あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。約2000本の映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。監督名、主演俳優名でも検索できます。

「サイゴン・クチュール」 (2017年) タイムスリップして落ちぶれた未来の私に会ったら、どうする?

2017年 ベトナム 100分
監督:グエン・ケイ
出演:ニン・ズーン・ラン・ゴック

女子向けタイムスリップ映画。 ★★☆

 

ベトナムを舞台にしたり、ベトナム戦争を絡ませた映画は枚挙にいとまがない。
しかし、ベトナム映画そのものというと、トラン・アン・ユイ監督の「夏至」ぐらいしか観たことがなかった。
ベトナムの映画事情はどうなのだろうか?

 

さて、この映画のキャッチ・コピーは、「プラダを来た悪魔+バック・トゥ・ザ・フューチャー」。
なに、ヒット映画の好いとこ取りか。
はたして上手くいっているのだろうか?

 

舞台は1969年のサイゴン。ヒロインはミス・サイゴンに選ばれ続けているニュイ。
彼女は9代も続くアオザイの名門仕立屋の娘だった。
しかし彼女は、家業であるアオザイを古くさいと貶し、モダンな服のデザインに夢中だった。当然のことながら、伝統的なアオザイに誇りを持っている母親とは喧嘩ばかり。

 

アオザイはきっちりと採寸し、その人の身体のラインにぴったりと合わせて仕立てるようだ。
そんなところはチャイナ・ドレスに似ている(男性目線では、つい胸のラインに注目してしまう 汗)。
アオザイでは腰からは深いスリットが入っているが、下にスラックスをはいている。

 

さて、モダンな服のデザイン・ショップを夢見て母親といがみ合っていたニュイだったが、ある日突然、現代(2017年)にタイムスリップしてしまう。
えっ!
そこで出会った未来の自分は、なんと酒浸りで自堕落な人生負け女だった。
えっ、なんでこんなことになっている? こんな無様な未来の自分は、イヤっ!

 

実はニュイの母が急逝した後に店は上手く行かなくなり、一番弟子が引き継いでアオザイ作りの伝統を守っていたのだった。
落ちぶれてやさぐれた47年後の自分の姿を見たニュイ。
何とかしなければ! 彼女はベトナムのトップデザイナーのもとで働くことになる。

 

ここから、時代の違いによるファッション感覚のずれもあって恐いもの知らずのヒロインのがんばりが始まる。
上司は皆が一目置くトップデザイナー。サイゴンのセレブ御用達のデザイナー。
(実は、亡き母の一番弟子の娘だったりする)。
ニュイは次第のその上司にも注目されるようになっていく。

 

このあたりが「プラダを着た悪魔」風味になっているといえるのだろう。
そしてついにニュイはその上司からの無理難題を突きつけられる。
その難題とは、なんとニュイが嫌っていたアオザイの現代風の新しい感覚のデザインである。
えっ、私、アオザイの作り方なんて知らない! 母にも教わることをしなかった・・・。

 

この映画の面白いところは、過去からやって来たニュイと、47年後の今のニュイが同時に存在しているところ。
このあたりは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」風なのだろう。
過去からやって来たニュイは、だらしない自分に、どうしてもっときちんとアオザイの作り方をお母さんに聞いておかなかったのよ、と文句を言ったりする。
でも、それって自分がしたことなんだよね。

 

この映画の始めの舞台は1969年のサイゴンである。
それはちょうどベトナム戦争の真っ最中の時期なのだが、その雰囲気はまったく感じられないような作りになっていた。
エンタメ映画だと割り切って、意図的にそうしたのだろうな。

 

2017年の世界でアオザイの魅力を再発見したニュイは、またひょんなことで1969年の世界に戻っていく。
そしてまだ存命の母に会うのだ。もう自分勝手な私ではないわ。

 

どこか垢抜けない雰囲気はあるのですが、素直に楽しめる内容でした。
一昔前の邦画を見ているような気分にもなれます。