あきりんの映画生活

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「爆弾」 (2025年) 行き詰まる駆け引き、容赦ない爆発

2025年 137分 日本 
監督:永井聡
出演:佐藤二朗、 山田裕貴

サスペンスもの。 ★★★☆

 

原作は呉勝浩の同名小説(未読)。
狭い取調室での容疑者と刑事のやりとりが緊迫感のうちに続く。
そこに東京の街のあちらこちらで起こる爆発事件映像が挟み込まれるという構成。
静と動が巧みに組み合わされていた。

 

泥酔して自販機と店員に暴行を働き、警察に連行されてきた冴えない中年男(佐藤二郎)。
「スズキタゴサク」と名乗る彼は、霊感が働くとうそぶいて都内に仕掛けられた爆弾爆破の予告を取り調べの刑事にする。
何を戯言を、と相手にしていなかった刑事だが、本当に予告の時間に秋葉原で爆発が起こった。えっ!

 

この映画、とにかくタゴサク役の佐藤二郎の独壇場だった。
どこか他人を小馬鹿にしたような不気味な笑みを浮かべ、何を考えているのか分からない狂気さえ感じさせる。
その言動で周りの人たちを混乱に陥れていく。

 

あれ、本当に爆発しましたか、いやあ、そんな霊感が働いたんですよお。
私の霊感、当たるんですよお。
爆発はこれで終わりではないですよお、1時間おきにあと3回起きますよお、私の霊感に拠れば、ね。

 

こんな情報を知っているからには、タゴサクは爆破犯人の一味に決まっているわけだ。
警察は今後の爆破計画を知ろうとしてタゴサクを懸命に尋問する。
しかし、彼はのらりくらりと話をそらせたりする。
ええいっ、早く次の爆発予定場所を白状しろっ!
あれえ、そんなに怖い顔をされると、私の霊感も浮かんでこなくなりますよお。

 

したたかなタゴサクに対抗する者として警察が尋問を任せたのが、切れ者刑事の類家(山田裕貴)。
彼は最初は冴えない腰の低い気弱な男かと思いきや、いざ取り調べ担当となると本性を剥き出しにした。
そこからのタゴサクとの応酬は見事だった。

 

二人とも一歩も引かずに、心理戦と話術の攻防が繰り広げられる。
タゴサクは爆弾に関する謎めいたクイズを出したりする。
類家はタゴサクの言葉に隠された意味を解いて、なんとか爆発場所からの避難をおこなおうとする。
これは観ていて大変に引きこまれた。

 

わかった、次の爆発は山手線の駅だっ。
東京の街はいたるところでパニック状態になる。
刑事さん、なかなか鋭いですね。次のクイズも判りますかあ。

 

会話劇によって人の心のあり方を次第に剥き出しにしていく、といった趣である。
爆弾についての情報をネタに注目されていくタゴサク。そのタゴサクを問い詰めていくうちに自分の中にあるものを問い詰めてしまう類家。
私とあなたは似た者同士なんですよお・・・。

 

未だ爆発せずに残っている爆弾は、本当にどこかにあるのか?
それとも注目を浴び続けたいタゴサクのフェイク情報なのか?

 

邦画サスペンスの少し湿ったような雰囲気が暗いものを連れてきていて、大変に見応えのあるものになっていた。
繰り返しになるが、佐藤二郎の怪演である。彼は「さがす」でも好かったし・・・。