのエネルーギー源は高いところから飛び降りたときの重力エネルギーだ。
ん?

 

そのうちに連続殺人犯らしい初老の男もダニエルにちかづいてくる。
おのれ、父を殺したのはおまえだな!
待ってくれ、あれには深いわけが在ったのだ。理由を聞いいてくれ。

 

終盤にちかづくにつれ、前半に散りばめられていた伏線が次々に回収されていく。
これは興奮するほどにすばらしかった。なるほど、そうだったのか!

 

(以下、ネタバレ)

 

そもそもダニエルがマリアをはじめて見そめたときに、彼女は見知らぬ男と話しており、弟を助けてやろうとシモーネがその男に無理やりキスをして、マリアを男から離したのだった。
しかし、その男というのは、実は・・・。なるほど、そうだったのか・・・。

 

ダニエルはシモーネの首筋にあった刺青の模様からタイムマシンの理論を完成させるヒントを得ていた。
しかし、その刺青というのは、実は・・・。なるほど、そうだったのか。

 

一番のポイントはあの連続殺人犯の正体。実は彼は・・・。
えっ、そういうことだったのか。そういうわけがあったのか。

 

オチは「プリディステネーション」と同じなのだが、あれよりは判りやすくなっている。
この手の映画が好きな人にはお勧めできるレベルのものだった。

 

(以下、本当にネタバレ)

 

しか~し、よく考えればマリアを(誤って)殺してしまったのは自分なのだし、過去に戻ってどうしようとしたのだろう?
それに、二人のいざこざの原因はマリアの心変わりだし・・・。
主人公たちにはあまり共感は出来ないなあ。
お姉さんだけはいい人だったけれど。

 

(ツッコミをひとつ)
そもそも主人公が過去に戻らなければ彼女は心変わりもしなかったし、彼女が死ぬこともなかったのでは?
とすると、主人公が残すべきは、今度はもっと急げ、という言葉よりは、タイムトラベルなんかするなよ、という警告だったのでは(汗)。