1968年 フランス 102分
監督:ルイス・ブニュエル
宗教ロード・ムービー。 ★★
予備知識なしに観始めた人は、きっと途惑うに違いない。そんな映画。
浮浪者の風体の薄汚れた二人の男の、聖地へ向かう巡礼の旅を追ったロード・ムービーである。
そして、その途上では頻繁に宗教的な考察がおこなわれる。
宗教的なモチーフを具現化したと思われる珍妙な登場人物もいろいろとあらわれる。
なんだ、この映画は?
映画はパリからスペインの聖地サンチャゴ・デ・コンポステラを目指す二人を追う。
よくは知らないのだが、その地には聖者の遺体が葬ってあるらしい。
ヨーロッパの各地からその聖地向かう道は、かつては銀河をたどるようだと言われていたらしい。
で、映画タイトルも「銀河」。当然のことながら宇宙はまったくあらわれません(汗)。
その途上で二人は異教徒の群れに出会ったり、奇妙な宗教に誘われたりする。
酒場では警察署長が牧師にむかって、聖書に書いてある奇蹟は全部まやかしだと絡んだりする。
さまざまな宗教問答がくり広げられる。
ブニュエル監督は自らを無神論者といっていたとのこと。
少年時代に厳格なイエズス会の学校に通わされたことから、その反発もあって、キリスト教には複雑な思いを抱いていたようだ。
ということでこの映画は、肯定的、あるいは否定的、どちらでもよいのだがとにかくキリスト教に興味がない者には退屈な内容ともいえる。
キリスト教を茶化したりもしているようにみえるが、全面的に否定しているわけでもなさそうだ。
真摯な問題を扱っているのに、どこか滑稽感をともなった軽さがある。
そこがブニュエルらしさというところなのだろうか。
キリスト教という宗教がどんな顔を持っているのか、時間とか空間を無視した舞台設定で差し出される。
巡礼者二人はいわば狂言回しで、様々なエピソードが積み重ねられている。
そこには荘厳さとか敬虔さとかはまったくなく、ごちゃごちゃととりとめがない猥雑さがあふれている。
映画の終わり近くには、なんと普通の若者のようなキリストがあらわれたりする。
聖地の町にたどり着いた二人を誘惑する娼婦もあらわれる。
聖者の遺体には首がないのよ、だから訪れても意味がないわよ、それよりも私に赤ちゃんをさずけてちょうだい。
どうやら彼女はマグダラのマリアらしいのだ。
ブニュエル監督作品の根底にはキリスト教の問題意識が常に流れていると言われている。
それも単純にとらえるのではなく、諧謔的であったり、シュールレアリスティックであったり、一筋縄ではいかない描き方となっている。
それを楽しめる素養がないと、この作品などはなかなか評価しづらい。
私にはちょっと辛い映画だった。
しかしそんなことは別にすると、キリスト教という壮大なテーマをこんな風に自由自在に(自分の好き勝ってに)描いてしまう力業には感心してしまう。
同じ巡礼の旅を描いた作品に「サン・ジャックへの道」がある。
あちらはどんな描き方なのだろうか。