あきりんの映画生活

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「バビロン」 (2022年) ハリウッドの狂乱、映画への狂愛

2022年 アメリカ 189分 
監督:デイミアン・チャゼル
出演:ブラッド・ピット、 マーゴット・ロビー、 ディエゴ・カルバ

ハリウッド黄金期の栄光と挫折物語。 ★★★

 

冒頭に映画プロデューサーが主催した酒池肉林のパーティー光景が描かれる。
トップレスの美女たちが踊り狂い、臆面もなくコトに及んでいるカップルもいる。
まるで紀元前6世紀に栄えた享楽の都バビロンの有様である。
時は1926年、ハリウッドはサイレント映画の絶頂期だったのだ。

 

ラ・ラ・ランド」のチャゼル監督がこんな軌道を逸したような光景も撮るのかとも思ったが、これは確かにハリウッドのお祭り騒ぎ時代の象徴だったのだろう。
この映画は、このあとトーキー時代に変化していく映画界での人々を描く。
もう、映画のための映画、といった感じであった。

 

映画界で働きたいという夢を抱いてメキシコからハリウッドへやって来たマニー(ディエゴ・カルバ)は、女優志望のネリー(マーゴット・ロビー)と出会う。
この二人の若者が、サイレント映画から長編トーキー映画へと大きく変わっていくハリウッドで生きていく。

 

二人に加えて、サイレント映画時代のベテラン俳優のジャック(ブラッド・ピット)、さらにトーキー映画になってあらためて見直されたジャズマンのシドニーも、時代の波にもまれる。
一人はその変化に悩み、一人はその変化で大きく躍進する。
人生なんて時代の影響でどうなるか、判らないものなのだな。

 

サイレント時代の映画の撮影シーンが出てくる。
ひとつは、急遽役をもらえたネリーの酒場シーン。
ネリーを馬鹿にしていた監督が、彼女が何回でも泣く演技ができることに感嘆する。あなたはたいした役者よ。

 

もうひとつは、ジャックが主演の中世の騎士物語? 
広大な丘の上のシーンなのだが日没が迫っている。明るさが残っているうちに撮影を済まさなければならないがカメラが壊れてしまっている。はたしてどうなる?
どちらの撮影場面も、そうか、こんな風にして映画を撮っていたのかと興味深いものだった。

 

トーキーになってからの撮影も大変。
なにしろ音を一緒に撮るのだから、余分な物音を立ててはいけない、台詞はマイクがセットしてある位置でなければ声が拾えない。

 

そしてこのトーキーへの一大変化が人々に悲喜こもごもの事態を引き起こす。
身振りだけの演技と違って、声が好くて話し方が上手くないと、もはやトーキーの時代では生き残れないのだ。
ヒル声だと酷評されたネリーも必死に発声練習をしたりする。

 

マーゴット・ロビー演じるネリーは、とにかく映画界で一花咲かせたいと貪欲に頑張る。
セクシーなのだが、常識破りで下品。
自分の欲望のままに行動していく破滅型の人物像だった。
だから、応援したいのだけれども、とことん観る人の期待を裏切ってくる。

 

そんなネリーに惹かれ、何とか彼女を支えたいと頑張るのがマニー。
こちらはいたって真面目青年。映画プロデューサーとしての手腕も認められていく。

 

映画は狂乱の様相ですすんでいく。
いきなりマニーの親が入院している精神病院が出てきたり、薬でハイになったネリーが砂漠でガラガラヘビと戦って噛まれたり・・・。
終盤には気味の悪いマフィアのボス(トビー・マクワイア)につれられて秘密の見せ物小屋を巡ったりもする。

 

ということで、いささかとりとめがない感は否めない。
めまぐるしく展開するのだが、どこか上滑り気味なエピソードをつないでいるといった感じなのだ。
あまり深く感じるものはないなあ。

 

莫大な借金を背負ったネリーは、必死のマニーに助け出されて闇に消えていく。
破天荒な生き方しかできなかったネリーが哀れなような、愚かしく思えるような・・・。
見事にそれを演じたマーゴット・ロビーを、また見直してしまった。

 

3時間超えの長さである。とにかく目まぐるしい。
1回観る分には楽しめるが、2回観ようとは思わないなあ。そんな映画でした。