
2025年 191分 日本
監督:大友啓史
出演:妻夫木聡、 窪田正孝、 広瀬すず
戦後沖繩史。 ★★☆
原作は直木賞を受賞した真藤順丈の同名小説(未読)。
終戦直後からの沖縄を舞台にした若者の群像劇。
沖繩の抑圧された社会情勢と、それに平行してあるミステリーを描いていた。
1952年、米軍統治下の沖縄。
米軍基地を襲撃して物資を奪って困窮する住民に分け与える「戦果アギヤー」と呼ばれる若者たちがいた。義賊ねずみ小僧みたいなもの?
リーダーのオン(永山瑛太)とともに、グスク(妻夫木聡)、ヤマコ(広瀬すず)、レイ(窪田正孝)の幼なじみ3人も活動していた。
しかし、ある夜の襲撃以来、オンが消息不明となる。
年月が経ち、やがてグスクは刑事に、ヤマコは教師に、そしてレイはヤクザになる。
それぞれの道を歩んでいた彼らだが、それぞれに慕っていたオンの行方を追っていた。
戦後、日本本土では東京オリンピックや万国博覧会などがあり、めざましいといわれた高度経済成長をきたした。
しかし沖縄ではそうではなかったのだ。
宮森小学校米軍機墜落事故、糸満轢殺事件、毒ガス漏洩事件などなど、米軍統治下の沖繩では理不尽なことばかりが起こっていたのだ。
これまで詳しくは知らなかった沖繩の戦後史をまざまざと見せつけられた。
本土で生きてきた者として、これまで知らなかったことに呵責の念を覚えるほどであった。
グスクたちもその抑圧された沖繩で生きていく。
一方で、沖縄の人々の生活の経済面は軍人や軍属相手の商売に支えられてもいたのだ。
問題の根の深さや解決の難しさを思わせる。
しかし、ついには沖縄の人々の怒りが爆発する。コザ暴動である。
その暴動の有様を映像は素晴らしい迫力で見せてくれていた。
主役たちを演じる若者は皆よく頑張っていた。
特に広瀬すずは健気な感じで好演だった(原作ではかなり意に反した事態にも遭遇するようのだが、映画ではそこまでは描かれていなかった)。
しかし、映画総体としての出来はどうかというと、なんともミステリー部分が中途半端だった。
オンちゃんの行方というのはエンタメ的なミステリ要素だったわけだが、これがなんとも断片的で中途半端だった。
”予定外の成果”の内容も、なんだかなあという風に感じてしまった。
小説未読なのでなんとも言えないのだが、ひとつの映画としてはミステリー部分と沖繩の戦後史部分のバランスが取れていなかった。
真面目に作られていた作品だけに、いささか残念であった。