1991年 83分 日本
監督:塚本晋也
出演:田口トモロヲ, 叶岡伸
サイバー・ホラー? ★★★
塚本晋也監督の衝撃的な前作(デビュー作でもある)「鉄男」は1989年の作。
3年後の本作はⅡとなっているが、直接的な物語上のつながりはない。
「鉄男」というモチーフだけが引き継がれていて、人体が鋼になっていく狂気の世界を描いている。
妻のカナ(叶岡伸)、幼い息子と優雅で平穏な暮らしをしている谷口(田口トモロヲ)。
ある日不気味なスキンヘッドの2人組が襲ってくる。彼らは谷口の胸に銃のようなもので何かを撃ちこみ、息子を誘拐する。
街中を必死に追いかける谷口。ビルの屋上から突き落とされそうにもなる。
前作はそれこそ物語の筋もないような破れかぶれの作品だった(これ、褒め言葉です)。
うぎゃあ、とか、わおおおお、とか、叫び声が充満していて、まともな台詞もないような作品だった。
身体が鋼鉄化した主人公のペニスはドリルとなり、恋人の身体を貫いてしまうような映画だった。すごかったよ。
それにくらべれば本作は一応の物語がある(悪夢のようだが・・・)。台詞もある。
しかしその台詞の音量は極端に小さく、騒音とか機械音とか、そういったものの音量が大きい。
まるで、人間の会話などどうでもいい、と言っているかのよう。
拉致された谷口が連れて行かれた巨大倉庫では、大勢のスキンヘッドの男たちが肉体訓練をしている。
異様な光景である。その中で谷口は人体実験をおこなわれ、やがて彼の身体には徐々に異変が生じてくる。
胸のあたりから無数の銃口がせり出してきたりするのだ。肉体が鋼鉄の銃器と化していくのだ。
スキンヘッド集団を操っているのが“やつ”(塚本晋也)。
“やつ”はモヒカン頭なのだが、これはスコセッシ監督の「タクシードライバー」へのオマージュだとのこと。狂気へのオマージュか。
観ている者の感覚を不快に逆なでするような映像が続く。
しかし勢いがある。その勢いに呑みこまれて観てしまっている。
腕が機関銃と化している敵も襲ってくる。
腕が高性能光線銃になっている主人公を描いたコミック「コブラ」はこの映画の10年ぐらい前のもの。参考にしたのだろうか。
ラスト、最後の闘いに赴く谷口の身体は完全に鋼鉄化している。
銃器を備えたブルドーザーといった感じの巨大鉄の塊に化しているのだ。
CGもない時代なので、ぞれらの造形ははっきり言ってスマートなものではない。
しかしそれゆえのひたむきな映像愛を感じる。鉄フェチの極地とでもいうものになっている。
なんでもイギリスではビデオ・チャートの1位になったこともあるとか。
カルト的な魅力を備えた映画であることは間違いありません。