あきりんの映画生活

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「ミラーを拭く男」 (2003年) 無口な偏屈男は何を考えている?

2003年 日本 117分
監督:梶田征則
出演:緒形拳、 栗原小巻、 

これ、好い話? ★★☆

 

大まかな物語としては、カーブミラーのある角で交通事故を起こしてしまった男・皆川(緒形拳)が全国のカーブミラーを拭いてまわろうとする、というもの。
主人公の行為としてはただそれだけ。
映画はロード・ムービーのようにその姿を追っていく。
そして、そんな行為を淡々と続ける皆川が旅先で出会う人たちとの交流が描かれる。

 

皆川の起こした事故は少女にかすり傷をつけただけのもの。
しかしその祖父がクレイマーとなって頻繁に家に怒鳴り込んでくる。
その対応を妻(栗原小巻)に押しつけて何もしない皆川に、息子や娘はあきれ果てている。
そんなある日に、突然皆川は何も言わずに家を出てカーブミラー拭きの旅に出てしまうのだ。

 

彼の行動が何に根ざしているものか、よく判らない。
彼は何も語らないのだ。
感情を内に殺してしまった人物像のために、何を考えているのか、外からはうかがい知れないのだ。

 

緒形拳の木訥とした演技はさすがのもの。
彼の主演映画ではなんといっても「長い散歩」がよかった。
やはり木訥とした人物像だったが、優しさが自然ににじみ出てくるような演技だった。

 

さて。
何も語らずに黙々と一つのことを続けている人物に、周りは勝手な意味づけをする。
TVをはじめとするマスコミはその典型だが、津川雅彦演じる初老の男もそうだった。
貴方のしていることは定年退職した老人たちに生きがいを与えるものですよ、これはみんなに広めるべきですよ、とキャンペーンまがいのことをはじめてしまう。
そしてそれに乗る人がどんどんと増えるのである。

 

映画はそれらの人たちをちょっと揶揄しているようなところもあった。
このことで思い出したのはトム・ハンクスの「フォレスト・ガンプ」だった。
主人公がただ全国を走り続けていることを知ったマスコミが騒ぎ出し、主人公を追って一緒に走る人がどんどん増えてくる、という展開だった。

 

あの映画ではトム・ハンクスは、ある日、ぱたっと走ることを止めてしまう。
すると人々はすぐに忘れていく。
本作では、マスコミの騒ぎをよそに、皆川は一人でミラー拭きを黙々と続けている。
そして、そこに奥さんが自転車に乗って現れるのだ。

 

繰り返しになるが、まったく話をしようとしない皆川が何を考えているのか、周りの人には分からない。
勝手に推測して決めつけるしかない。
それは映画を観ている者も同じ。皆川が何を考えているのか、掴みようがない。

 

ただ忌憚なくいわせてもらえば、皆川の行動は愚かな自己中心的なものにしか思えなかった。
これ、好い話だったの?