
2024年 131分 日本
監督:安田淳一
出演:山口馬木也
幕末の侍がタイムスリップ。 ★★★
すこし前に「カメラを止めるな」という映画が話題になった。
この映画も自主制作で作られたようで、当初は池袋の映画館一館でのみ上映されたとのこと。
ところがそれが評判になり、上映館が次々に増え、映画評論などにも取り上げられるようになったとのこと。
たしかに好く工夫された映画だった。
斬り合いの最中に雷に打たれた幕末の侍、高坂新左衛門(山口馬木也)が現代にタイムスリップしてしまう。
そして気がついた場所がなんと京都の時代劇撮影所のオープンセットだった、というところがミソ。
周りには時代劇の衣装を着た役者さんたちがぞろぞろといる。
はて、儂がいるここはどこじゃ?
はじめは、新左衛門はいる時代が違っているなんてことには気がつかない。
そりゃ当たり前だよね。そんなことを考えつく人がいるはずがない。
そこで周りの人々とのちぐはぐなやりとりがコミカル風味となっている。
たとえば、ワル侍にちょっかいをかけられて難儀している町娘を助けようと、新左衛門が乱入する。
芝居をしていた役者たちはびっくり。おいおい、こんな段取りにはなっていないぞ。
映画を撮っている監督もびっくり。おいおい、あれは誰だ? どこの事務所の奴だ?
感心したのはこの映画の殺陣の素晴らしいこと。本格的である。迫力も十分。
なんでも主役の山口をはじめとして、テレビの時代劇ドラマに多数出演している人たちのようだ。
自主制作映画ながら東映の京都撮影所も貸してもらって撮影したとのこと。
この映画で一番引っかかったのは、新左衛門がやけにあっさりと自分が違う時代に来たことを受け容れたこと。
撮影所の外へ出てみれば、車は走っているわ、電車の踏切はあるわ、ビルが林立しているわ。
そりゃ普通は驚くよね。自分は気でも狂ったのかと思ったりもするよね。
でも、新左衛門は江戸幕府が140年前に滅んだことを受け容れ、自分の立場を理解するのだ。
ということは、この映画の狙いはそこにはなかったということだ。
新左衛門は周りの優しい人々の助けを借りて、撮影所で時代劇の斬られ役として生きていくことを決意する。
拙者にできることは剣の道を活かすことだけでござる。
さて、10年前に時代劇から去っていった大スターがいた。
その後は現代劇などで売れっ子になっていたのだが、ふいに彼はもう一度時代劇を作りたいという熱意を露わにしてくる。
その映画、「最後の侍」制作発表は一大ニュースとなる。
そしてその相手役には新左衛門を指名してきたのだ。えっ、何故拙者を?
こうして後半になると、物語が深みを帯びてくる。
ここからの展開についてはネタバレになるので書けないのだが、なるほどと感心した。
そうか、そういうことになっていたのか・・・。
クライマックスは、撮っている映画「最後の侍」のクライマックスでもある斬り合い場面。
なんと二人は真剣を使って斬り合うのだ。それを撮影するというのだ。
ここも素晴らしい迫力だった。
チャンバラ映画への愛が詰まっていた。
コミカルでありながら、そのストーリーはよく練られていた。
最後にオチのような場面が映る。えっ、そうきたか・・・。