1999年 アメリカ 121分
監督:マーティン・スコセッシ
出演:ニコラス・ケイジ、 ジョン・グッドマン、 パトリシア・アークエット
魔都NYで懸命に働く。 ★★☆
救急車で夜のニューヨークを人命救助のために走り回る救命士。
ケビン・コスナーの映画に「守護神」という海難救助隊ものがあった。この映画も人命救助のその類いのものかと思っていた。
違った!
90年代前半のニューヨークが舞台。
麻薬と暴力がはびこっていたNYでは、救急車は休む暇もなく走り回っている。
フランク(ニコラス・ケイジ)は使命感に燃える救命救急士だったが、あまりに多くの悲劇に接して、肉体ばかりか精神までもが疲労しきっている。
スコセッシ監督なので、救命士も”あのタクシー・ドライバー”のようになるのだった。
脚本も「タクシー・ドライバー」のポール・シュレイダーだった。
救急車で駆けつけて助けるのは、自殺願望があるホームレスの若者や、麻薬中毒者たちとその売人、などなど。
なかには毎夜のように騒ぎを起こして病院へ連れて行ってくれとわめき散らす者もいる。
こんな人たち(失礼!)のために神経をすり減らして働き続けていれば、そりゃ神経も病んでくるよな、と思われる。
それに勤務ごとに交代するフランクとペアを組む同僚もひと癖のある人物ばかり。
仕事の合間に食べたい物の話ばかりしてる奴(ジョングッドマン)や、酔っ払いでセクハラなのに熱心なクリスチャンの奴、患者に暴力をふるう奴。
とにかくこいつらも一緒に仕事をしていれば疲れるような奴らばかり。
このままでは自分が駄目になってしまう!
仕事を辞めさせてくれと局長にも嘆願するフランク。
しかし何度頼んでも、いや、無理だから、他に人がおらんから、と一蹴されるばかり。
ある夜、フランクは心臓発作を起こした老人バークを心臓マッサージと電気ショックでなんとか命を繋ぎ止め、病院に搬送する。
しかし病院の中もカオス状態。
あふれる救急患者の対応に混乱していて、患者を収容するスペースすらままならない。
NYの深夜って、毎晩こんな風なのか? たまらんなあ。
何度も心臓発作を起こしてはその度に電気ショックで蘇生するバーク。
フランクは彼の娘メアリー(パトリシア・アークエット)と知り合いになり、次第に彼女に惹かれていく。
そして彼女の傍らにいることでわずかの間の精神の安らぎを覚えるようになる。
ニコラス・ケイジはこんな風に疲れ果てた人物像を上手く演じる。
お馬鹿コメディ・タッチよりはこの路線の方が合っていると思うのだが。
賞を獲った「リービング・ラスベガス」もそういう感じだった。
それはともかく、観ていて、こちらまで疲れてくる映画だった。
もちろんそれを狙った映画。
最後にフランクがとった行為には考えさせられる。
精神を置き去りにした肉体の救命は、はたして本当に救命したことになっているのだろうか?
(余談)
この映画が公開されたころ、ニコラス・ケイジとパトリシア・アークエットは実際に夫婦だったとのこと。
へえ、そうなんだ。