あきりんの映画生活

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「消えた声が、その名を呼ぶ」 (2014年)娘を訪ねての旅(三千里?) 

2014年 138分 ドイツ 
監督:ファティ・アキン
出演:タハール・ラヒム

過酷な旅の物語。 ★★☆

 

すこし前にソ連からインドまで歩いて逃亡の旅をした映画「ウェイバック」を観た。
あれは第一次世界大戦の時の話しだった。
この映画は同じ頃に起きたオスマントルコ帝国のアルメニア人虐殺事件をもとにしている。

 

1915年の第1次世界大戦中、オスマン帝国のマルディンで鍛冶職人をしていたアルメニア人のナザレット(タハール・ラヒム)。
彼は突然、憲兵によって妻や娘と引き離され、砂漠に強制連行されてしまう。
100万人のアルメニア人が殺されたとされる理不尽な一大事件だった。

 

荒れ地での激しい労働を強いられ、挙げ句の果てに虐殺されそうになる。
ただひとり、奇跡的に生き延びたナザレットだったが、喉を切られて声は失ってしまっていた。
家族もみんな殺されたと思っていたのだが双子の娘は生きのびているという情報を得る。
彼のシリア、キューバアメリカと娘を探すための旅が始まる。

 

監督は「愛より強く」でベルリン映画祭の金熊賞をとっているファティ・アキン
あの映画は奇妙にねじれた男女の愛のあり方を描いていた。
本作は娘ともう一度会いたいという一念で世界を半周する過酷な旅をした男の物語。
どちらかと言えば、直球一本勝負という図太い映画だった。

 

声を失った時にナザレットは信仰心も捨て去っていた。それほどに辛い状況に置かれたのだ。
そこからの旅はもちろん平坦ではない。痛ましい出来事もある。
ナザレットも聖人君子ではない。盗みもすれば人を傷つけることもする。必死なのだ。
可哀想でしょう、といった安易な描き方ではないのだ。

 

彼が出会う人々も、悪意の塊のような人もいれば、無償の助けをしてくれる人もいる。
何も聞かずに彼を匿ってくれた石鹸工場の人、娘の行方を親身に調べてくれた理髪店の人。
荒野で食べものと寝るところを提供してくれた人もいた。

 

人々の敵意にさらされ、また援助を受けて、8年の歳月ののちにナザレットはアメリカのノースダコタへとたどり着く。
果たして彼は娘と再会することはできたのか・・・。

 

「ウェイバック」の時も思ったのだが、ものすごい人生もあるものだ。
映画は、自分には到底縁のないこういうすさまじい生き方を見せつけてくれるところがいいな。

 

それにしてもこの邦題のひどいこと! もうすこし何とかならなかったのか?