あきりんの映画生活

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「ラストマイル」 (2024年) 日本の流通の屋台骨が揺らぐぞ

2024年 128分 日本 
監督:塚原あゆ子
出演:満島ひかり、 岡田将生

社会派サスペンスもの。 ★★★

 

現在の我が国の経済活動の重要要素となっているのが物流。
買い物はネットで注文して自宅に届けてもらう、我が家でも日常的におこなっている。
日常生活もそれを抜きにしては成り立たないほどに依存しているのだが、もし配送された荷の中に爆弾が仕掛けられていたら・・・。
この映画はそんな設定のサスペンスもの。

 

主人公の舟渡エレナ(満島ひかり)は、世界的なショッピングサイトの日本/関東センター長に就任したばかりのバリキャリ・ウーマン。
すると、彼女が管轄しているセンターから配送された荷物が、届け先で爆発するという事件が起きる。
彼女はチームマネージャーの梨本(岡田将生)とともに事態の収拾にあたる。

 

大規模ネット・ショッピングサイト(誰だってアマゾンを連想していたのではないだろうか。それとも楽天?)の実態が垣間見えて、その点でも興味をひいた。
そうか、我が国の物流はこんな風に支えられていたのか。

 

そして配送サービス(誰だってクロネコを連想したのではないだろうか。それとも佐川急便?)の大変さに今更ながらに築かされる。
これからはもっと感謝しなければ(配送ドライバー役の日野正平がよい味を出していた)。

 

配達された荷が爆発するかもしれないとなれば、物流を止めて一つ一つ検査しなければならないぞ。
いったいこのサービスセンターには何万個の荷があるんだ?
ベルトコンベアを止めたら、それだけで大損害が出るぞ。

 

満島ひかりはこれまでも上手い役者だと思っていたが、本作の彼女は一筋縄では捉えられない人物像を巧みに演じていた。
顧客第一を信条にしているように見せて、実は会社業績第一だったりするしたたかさ。
と見せかけて深いところでは顧客のこともちゃんと考えている。なかなかやるねえ。

 

もちろん収益第1の会社上司も現れる。部下を叱咤激励して働かせる
荷物を流すベルトコンベアの速さを少し遅くするだけでどんなに収益が悪化するのか判っているのか?
トラック便をもっと効率よく働かせろ。歩合を上げるなんてもってのほかだ。

 

この作品の宣伝として大きく使われていたのが、以前に好評だったドラマとの融合。
なんでも「アンナチュラル」、「MIU404」というふたつのドラマの出演者が同じ役どころであらわれるとのこと。
確かに綾野剛星野源井浦新窪田正孝、果ては石原さとみまで顔を出すのだから、そりゃ話題にはなるだろう。

 

二つのドラマのどちらも未見の私はついて行けるだろうかと危惧していた。
しかしそれはまったくの杞憂だった。
というか、その二つのドラマとの絡みは不要としか思えないような浅いものだった。
別に彼らを出す必要はなかったのじゃ、ね? 単に顔見せ程度だったぞ。

 

さて、連続爆破事件の犯人は誰? その動機は? ということになる。
途中では、エレナが真犯人なのではないかと観る者を惑わせるような映像や秘密も交えてくる。
でも、まさかそうはならないのだよね。

 

SNSで予告された”爆発する荷は12個”というのもよく効いていた。
犯人が11個しか爆発物を仕掛けていなかったら、残りの1個は?となって永遠に物流は停まってしまうぞ。

 

ラストに向かっての事件の展開は、いささか急ぎ足になったきらいはあった。
そしてヒロインのエレナの身の処し方も、いささかきれい事だったきらいはあった。
それでも好くできた映画でした。
今年の邦画の賞をとるのではないだろうか。