あきりんの映画生活

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「オーバー・ザ・ムーン」 (1999年) 夢を諦めたのは貴女だけじゃないのよ

1999年 107分 アメリカ 
監督:トニー・ゴールドウィン
出演:ダイアン・レイン、 リーブ・シュレイバー、 ヴィゴ・モーテンセン

人妻不倫物語。 ★★☆

 

物語は1969年のひと夏のできごと。
TV修理屋の夫(リーヴ・シュレイバー)と二人の子どもがいるパール(ダイアン・レイン)は、一家で恒例の避暑地に出かける。
そしてその避暑地に衣類の移動販売でやってくる若い男ウォーカー(ヴィゴ・モーテンセン)と、なんと不倫をしてしまう。

 

実はパールは17歳で妊娠してしまい、そのまま結婚したのだ。
それから今までの人生には青春もなく、ただ子育てと家事に明け暮れてきたのだ。
夫は自分を、そして子供たちを愛してくれている。そのために家をほとんど留守にして仕事をしてくれている。
それはよく判っている。判っているのだけれども、どこか虚しい・・・。
そんなパールがイケメンでやさしいウォーカーに惹かれてしまったのだ。

 

タイトルの「オーバー・ザ・ムーン」だが、これは”とても幸せだ、幸せすぎて月を飛び越えてしまいそうだ”といった慣用句のようだ。
こんな慣用句は知らなかったなあ。授業でも習わなかったぞ。

 

たしかにヴィゴ・モーテンセンの格好いいこと。
女性客相手に如才なく話しをするし、カウボーイ・ハットもよく似合っていた。
そんな彼も軽薄な気持ちでパールを誘ったのではなく、本気で彼女を愛してしまっていたようなのだ。
ますます格好いいねえ。

 

物語の舞台となった年にはアポロ11号の月面着陸があった。また伝説の野外フェス・ウッドストックがあった。
映画の中でもこれらは重要な背景となって描かれている。

 

月面着陸の実況放送をテレビの前に集まった人々は固唾を呑んで見守っている。
暗いバスの中の古い小さなテレビでも実況放送をしていて、その前でパールとウォーカーは初めて身体を重ねる。
そして二人で出かけたウッドストックの野外会場で、彼氏といっしょに来ていた娘にパールは浮気現場を見られてしまう。

 

贔屓のダイアン・レインだが、実のところ、この映画のヒロイン像にはまったく共感できなかった。
そりゃ若気の至り(?)の1回のセックスで妊娠してしまい、それからの人生で少しずつたまっていたパールの不満は判る。
たしかに判るのだが、だからといって夫や子供たちを裏切っていいということにはならないだろ。
あまりに自己中心的だよ。

 

パールの浮気を察した義母が言う、早すぎた結婚で貴女は夢を棄てたのだろうけれど、息子だって家族を養うために夢を棄てたのだよ。
占い師でもあるこの義母がなかなかの好人物だった。
浮気した嫁を一方的に責めるでもなく、現実を見させようとする。

 

そして夫。これがまた好い人。家族を愛する善良で凡庸な夫。
妻を心から愛していただけに、その裏切りを知った時には茫然自失となる。
そうなるよな、好い人だっただけに辛いよな。
悪人は一人もいないのに壊れてしまったこの家族は、どうなるのだろうと思いながら観ていた。

 

最後のまとめはちょっときれい事になりすぎたかもしれない。
そんなに簡単に人の気持ちは・・・と、思わないでもない。
でも、バッドエンドで気分悪くなるよりは、こちらの結末で好かったとしておこう。