
1990年 80分 フィンランド
監督:アキ・カウリスマキ
出演:ジャン=ピエール・レオ、 マージ・クラーク
サスペンスもの? ★★★☆
アキ・カウリスマキ監督の第9作品。
これまで観たことのある作品はすべて2000年以後のものだったので、この頃はどんな感じだったのかと興味津々だった。
結論は、彼はやはり彼だった(笑)。同じ魅力のものだった。好いなあ。
主人公はロンドンで暮らす孤独なフランス人のアンリ(おお、ジャン・ピエール・レオだぜ!!)。
突然解雇されたアンリは途方に暮れる。人生にやる気をなくす。
そこで彼は淡々と日曜大工店でロープを買い、首吊りを図るのだがフックが外れて失敗してしまう。
それならと今度はガス中毒での自殺を図るのだが、あれ、ガスが出ないぞ? なんとちょうどその日はガス会社がストライキをしていたのだ。
深刻な状況なのに、肩すかしのようなゆる~いユーモアを交えて話が進む。
とにかく俳優はほとんど表情を変えない。
主人公はどんなに惨めな境遇になろうとも感情を昂ぶらせることはい。
淡々と自分の人生を受け入れている。
監督は、そんな、いわば人生の敗者を少し突き放したような、それでいてそういう人生もありか、といった視線で描いている。
さて、アンリは、それならと新聞広告で知った殺し屋コントラクト・キラーに自分の殺害を依頼する。
ところがその夜に彼はカフェで出会った花売り娘マーガレット(マージ・クラーク)に一目惚れをしてしまう!
アンリは恋をしてしまったのだ、大変だ、こりゃ死んでいる場合ではないぞ。
ということで彼は大慌てで殺人依頼を取り消そうとする。
しかし殺し屋事務所は工事で取り壊されていて、連絡の取りようがない。
すでに依頼を受けた殺し屋はアンリを付け狙い始めている・・・。
その殺し屋もどこかうらぶれている。
実は彼は末期癌で余命はわずかしかないのだ。
最後の仕事はきちんとしなくちゃ、な・・・。
ところどころでロンドンの街風景が捉えられるのだが、カウリスマキが撮ると、なぜか北欧のような沈んだ雰囲気の街並みとなっている。
自分で依頼した殺し屋から恋人と一緒にあたふたと逃げ回る主人公。
緊迫したサスペンス要素がいっぱいのはずなのだが、ゆる~いコメディタッチである。
しかも登場人物たちがみんなどこにでもいそうな市井の人っぽいので、さらに映画はゆるい雰囲気となっている。
カウリスマキの味わいをゆっくりと楽しめる映画でした。
(余談)
途中で映るサングラス売りには、監督がカメオ出演していたそうです。