2024年 149分 日本
監督:曽利文彦
出演:役所広司、 内野聖陽、 土屋太鳳、 栗山千明
伝奇時代劇。 ★★☆
「南総里見八犬伝」といえば滝沢馬琴である。しかし、そんな江戸時代の物語を現代人が読めるはずもない。
そこでこの映画では山田風太郎が書いた小説「八犬伝」を元にしているとのこと。
そして八犬伝の物語と平行して、その物語を書いている馬琴の物語を描いている。
売れっ子作家の滝沢馬琴(役所広司)は、友人の絵師・葛飾北斎(内野聖陽)に、構想中の新作について語り始める。
ほほう。馬琴と北斎が気の置けない友だちだったとは。巧みな設定だな。これ、事実だったのだろうか?
そして馬琴が北斎に語ってみせるのが「南総里見八犬伝」だった。
八犬伝の物語はおぼろげには知っていた。
8つの珠を持つ8人の剣士が運命に導かれて集結し、里見家にかけられた呪いと戦うというものだったはず。
しかしその怨霊は約束を裏切られた犬、八房の恨みから来ていたのではなかったか。
犬畜生と侮って約束を反故にしたのが、そもそもの発端では・・・?
まあ、それはさておき。
馬琴は28年間もかけてこの物語を書きあげている。全106冊だったとのこと。
映画でははっきりとは描かれていなかったが、八房の気を受けて懐妊した伏姫は自害して、その傷口から出た光が八つの数珠玉を光らせて八剣士になったようだ。
映画は奇想天外な物語パートと、それを書いている馬琴のパートを交錯させて描いていた。
アクション場面で盛り上げようとしたのだろうが、私は馬琴パートの方が興味深かった。
特に鶴屋南北(市川談春)と小説談議を交わすあたりは好かった。
最後のほうで八剣士を捜し当てる法師が登場する。
いきなりあらわれて、こいつは何者だろうと思っていたのだが、元々の話では伏姫の許嫁だったようだ。そうだったんだ。
映画の謳い文句としては、八犬伝の虚の世界と馬琴の実の世界を融合させたということのようだ。
しかし、どうも中途半端な感じがぬぐえなかった。
両方の世界が互いに他方の世界を邪魔しているような気がしてしまったのだ。
こんなことなら、「八犬伝・物語編」、「八犬伝・馬琴編」とはっきり分けた二部作にしていたらどうだったのだろうか。