2020年 112分 イギリス・アメリカ
監督:ドミニク・クック
出演:ベネディクト・カンバーバッチ、 メラーブ・ニニッゼ
スパイ・サスペンス。 ★★★
時代は1960年代初頭。東西の冷戦状態の頃。
内部情報を西側にリークする代わりに西側への亡命を希望するソ連高官がいた。
ソ連軍参謀本部情報総局のペンコフスキー(メラーブ・ニニッゼ)のもたらす情報は重要だぞ。
なんとしてでもこのルートを確保しておかなくては。
しかし彼との接触が大変だったわけだ。
接触がソ連当局に怪しまれてしまったら、ペンコフスキーはもちろんのこと、接触者も重罪に問われてしまう。
そこでMI6とCIAが目をつけたのが一般人のグレヴィル(ベネディクト・カンバーバッチ)。
彼は商売で頻繁に東欧諸国に出入りするイギリス人セールスマンだったのだ。
ちなみにタイトルにある「クーリエ」とは「外交伝書使」の事。
さあ、いかに怪しまれずにペンコフスキーと接触して、渡された情報を西側へ持ち帰るか。
スパイものだが、007のような派手なアクションとは無縁の映画。
そりゃそうだ、実際のスパイは無闇に戦わない。
それどころか目立たないようにひたすら地味で、他人の印象に残らないようにしなければならないだろう。
実際に諜報員だった経験も持つル・カレの書くスパイ小説の地味なことといったら。
そして押しつぶされるような緊張感といったら。
ほら、あのル・カレ原作のスパイ映画「裏切りのサーカス」、あの映画の暗く重苦しい雰囲気ね。
かなり捻った物語のように感じるが、本作は実話ベースとのこと。
だからそれほど突拍子もない展開ではないのだよ。それでも、えっ、こんな展開になってどうするんだ? どうやって切り抜けるんだ、的なはらはら感は満載。
対極的な立場にあるセールスマンと情報提供者の間に芽生える友情も好かった。
その友情は世界情勢の波にもまれてどうなったのか。
一般人がスパイの任務をこなすという難しい役をカンバーバッチが自然体で演じていた。
彼は役作りで10kg近くも減量したのだとか。すごいね。
世界大戦勃発の可能性もあったキューバ危機。
それを回避した経過を描いたスパイもの作品だったわけだが、キューバ危機の裏側にこんな事実があったことを初めて知った。
世界を危機から救った男ではないか。
偉大な功績を挙げた人物としてもっと賞賛されてもよかったのではないだろうか。