1961年 フランス 107分
監督:フランソワ・トリュフォー
出演:ジャンヌ・モロー、 オスカー・ウェルナー、 アンリ・セール
2人の親友と1人のファム・ファタール。 ★★★★
フランス人のジムとオーストリア人のジュールはモンパルナスで出会い、文学青年同士の二人はすっかり意気投合する。
そんな二人はカトリーヌ(ジャンヌ・モロー)と知りあい、共に惹かれていく。
しかし二人の友情にひびが入るようなことはなかった。
原題は単純に「ジュールとジム」。
邦題はちょっと格好よく凝ってみましたという感じだが、公開当時の1960年代にはこういう邦題の付け方が流行っていた。
同じ年に公開された映画には「かくも長き不在」とか「太陽はひとりぼっち」などというのもあった。
ただトリュフォー自身はこの邦題は気に入らないと言っていたとのこと。
そうなんだ・・・。
二人は気まぐれで天真爛漫なカトリーヌを間に挟んで、楽しい日々を過ごす。
お互いがカトリーヌに抱く気持ちを尊重していたわけだ。
カトリーヌがひげを書いて男装した姿もよかった。彼女がかぶると帽子も粋だった。
そういえば、脇役女性なのだが、煙草くわえて機関車の真似をしていた。
フランスっぽい(?)おふざけだなあ、と思いながら見ていた。
ジムもジュールもカトリーヌに惹かれていたのだが、彼女と結婚したのはジュールの方だった。
彼はカトリーヌと祖国に帰り、娘も生まれる。
だが、時代は第一次大戦。ジムとジュールはそれぞれの国の兵士として出兵したりもする。
モノクロの画面が時代のなかを行く3人を淡々と追う。小説の雰囲気を壊さないようにしたためか、物語はモノローグに支えられている。
さて、戦争も終わり、ライン河畔のジュールとカトリーヌの家を訪ねるジム。
しかし、夫妻の関係はなにやら微妙なものになっていたのだ。
カトリーヌは自由奔放な女性。夫婦といった常識にも縛られない女性だった。
ジュールは彼女が自分から離れて行ってしまうことを恐れていた。
そして、ジムにカトリーヌと一緒になって欲しいと頼む。そうすれば自分もカトリーヌのそばにいることができる・・・。
実際、カトリーヌはファム・ファタールとしか言いようがない女性像。
彼女は自分に正直なだけなのだろう。打算も駆け引きも一切なし。
しかしそんな女性に向き合ってしまうと(惹かれてしまうと)、男性はただ苦悩するしかない。
劇中でジャンヌ・モローが歌うのが「つむじ風」。
ギターに合わせて呟くように歌うのだが、そのぎごちない歌い方がなんとも好い。
映画の主題は一人の女性を間にした二人の男の友情物語だろう。
そしてそれを際立たせていたのが、モローの、どこか謎めいた不思議な魅力だった。