あきりんの映画生活

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「さすらい」 (1957年) 愛の不毛シリーズの前夜

1957年 イタリア 102分 
監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
出演:スティーヴ・コクラン、 アリダ・ヴァリ

暗い放浪の日々。 ★★★☆

 

ミケランジェロ・アントニオーニ監督の第6作。
この後に続くのがいわゆる”愛の不毛シリーズ3部作”だが、この作品はその前哨戦のような雰囲気である。
アントニオーニ監督と言えばミューズはモニカ・ヴィッティで、愛の不毛3部作でのヒロインを演じている。この作品では端役で登場していた。

 

舞台は北イタリア、ポー河流域のうら寂しい田舎。
精糖工場で働くアルド(スティーヴ・コクラン)は、夫がオーストラリアに行ったきりのイルマ(アリダ。ヴァリ)ともう7年間も同棲しており、6歳になる娘までできていた。
そんなある日、イルマの夫が死んだ。
よし、これでいよいよ結婚できるぞ。

 

ところが、思いもかけないことに、イルマは、もう愛は消えたわ、もう一緒には暮らせない、と冷たく言い放つ。
えっ、どうしたのだ、他に好きな奴でもいるのか。・・・そうよ。
そこでアルドは幼い娘をつれてあてのない旅に出る。

 

イルマ役はあのアリダ・ヴァリ
そう、何と言っても彼女は「第三の男」で印象的だった。それに「かくも長き不在」ではひたむきな妻役を演じていた。
名女優なのだろう。でも私はあのちょっと険のある顔つきがいささか苦手(苦笑)。
一方のアルド役のスティーヴ・コクランは眉の太い濃い顔の好い男。
この映画の中でも、行く先々で結構モテるのだ。

 

アルドはかつての婚約者だった女性を訪ねる。
まだアルドのことを忘れていなかった彼女は優しく彼を迎え入れてくれる。
しかしアルドの気持ちは満たされることはなく、ふたたびさまよいはじめる。

 

アルドと娘は幹線道路沿いのガソリン・スタンドにやって来る。
そこでは老いた父親と暮らしている若い女性がいて、アルドはすぐに親しくなる。おいおい。
そしてアルドは娘をバスに乗せて故郷に帰してしまう。おいおい。
かなり自分勝手な奴だな、アルドは。女に手も早いし・・・。
でもそれだけ彼の心は必死にもがいていたのだと言うことなのだろうか。

 

すがるガソリン・スタンドの女性をふり切ってまた旅に出るアルド。
次には河岸のみすぼらしい小屋で病気持ちの女と暮らしはじめたりもする。

 

しかし結局はアルドは元いた村に舞い戻ってきてしまう。
彼が向かったイルマの家では、彼女は彼の留守中に生んだ赤ん坊の世話をしていた。
アルドは以前働いていた精糖工場の塔に登る。彼を追ってきたイルマが声をかける。そして・・・。

 

原題は「絶叫」。邦題は映画の内容そのもので、最後に収斂する原題より好かったのではないだろうか。

 

愛する相手がいないわけではない。
アルドはイルマをはじめとして何人もの相手と愛を交わそうとする。しかし満たされない。
ミケランジェロ監督がこの後に描こうとした”愛の不毛”も、愛する相手が不毛(いない)なのではなく、その相手を愛することが不毛なのだった。

 

モノクロの引きの多い画面構成も映画の雰囲気をよくあらわしていた。
やはりミケランジェロ・アントニオーニは(フェリーニヴィスコンティよりも)好きな感覚の監督だな。