1941年 アメリカ 99分
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:ケイリー・グラント、 ジョーン・フォンテイン
心理サスペンスもの。 ★★☆
富豪の娘リナ(ジョーン・フォンテイン)は、強引なアプローチをしてきたジョニー(ケーリー・グラント)に惚れてしまう。
しかし、このジョニーという男は女たらしで金銭感覚も全くないというダメダメ男だったのだ。
それでもジョニーに惚れ抜いているリナ。
原作は、「チョコレート殺人事件」などを書いたフランシス・アイリスの「レディに捧げる殺人物語」。
そして映画の原題は「疑惑」。邦題もこのままでよかったのに。
とにかくこのジョニーという男、脳天気な楽天家。
リナとの豪華な新婚旅を楽しみ、新居も内装にもお金をかけた豪邸。
しかし、そのお金は全部返せるあてもない借金なのである。
そのうえに、リナが父からもらった美術館級の椅子までも競馬の借金の穴埋めに骨董屋に売ってしまったりする。
おいおい、さすがにこれはひどい男だと気づくだろ?
しかしそれでもリナはジョニーに首ったけなのである。
まいったな。
ところがそのうちに、リナは不穏なものを夫に感じるようになるのである。
近くに住む推理小説作家に、夫は熱心に毒薬について教えてもらっている。えっ?
そしてこっそりと毒薬の専門書を読んでいるのである。えっ、これ、なぜ?
気の好い友人といっしょに事業を始めると言い始めた夫だったが、その友人が旅先で急死してしまう。
もしかして、途中まで見送るといって家を出た夫が、何かしたのでは?
あら、私が死ねば多額の保険金が夫に下りることになっているわ。
もしかして、夫は私も殺そうとしているのでは?
さあ、これを飲むといいよと夫が持ってきてくれたミルクの中には・・・・。
こんなわけでこの映画は、ヒロインが次第に夫への疑惑を募らせていく様を描いている。
その妄想の起こる過程が、観るものにも納得できるものになっているところが、サスペンスものとして成功している。
最後、家を出ようとした妻を乗せて、ジョニーが運転する車は断崖の道を猛スピードで走るのである。
(以下、ネタバレ)
えっ、あれは偶然だったの?
えっ、あれは実はそういうことだったの?
夫に対して抱いた”疑惑”は、結局はすべてリナの勘違いだったということが判って映画は終わっていく。
穏やかなエンディングだった(でも、夫の作った莫大な借金はどうするんだ? 笑)。
しかし、しかしである。
フランシス・アイリスの原作小説の結末は違ったのである。リナは殺されてしまうのである。
そして自分が殺されることを察知した彼女は、自分が殺されることを警察宛ての手紙に書いたのである。
リナを殺した夫は、何気なく置いてあった手紙を投函するという皮肉な結末だったのである。
映画もこの結末の方がすごかったような気がするのは、私だけ?
ジョーン・フォンテインがアカデミー賞主演女優賞を受賞しています。