2020年 オーストラリア 117分
監督:ロバート・コノリー
出演:エリック・バナ
現在と過去が交差するサスペンスもの。 ★★★☆
砂漠が国土の大部分を占めるというオーストラリア。
そんな乾ききった大地の、閉鎖的な町が映画の舞台である。
これまでに積みかさなった過去が、澱のように人々の足元をいつまでも浸している、そんな町なのだ。
原題はただ「渇き」だけ。
邦題はそこに「偽り」を付け加えている。まあ、その気持ちはわからなくもない。
しかし、ただでさえ堅かったイメージが、さらに取っつきにくい邦題になってしまったような気もするのだが、どうだろう?
幼なじみのルークの葬儀に参加する為に、久しぶりに故郷に戻って来た連邦警察官のアーロン(エリック・バナ)。
ルークは自宅で妻、息子を殺して、自分も近くの野原で銃で自殺をしたのだ。
そんな事情の3人の葬儀であるから、集まった町の人々は複雑な面持ち。
息子がそんなことをするはずがないと信じるルークの両親に頼まれて、アーロンは独自に調査を始める。
しかし、そんなアーロンに向けられる町の人々の視線には厳しいものがあった。
物語は、過去と現在の2つの事件を軸に展開する重厚なサスペンスもの。
実は、かつて、アーロン、ルークたち若者4人組の一人のエリーが川で死体で見つかるという事件があったのだ。
アーロンもその事件の容疑者になっていたという過去があったのだ。
閉ざされた町の住人たちのざらついた気持ちが物語全体をおおっている。
ふたつの事件の関係者たちの愛憎が交差している。
エリーはアーロンに殺されたのではないかと疑っているエリーの兄は、事あるごとにアーロンにたてついてくる。
しかし、エリーは実父に虐待をされてもいたようなのだ。
過去の事件の真相はどうだったのだ?
そして今回の事件は本当にルークが起こしたのか? 過去のあの事件との関わりはなかったのか?
かつての4人組で生き残っているアーロンとグレンチェルも苦い再会をする。
2人の間にはエリーの死が横たわっていたのだ。
あの日、あなたはどこで、何をしていたの? あの日、ルークはどうしたの?
そして今、そのルークの死が2人に重くのしかかってくる。
オーストラリア出身のハリウッド俳優といえば、まずニコール・キッドマンを思いうかべる。
この映画の主役のエリック・バナもオーストラリアの人。
祖国で重みのある好い映画を作った。
2つの事件の真相は絡み合って、ああ、そうだったのか、という展開となっていく。
閉鎖的な田舎町の人々はよそ者を受け入れず、また閉鎖した社会の中で啀み合っていく。
決して晴れ晴れとするような結末の映画ではありませんが、本格的な推理サスペンスものを観たという満足感を与えてくれる映画でした。