1985年 161分 アメリカ
監督:シドニー・ポラック
出演:メリル・ストリープ、 ロバート・レッドフォード
ある女性の年代記。 ★★☆
原作はデンマークの作家であるアイザック・ディネーセンの自伝(いくつかの邦訳があり、そのタイトルは「アフリカに生きて」や「アフリカの日々」だった)。
彼女はちょっと奇妙な味わいだった映画「パペットの晩餐会」(アカデミー外国映画賞を取っている)の原作者でもある。
時代は20世紀初頭。デンマークの裕福な家庭に生まれたカレン(メリル・ストリープ)はスェーデンの貴族ブロア男爵と結婚する。
そして彼が所有する農場のあるケニアへ移住する。
この映画はカレンのたくましい生き方をアフリカの雄大な自然を背景に描いている。
夫となったブロア男爵だが、彼は決して悪い人ではない。しかしカレンとは波長が合わないようなのだ。
二人の生きたり生活をしていく上で神経を使う場所が微妙にずれている。
それなので愛情が溢れることもないのだが、逆に憎んだり嫌ったりというようなことにもならないのだ。
飛行機の操縦免許を取ったブロアが複葉機を購入してきて、カレンを乗せて飛ぶ場面がある。
わりと低空歩行で大地を舐めように飛行機は飛ぶのだが、この時のアフリカの雄大な景観はすばらしかった。
家庭生活はどこかそっちのけで、風来坊のようにどこかへ行ってしまう夫。
カレンは一人で使用人に指図をして農場でのコーヒー栽培を切り盛りしていく。
そんな日に遭遇したライオンから救けてくれたのがサファリガイドのデニス(ロバート・レッドフォード)。
二人は次第に惹かれ合っていく。
まあカレンの生き方が逞しい。
夫から梅毒をうつされて重病人になっても、夫を責めることもせず、逞しいのである。
さすがに治るまではデニスとの接触も控えたのだろうけれど(汗)。
メリル・ストリープはこの映画の時は36歳(「殺意の匂い」の3年後)。
もうこの頃には大女優という風格が漂い、演技も堂々としている。
たしかに上手い。この映画は2時間40分という長丁場だが、彼女の演技によってダレルこともなく最後まで見せてくれる。大したものだ。
相手役のロバート・レッドフォードのほうはいつもながらの淡々とした雰囲気。
人への思いやりがあって、悲しみや憎しみを押し殺しているような雰囲気。
激しいものはないのだけれど、安心して任せておける、といったところ。
好い映画なのだけれども、それにしてもこの邦題は酷い。
もう少し何とかならなかったのか。
確かに愛と悲しみはあったけれど、それにしてもなあ。
他の映画とすぐに混同してしまいそうなタイトルでは、映画がもったいないでしょ。
アカデミー賞では作品賞、監督賞など7部門で受賞しています(メリル・ストリープは主演女優賞ノミネートだった)。