
2023年 131分 中国
監督:チェン・アル
出演:トニー・レオン、 ワン・イーボー
戦時下のスパイもの。 ★★★☆
舞台は第2次世界大戦下、上海事変が起きた1937年から日本降伏の1945年ごろまでの上海。
そこでは、暗躍する中国共産党、汪兆銘の国民政府(これとは別に蒋介石の中国国民党もあったのだからややこしい)、それに日本軍のスパイたちが暗躍していた。
当時の汪兆銘政権について少しは知っておかないと登場人物の立ち位置が判りにくくなる。
汪兆銘の国民政府は、1940年から1945年にかけて存在した。
日中戦争における日本軍占領地に成立した政権であり、一般には日本の傀儡政権と見做されている。当然、共産党とは対立しているわけだ。
さあ、判ったかな。
その汪兆銘政権に所属するフー(トニー・レオン)は、仲間のワンやイエ(ワン・イーボー)と共にスパイ活動をおこなっていた。
上海に駐在する日本軍スパイの渡部とも情報交換を密にしている。かなり人間関係がややこしいぞ。
さらにこの映画をややこしくしているのが、時間軸が錯綜するところ。
いきなり前後とは関係のない映像となる。あれ、これはどうなっているのだ? さっきまでとのつながりはどうなっているのだ?
後になると判るのだが、時間的には未来のこととなる映像が挟み込まれているのだ。
あとになって、ああ、あの映像はこれだったのか、ということになるのだが、かなり途惑う。
それを別にしても、映像はかなり洒落たものになっている。
個人的な推測なのだが、この監督はウォン・カーウァイが好きなのではないだろうか。
どこか似たような雰囲気を感じるのだ。
したがって、私好みということになる。
主役のトニー・レオン、それに初めて観たと思うのだが若手No.1とされるワン・イーボーは文句なしに格好好い。
それにフーの奥さんのチェン、イエの許嫁ファン役の女優さんがいずれも美しい。チャイナドレスも魅力的である。
もう一人、国民党のスパイ役の女優さんがいるのだが、この人も美しい(最初のうちは、この人とチェンの見分けが付かなくて混乱した 苦笑)。
さて。ファンは実は共産党のスパイで、日本人の暗殺を企てていたり。
フーの仲間のワンがそのファンに懸想していたり。
それを知ったイエがある秘密からワンを殺したり。
それにトニー・レオンとワン・イーボーのすさまじい格闘場面がある。もうメチャクチャ本気出してる、というタイマンである。
え、二人はこんなにも憎み合う関係だったのか?
暗躍が錯綜するのだ。
おまけに困ったのが、日本軍スパイと密談したりする場面ではあまり上手くない日本語で会話をするのだ。これが大変に聞き取りにくかった。
もう会話は中国語で統一して字幕を出してくれる方が有り難かったな。
ということで判りにくいこともあるのだが、全体の雰囲気はとても好い。
謎や秘密を扱っているというスパイ映画独特の緊張感が心地よいのだ。
(以下、ネタバレ)
時が移り、場面は終戦後の香港となる。
カフェにいるチェン(フーの奥さん)が映る(おお、生きていたんだ)。
そして冒頭近くの、誰か見知らぬ人がコーヒーを奢ってくれる映像となる。立ち去ったその人物は、実はイエだったのだ。
どうしてこんな場面をシャッフルして見せたのだ? 意味がわからないぞ。しかし、お洒落であることは確かだ。
そしてそのイエの肩に静かに手を置く人物は、フーではないか。
結局、タイトルの「無名」とは、現在の中国共産党を陰で打ち立てた無名の英雄ということになるわけだ。
フーも、彼の協力者だったイエも、実は共産党員であったわけだ。
あまり必然性のないシャッフルをしているので(クリストファ・ノーランも真っ青 笑)、大変にややこしくなっている。
しかし格好好い。個人的にはこういうのは好きである(汗)。
中国の大きな映画の賞である金鶏賞で、主演男優賞(トニー・レオン)、監督賞、編集賞を受賞しています。